正しいインサイドキックとは 正しい技術3 表と裏の複合


これは「正しいインサイドキックとは 正しい技術2 裏」の続きである。

これまで正しいインサイドキックとして表と裏を見た。
表とは、足首の角度を斜めに固定しやや外側から回すように蹴るものである。
裏とは、ほぼ同じフォームから最後に足首を返して蹴るものである。

この二つを組み合わせることで相手の裏を取り、攻撃を成功させる例を見る。

下図において中央やや右側にボールがある。

ここではボールを持った選手と同時に、オレンジで囲まれた守備者の動きに注目されたい。
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左足(軸足)を踏み込む。
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キックの瞬間、ディフェンスが外側につられている様子がわかる。
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パスは中央に出る。

しかし最初に円で囲んだディフェンダーはサイドに体を向けている。

以下スルーパスが通る。
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最初に円で囲んだディフェンスは、完全にパスの方向と逆に動いた。

これは何らかのフェイントにかかったと考えるのが自然である。
以下に別角度から見る。

左足を踏み込む。
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足首の角度を変えずに中心より軸足側に蹴る、いわゆる表のインサイドキックを見せる。
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ここから急激に足首を捻る。
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ディフェンスは、前の段階で見えたパスにつられているため逆を向く。
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結果として背中側を通されている。

このプレーを矢印で表すと次のようになる。

まず踏み込みからの流れ、表のインサイドのフォームでは矢印方向にパスが出るように見える。
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しかし直前に足首を捻る、裏のインサイドを使うことで矢印方向にパスが出る。
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単純に矢印を重ねあわせると下のようになる。
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このイメージのずれからディフェンスは裏を取られた。

パスを出した選手は特別な技を用いているのではなく、普段からのインサイドキックの表と裏、その切り換えを行使しただけである。

ただそれだけで下のようなチャンスが生まれた。
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これは正しいインサイドキックが、相手の裏を取るという点で非常に優れていることを示している。

同じ流れで相手の裏を取る場面として下のようなものがある。
最初に通してご覧頂きたい。

今、図の中央右側、センターサークル前に位置する赤い選手がパスを出す。
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最後の図で、ボールは左側の赤い選手の足元にある。

このパスの仕組みは以下のようになる。
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表のインサイドで赤いコースを見せ、白で裏を取る。
ディフェンスは赤につられて黄色方向に動く。

最初の例と同じ原理である。
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ここで下の図において、本当に赤方向へのパスフェイントが入ったか否かが問題になる。
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下の図はキック後のものである。
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この時パスを出した選手の膝は、上の図から下の図において外に開いている。

非常に小さい図だが、連続表示すれば確かに膝が開き、足首が上に返る様子がわかる。

キックの後、膝が外に開くというのは先に見たように、最後の段階で捻りを加える裏のインサイドの特徴である。
つまりキックの最後の段階で、方向が変えられたことを示している。

これとディフェンスの動きを考え合わせると、ほぼ確実に表から裏への変換が使用されている。
ここで大切なのは、スルーパスのために特殊な技術を用いているわけではない点である。

最も基本的なインサイドキックを利用しているだけであり、それだけでこれほどの利が得られる。

また上の2つの例でもわかるように、最後に足を捻るインサイドキックでも非常に正確なパスを出すことができる。
特に2番目の例は、針の穴を通すといってもよいほどの精度で出ている。

このように精度という点でも正しいインサイドキックで十分である。

パター型のインサイドキックは「窮屈であるが精度が高い」という理由から使われていた。
しかしもっと自然な方法で十分な精度が出る以上、使う理由が一切ない。

下の図は以前に見た、誤ったインサイドキックを用いたためにパスカットを許したシーンである。
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これはパター型のパス方向が早い段階で読まれやすいため、相手に早く動き出されてしまうのが原因だった。

もしこの選手が正しいインサイドキックを身につけていれば、下の形で白いパスは通りやすい。
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さらにこの技術は守備者と正対する(体の正面を見せて向き合う)場合にも有利である。
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表のインサイドは中心より軸足側に飛ぶ、裏のインサイドは中心より蹴り足側に飛ぶ。

つまり正しいインサイドを身につけていれば、正対した時に常に2つの選択肢を自然に手に入れることができる。
これはサッカーにおいて非常な利点である。
(参考:正対することの重要性


正しいインサイドキックの利点をまとめる

・体の使い方が自然である
・バランスを保ちやすい
・キック後のプレーに早く移ることができる
・最後までパスの方向がわからない
・表と裏を切りかえることで相手の逆を取ることができる
・正対において自然と2つの選択肢が生まれる


精度については練習が必要である。

足を捻る具合により角度を調整するため、最初は上手くいかない。
しかし練習により上達する。

一方、誤ったパター型のインサイドキックはいくら練習しても、上のメリットを手に入れることは絶対にできない。
蹴った後にバランスを崩す、パスの方向を読まれやすい、というのは下手な選手の特徴である。

パター型を教えることは、いわゆる下手くそを大量生産することに他ならない。

これで下手になったとしたら選手の責任ではない。
教えたコーチの責任であり、コーチにそれを教えたコーチングコース担当者の責任であり、その教科書を制定した者の責任である。

間違った技術を教えることは選手の可能性を潰し、未来を奪うことにつながる。

次回はその点について見る。


【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら

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