インサイドキック、表から裏への変更(デ・ラ・ペーニャ)
インサイドキックの間の変換の実例を見るとともに、相手を騙すために必要な条件を見る。
下の形からスルーパスが通りゴールが決まる。
ここではスルーパスにおいて、「正しいインサイドキックとは」で見た表から裏への変換が使われている。
インサイドでの赤いパスを見せてディフェンスを黄色側につり、足を返して白いパスを通す。
これは以前に見た下の図と同じである。
下図における蹴り方を拡大する。
ここでは相手を騙すために重要な蹴り手の体の向き、踏み込みの方向、ボールと足の配置に注目していただきたい。
また、ディフェンスがフェイントにひっかかる様子にも注目していただきたい。
体を左方向に向ける。
正面方向に踏み出す。
上の図でボールと足はそのまま左に蹴ることができる配置になっている。
軸足が着地する。
ここから縦方向に足を返す。
図の左側に位置するディフェンダーは、左方向へ動く。
スルーパスが通る。
上の流れで、守備者は左側へのパスフェイントにつられている。
それはインパクトに至るまでの体の向き、踏み込み、足とボールの配置、その全てが本当に左に蹴ることのできる状態、動作であったためである。
体の向き
踏み込み
足とボールの配置
また相手を騙すためには、体と軸足がなるべく最後までフェイントの方向を向いている方が良い。
以下にそれを見る。
蹴る時の姿勢と才能、練習での意識
インパクト時の姿勢を、「胸より上側および軸足の下側」と「それ以外の部分」に分ける。
胸より上側および軸足の下側
図の左側を向いている。
それ以外の部分
正面ゴール方向を向いている。
1つの体の中に、全く異なる2つの方向が同居しているのが下図である。
下の矢印のように、全く別の方向を向いている。
インパクトの瞬間、胸より上側および軸足の下側がフェイントの方向を向いていることは、相手を騙すにあたって非常に大きな効果がある。
これらが早い段階で蹴る方向に向けば、ディフェンスに対応されやすくなる。
その意味で上の蹴り方は理想的である。
上手く相手を騙すためにはこれを真似ると良いが、そのためには才能が必要になる。
まず通常、下の体勢を取ること自体が無理である。
一般的にここまで上半身と下半身を分離させることはできない。
さらにはこの無理な体勢の後、自然な着地を行うことは困難である。
この例では蹴る前後は自然な体勢であり、間に極めて無理な状態が入っているとは思われない。
無理な動作を自然に行うことには才能が大きく関わってくる。
このように下図の赤線近辺から上下の動きを分離できる選手は、相手の裏を取る行動に向いている。
そのような能力は、トレーニングによって鍛えなければならない。
そのような練習はダンスにおいて頻繁に見られる。
例えばクラシックバレーのバーレッスンにも見られるし、他のダンスの準備運動において胸から上だけを前後左右に動かすものや、肩の線を固定して上半身だけをひねる動作もそれにあたる。
リズム体操のようなものを練習に取り入れているチームもあるが、手足をバタバタさせる動きより上下を分離させることを意識した動きを取り入れる方が、実際のフェイント能力を向上させることにつながる。
ダンス、サッカーという単語の並びからは、サンバ、ブラジルという言葉が思い浮かぶ。
はたしてサンバとブラジル選手のフェイント能力の高さに関連があるのか興味を引かれるところである。
サッカーが上手くなるためにダンスをせよ、とは言えぬが準備運動などにそのような動きを取り入れることは有益であると考えられる。
例えばジャンプをして下半身をひねる動作にしても、なるべく胸から上が動かぬようするどく大きくひねることを意識するだけでも長期的な成果は異なるはずである。
普段の練習の中ではキックの際、軸足と上半身をなるべく最後までフェイントの方向に向けるように心がけるとよい。
そのことで必然的に上下のずれは大きくなる。
またロッシやカカーのように軸足の向きを変えながら着地しなければならない場合も、なるべく最後までその動きを遅らせた方が良い。
遅らせれば遅らせるほど技術的に難しくなるが、相手を騙しやすくなる。
【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら。