インステップキック 目次
はじめに
インステップキックの蹴り方はメカニズムの違いにより、楔型と弓型の二つに分類される。
楔型
下に潰れるように踏み込み、地面からの反発を利用して蹴る。
重心が楔型に動く。
弓型
体を大きく弓のように反らし、筋肉を長く引っ張ることで蹴る。
楔型は伸張反射を利用し、小さなモーションから強いキックを蹴る目的に適する。
弓型は大きなモーションを利用し、動きを途中で変化させる目的に適する。
両者は蹴り方、メカニズム、フォーム、全てにおいて完全に異なる。
しかし現実には、この2つを同じインステップとして扱うことによる混乱が多く見られる。
詳しくは以下を参照されたい。
この目次はインステップについて書かれた一連の文章を、時系列に関係なくカテゴリー別に並べたものである。
最初は1-aから本文のリンクを辿ると、わかりやすいと考えられる。
目次
1 エリア付近からのインステップキック
1-c 楔型、弓型の比較
1-d 楔型でより軸足側へ蹴る
1-e 弓型のインステップキック、実例2
1-f 弓型と楔型インステップキック、それぞれの特徴と比較、エリア付近
2 遠距離からのインステップキック
2-e 弓型と楔型インステップキック、それぞれの特徴と比較、遠距離
3 動作の違いよる特性の差
4 無回転とインステップ
4-a 無回転と楔型のインステップキック
4-b 無回転と弓型のインステップキック
5 楔型のイメージ、メカニズム、練習法
5-b 楔型のインステップキック、練習法
6 指導上の注意、他のインステップとの関連、まとめ
6-a インステップキックの指導について
7 補足文章
7-a 軸足側に旋回しながらの楔型と弓型インステップキックの比較
7-c 楔型のインステップキック、インパクトにおいて蹴り足の膝が曲がる例
いつも楽しく拝見しております。
今回のインステップキック特集は、蹴球計画様が技術解説を始めたときから、
いつか解説していただくのを期待しておりました。
というのも、私は感覚でインステップキックを蹴ることができずに、動画や書籍でこつを覚えようとしたのですが、
市販の書籍のインステップキックの解説は納得できないものが多かったからです。
その一つが、上体をかぶせる、とよく書いてあるのに掲載されている写真では大抵上体が後傾していることでした。
今回、巷の解説は2種類のキックを混同している、という解説は目から鱗でした。
さて、いくつか質問したい点があるのですが良かったらお答え願えませんでしょうか。
インステップキックを覚えるときに私が一番苦労したのが、どうやって地面を蹴らずに足のなるべく足首近くで蹴るか、
ということでした。
足首を伸ばすと当然まっすぐ足を振ると地面を蹴ってしまうわけで、かといって、
軸足をあまり斜めに傾けるとフォームが大きくなるし、体の真下ではなく体の斜め下から蹴るのでコントロール難しい。
かといって軸足を垂直にすると、足の先の方に当たって反発力が弱まるし蹴りにくい。
結局私が出した答えは、ある程度軸足を傾けて(20度くらい?)
軸足のくるぶしあたりがボールの真横になるくらい深く踏み込むことでした。
私の靴のサイズは26cmですが、これによって足の甲の固い骨でほとんどいつも蹴ることができています。
ですが、蹴っているのは親指の骨の延長線上でなく、中指の骨の延長線上です。
親指の骨で蹴ると、少し接触点がずれただけで内側に曲がるし、
コントロールしにくいのではと思っていたので、そのように解説されて驚きました。
親指の骨の延長線上、というのは割と一般的なのでしょうか?
また、多くの人は足の甲の固い骨で蹴ってはいないのでしょうか?
そして、ある程度軸足を傾けないと地面を蹴ってしまう、ということについては、どのような解決策をお考えでしょうか?
毎度長文失礼いたしました。
2009/11/02 03:11 - もんぐり
コメントありがとうございます。
期待していただいたとは知らず、大変お待たせいたしました。
以下に箇条書きにて回答させていただきます。
-コントロールしにくいのでは?
親指につらなる骨というのは、「楔型で」、「強く」、「無回転のボールを」蹴るのに適していると考えられます。
突起部分で蹴ると狭い領域に力を集中させやすくなります。
しかし、力を集中させればさせるほど、場所のずれに対して敏感になるため、制御は難しくなります。
このため、力の集中と制御の容易性は、両立しないことが多くあります。
また、無回転のボール軌道は、初期条件のわずかな差に大きく依存すると予想されます。
強く、無回転で蹴る場合、制御が難しいことは自然であると考えられます。
同じ楔型でも、制御を優先させる場合、別の場所が良い可能性もあります。
-どこで蹴るべきか?
ボールとの接触点は、楔型と弓型で違うものと考えられます。また、どのような目的で蹴るかによっても違うと考えられます。
インステップと一口に言っても、人により様々に蹴る場所が違います。
自分も人に聞いて回って調べたことがあるのですが、ばらばらというしかない状況でした。
しかも、当時は楔型と弓型に分類できることに気づいていませんでしたのでデータとしても無意味です。
果たして、目的や型によってどの部位で蹴るのが一般的なのか、今後の課題です。
また、この点は、一般的な画像からは最もわかりにくい点の一つです。
下記に一例がありますので、ご覧ください。
楔型インステップキックで足がボールを捕らえる場所
-ある程度軸足を傾けないと地面を蹴ってしまうのでは?
これは、実際に楔型で蹴っている選手を見ていただくのが一番だと思います。
これまでの例に、いくつか加えたものが下記にありますのでご覧ください。
楔形のインステップキックにおける爪先問題
説明がわかりにくい、やっても上手くいかない、こうやったら上手く等々、またお寄せいただければさいわいです。
2009/11/05 10:05 - studio fullerene C60
Re:Re:インステップ解説待ってました
いつもながら丁寧な回答ありがとうございました。
蹴り足が何らかの方法で地面と斜めになることで
地面を蹴らずに足の根元の方で蹴る、と理解しました。
個人的には、「楔形のインステップキックにおける爪先問題 」のページにある、
Cロナウドの「体全体が傾斜」しているフォームはミスキック(ミスフォーム?)だと思っています。
私は、実はサッカーをやり初めて1,2年のころ、いろいろなやり方で蹴り足を斜めにすることを考えていました。
その過程で、右足だと軸足を斜めにしてもうまく蹴れるのに、
左足だとうまく蹴れない時期がありました。
自分なりにその原因を分析した結果、「蹴り足側の肩と骨盤が、軸足側の肩と骨盤より高くなってしまうと、
蹴り脚がうまく触れないし、体全体が旋回し軸足側に倒れてしまう」
という結論に落ち着きました。
その後、どんなに軸足を斜めにしても、骨盤と肩は地面と水平にすることで、うまく蹴れるようになりました。
利き脚の右足でそれが考えずともできたことで、利き脚だと感覚でも覚えられるけど、
逆脚だとそうはいかないのか、と思いました。
Cロナウドも、おそらく利き脚ではない左足ゆえにフォームが崩れたのではないかと思っています。
いつもの彼は左足でもうまく打てているように思うので
おそらく、ロングシュートの場面でかつ利き脚でない方で
かつ右から来る敵を腕でブロックしながら蹴る状況、
というのが、フォームを崩れさせたのではないかと思います。
(Cロナウドと私のような素人に同じ原因をあてはめるのは
おこがましいですが・・・)
ちなみに、骨盤の角度を意識する、というのは、私としてはかなり使えるテクニックだと思っております。
走っているときは骨盤は前傾していますが、私の場合、そのままの角度で蹴れば、
走り抜けながらのキックになり、低くボールは飛びます。
蹴るときに後傾させれば、私の場合、体がその場にとどまり、蹴り足が軸足に巻きつき、高くボールがあがります。
インステップやインフロントでボールを高くあげるキックを試合中に
繰り返した結果、シュートの場面でもボールをふかしてしまう、というのはありがちかと思いますが、
骨盤の角度を意識することで、私の場合はフォームの使い分けができるようになり、
そのミスがほとんどなくなりました。
今は、足をまっすぐ入れて浮かせるロングキックを練習中です。
これからも楽しい記事をお待ちしております。
2009/11/06 02:04 - もんぐり
返信ありがとうございます。
接触面を画像から判断する場合、いくつかの問題があります。
1つ目は、良い画像が非常に手に入りにくいことです。
適切なアングルで捕らえられるものが少なく、普通の映像では、足の振りの速さゆえにブーツの部分がぼけてしまいます。
2つ目は、立体と立体の接触であり、ほんのちょっとの見方のズレで、どこに当たっているとみなすかが変わってしまいます。
この場合であれば、クリスティアーノ・ロナウドの足の形の正確な情報を元に画像解析をしなければならない、という話になります。
3つ目は、おっしゃるように、本人が望む場所で捕らえたか否かわからない、ということです。
少ない画像から、以上の困難をおして見る必要があるため、最終的な見方は各自にゆだねられます。
親指の上の骨で蹴ることがどれくらい一般的か、という点ですが、以下のことは示唆的ではないかと思います。
最近のシューズの形状変化を次のように表すことができます。
(画像元:http://www.adidas.com/campaigns/football/content/products.aspx#grid より切り抜き) ※リンク切れ
この変化は、紐の凹凸という邪魔な部分を、親指の付け根より上側の骨から遠ざけるものであると言うことができます。
これは、その部分で蹴ることが、ある程度以上に一般的であることの反映だと考えられます。
無回転のインステップというのは、初期条件の微妙な違いに敏感に反応します。
インパクト面の凹凸をなくすことは、そのような不安定性を減ずることにつながります。
シューズの形状変化が、すべて楔形のインステップのためであるとは限りませんが、矛盾しない傾向ではあります。
以下は後学のためにお聞きしたいことです。
ご回答いただければ幸いです。
足の根元の方とは、どの場所でしょうか?下の図における具体的な位置をお教えいただけないでしょうか。
http://web.sc.itc.keio.ac.jp/anatomy/osteologia/A02508001c.jpg ※リンク切れ
その部分で蹴る場合、弓型、楔型、どちらの動きで蹴っているとお考えでしょうか。もしくは他の動きでしょうか。
これからもよろしくお願いします。
2009/11/26 13:23 - studio fullerene C60
Re:Re:Re:Re:インステップ解説待ってました
いきなりすごい返信が来てびっくりしました。
難しい質問と承知していながら質問してしまい、ご迷惑をおかけしました。
以下、またもや長文になりますがご容赦ください。
さて、確かに私も、靴紐を隠すシューズに対してメーカーが、インステップやインフロントポイントの凹凸を減らした、
という売り文句をつけているのを見たことがあります。
それで思い出したのですが、アイマールと中田に関しては、内側楔状骨で蹴っていると思われる証拠を見たことがあります。
4年くらい前、ミズノがアイマールの足に圧力センサをつけていろんなキックをさせて、
キックのポイントを調べ、それをシューズ開発に生かしたことを解説しているページを見たことがあります。
アイマールのインステップは内側楔状骨に圧力の中心がありました。
中田の場合はオフィシャルホームページで、「どうやったら強いキックが蹴れるか」という子供の質問に
対して、足の内側の骨のとがった部分にしっかり当てればいい球が飛ぶ、と答えていました。
一方、日本の巷のサッカーの本は、甲の真ん中で蹴るとか靴紐あたりで蹴るとかあいまいに書いているものが多いです。
そのため、かなり混乱しました。
現在私は、足の骨の写真でいうと中間楔状骨を意識して蹴っています。
蹴った感触はそこら辺かそこより少し足の先の辺りに残ります。
いろいろポイントを試して迷った挙句、そこだとコントロールが安定するし、ボールに横回転がかからないのでそこにしました。
今は、リフティングもつまさきトラップもすべて人差し指の骨を意識してやります。
私のフォームはというと、客観的に見たことがないのでよくわかりません。
敵と間合いがあるときは、腕はいっぱいに広げて胸も反るので弓形と言えなくもないですが、
上体は後傾してないし蹴り足が軸足に巻きつかず、蹴った後は軸足が浮いて蹴り足が先に着地してます。
かといって、楔形というには、蹴った後にあまり体を丸めないし体幹の力を使えている感じがしません。
また、インパクト後の蹴り足を振り上げずに地面を掃くように振っています。
グラウンダーのボールを蹴ることを意識していたらそうなりました。
また、軸足側に蹴るときは、インパクト後に上体がボールの方向に向いてしまうとなんとなく足が振りあがって浮いてしまうので、
上体の向きは蹴ったボール側に向かないようにしてます。
以上です。これからも楽しい記事をお待ちしています。
実はインフロントやアウトフロントはインステップ以上に蹴るポイントをどこにすべきか混乱しているので、
いつかインフロントも特集していただけたら嬉しいです。
2009/11/27 02:46 - もんぐり
ご返信ありがとうございます。
また、お礼が非常に遅れたことをお詫び申し上げます。
インステップをどこで蹴るべきか、という点については積年の疑問でした。
画像を見ながら、「スパイクメーカーに聞けばすぐにわかるはずなのに」と常々思っていました。
ですから、アイマールの圧力分布が楔状骨付近にあったという情報は、非常に参考になりました。
同時に、中田のインステップに対する回答も極めて興味深いものでした。
教えていただきありがとうございます。
また、蹴り位置やフォームに関する質問にご回答いただき感謝いたします。
人の感覚を聞くことは、とても参考になります。
以前の骨盤の傾きの話なども興味深く拝見させていただいております。
インフロントについては考えている途中ですが、インステップと同じく、楔系の動きと弓系の動きに分けられるのではないかと思います。
以前に見たセードルフの動きや、普段のセルヒオ・ラモスなどは楔系に分類され、ベッカムなどは弓系に分類されるのではないかと考えています。
アウトフロントについては、まだまったく行き届いていません。
また質問等ございましたらぜひお寄せください。
2010/02/20 11:10 - studio fullerene C60
【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら。