弓型インステップキック その特性
これまで楔型と弓型の動作の違いを見た。
動作の違いは性質の違いを生む。
以下にそれぞれの良い面を見る。
弓型の特性
弓型は楔型に比べモーションが大きい。
これは以下の長所を生む。
- 小さな最大の力で強いボールを蹴ることができる
- フェイント動作に適している
- 動作のコントロールに向く
それぞれについて理由を見る。
モーションが大きいということは、踏み込みからインパクトまで長い時間がかかることを意味する。
つまり足を長い時間加速させることができる。
このため筋肉の発揮する最大の力が小さくても、インパクト時の足の速さを増すことが可能となる。
この点のやや詳しい内容本文末を参照されたい。
フェイントに関しては、以下の通りである。
フェイントとインステップキック
弓型のインステップは、モーションが大きい。
このため相手に対応されやすい。
対応されやすいということは、相手を本来の意図とは別方向に釣りやすいということでもある。
この特徴はフェイントにおいて有利である。
インステップでフェイントをかけインサイドで逆に蹴る、いわゆるステップサイドの典型的なフォームは以下のようになる。
軸足側へのキックを見せた後、蹴り足を返して逆を取る。
最後の図においてキーパーは反対方向に倒れている。
後ろに反りながらの踏み込みは、最初のモーションが弓型であることを示唆している。
またこの点に関して、以下のエウゼビオのプレーは示唆的である。
シュートフェイクからドリブル
以上において、キックを見せるため手を大きく動かしている。
楔型では近い距離においてこのような動きを必要としない。
モーションの大きな弓型へ入る構えをフェイントとして使用している。
続いて以下のように進行する。
ドリブルから楔型インステップへ
以上において一度沈み込んで跳ね上がる、楔型の特徴が見られる。
フェイントを弓型で見せ、実際には楔型で打つ。
これはモーションの大きい弓型の方が、相手を釣りやすい性質を利用したものであると考えられる。
弓型はインパクトまでに時間がかかる。
時間がかかるということは、その間に細工をすることが可能になる。
また時間的に余裕があることは、制御においても有利であると考えられる。
力加減を合わせるなどの目的には、弓型の方が楔型よりも優れていると予想される。
以上が弓型の特性を以下のように規定する理由である。
- 小さな最大の力で強いボールを蹴ることができる
- フェイント動作に適している
- 動作のコントロールに向く
次に楔型の長所を見る。
補足:以下は弓型において筋肉の発揮する最大の力が小さくても、インパクト時の足の速さを増すことが可能であるとする理由である。
力とキック
インステップキックについて、理想化された状態で考える。
以降のグラフは時間による力の変化を表しているとする。
ある時間に力が加わり始め、ある点で最大値を示した後に落ちる。
ボールを強く蹴るためには、蹴る直前の足の速さが速ければ速いほど良い。
足の速さは、線で囲まれる面積で決まる。
影の部分が広ければ広いほどインパクト直前の足は速く動く。
逆に狭いことは、遅く動くことを示す。
赤い線と緑の線では、赤い線の方が強いキックを蹴ることができる。
緑の線と同じ最大値で、速さを増そうと思えばかける時間を延ばせばよい。
紫の線は最大値は緑の線と同じで、より長時間力を加えたことを表している。
上の二つの曲線で囲まれる面積はほぼ等しい。
理想化された状況において、この二つの曲線はほぼ同じ強さのキックを表す。
瞬間的に大きな力を出すためには筋肉の瞬発力が必要である。
その意味において赤い線は瞬発力に恵まれた選手であり、緑の線はそれに恵まれない選手を表していると言える。
弓型のインステップは、瞬発力に恵まれない選手に強いキックを蹴る道を開く型であるとも言える。
以上は初等的かつ理想化された状態での話である。
しかし楔型が赤の特性曲線に属し、弓型が紫の特性曲線に属するとみなして安全であろうと思われる。
以上は実証のともなわない話である。現実にはあらゆる状況において楔型が最も強くボールを蹴る方法である、もしくはその逆であるという結論に至る可能性を完全に否定することはできない。
次に楔型の特性について見る。
上の記事の「補足」で、赤い線(楔形)の選手が瞬発力に恵まれた選手で、紫の線(弓型)の選手が瞬発力に恵まれていない選手と書いていますが、
緑の線の選手のように、瞬発力に恵まれていない選手は、楔形を練習しても伸びしろはないのでしょうか?
2012/01/19 19:25 - ソルダード
【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら。