下手とは何か1
サッカーにおいて「上手いけど試合で力が発揮できない」「技術はあるのに試合になるとそれを発揮できない」といった評論をよく目にする。
しかし技術とは、本当の試合で使うことができて初めて真の技術である。
それができない選手は、本質的に下手と言わざるを得ない。
このような評論が存在すること自体、サッカーが上手いという概念に対して誤解と混乱があることを示している。
ここではサッカーが下手であるという点について、純粋に技術面から明確な定義を試みる。
またその逆に、サッカーの上手さについても明確な定義を試みる。
このサイトをよくご覧になる方のために書き添えるならば、以下はこれまでに見た「2006年ドイツワールドカップにおける日本代表の欠陥」、「正対と組み立て」、「正しいインサイドキックとは」から発展したものである。
まずはっきりとした下手なプレーを見ることにより、その原因を探る。
次の図において白いチームは右へ攻めている。
今、画面上部の白い選手がボールを受ける。
ボールをコントロールする。
コントロール後、体が連続的に左方向へ旋回する。
この時点で体正面は完全にサイドラインを向いている。
ここから大きく前へ蹴り出す。
相手に奪われる。
コントロールの時点では周囲に十分なスペースがあり、相手との距離も十分であった。
ここから完全なミスパスで相手にボールを渡す。
明白に下手なプレーである。
ここでの根本的な問題は、簡単に横を向くことにある。
始まりは下のようである。
ここから即座にライン側を向いたため、相手を呼び込みパスコースが限定された。
このような状況では、どんなにパスが上手くとも有効な形で味方につなぐことは難しい。
つまりサイドラインを向き自ら状況を苦しくしたとこで、正確にボールを蹴る技術が活用されにくくなった。
上の流れにおいて下手の正体とは、簡単に横を向くということである。
これと良く似た例を次に見る。
今、白いチームは画面左へ攻めている。
画面右、センターサークル外側の選手から画面手前側へパスが出る。
コントロール
この時点で体正面は完全にサイドラインを向いている。
キックフェイク
インパクト
最終的にボールを外に蹴り出す。
コントロールの時点では周囲に十分なスペースがあり、相手との距離も十分であった。
また中央に目を転じれば、複数の味方が見受けられる。
しかしすぐに横を向いたため、パスコースが限定された。
さらに相手から逃げるために後ろに下がる。
これによりプレーが苦しくなり、外に蹴り出した。
コントロール時点と、プレーの終了時点を比べると以下のようになる。
この選手は十分に余裕のある状態でボールを受け、中にいくつものパスコースがある状態で外を向き、ボールを外に蹴り出した。
非常に不満の残る結末であり、このようなプレーは下手と言わざるを得ない。
これも最初のプレー同様、寄せていくる相手に対して簡単に横を向いた。
それにより自ら困難な状況に落ち込んだ。
簡単に横を向くことがいかに馬鹿げたことであるか、以下に概念図を見る。
一般にプレスと呼ばれる守り方がある。
その一例は次のようになる。
ボールを持つディフェンダーに片側を切りながら詰め、サイドへのパスを誘発する。
ライン際の最も狭いスペースに追い込み、ボール保持者に横を向かせる。
この体勢では前へのパスコースが極めて狭い。
守備はそれを狙い打つことでボールを奪い返す。
上で見た簡単に横を向く選手は、守備側がそのような苦労をすることなしに自ら望んで下の状態に入る。
つまり中央でプレスをかける部分は必要ない。
一人に詰められると周囲にスペースがあるにも関わらず、簡単に横を向き、ずるずると体勢を苦しくしながら蹴り捨てる。
これが下手の正体である。
つまり「サッカーが下手である」ことの理由は、簡単に横を向くことである。
言葉を変えるならば、簡単に横を向くことこそが下手ということである。
これは、よりペナルティーエリアに近い場所でも同様のことが言える。
次にそれを見る。
【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら。