2008/06/10 ユーロ2008 Group League
スペイン 4-1 ロシア
監督 ルイス・アラゴネス
フォーメーション 1-4-4-2
「前回のユーロに引き続き、スペイン対ロシア」
「今回もスペインが勝利した」
「先発はこう」
「ちなみに前回はこう」
「システムも違えば選手も違う」
「当然といえば当然やな」
「しかしロシアにいたっては先発11人全部違うで」
「それはちょっと凄いかもわからんな」
「スペインはユーロ前のペルー戦とほぼ同じ布陣やな」
「ちなみにペルー戦はこう」
「シャビ・アロンソをセナに代えたわけやな」
「中盤をカバーするための自然な選択かと」
「前の形だと、みんな行きっぱなしになりかねない」
「その辺りはペルー戦を参照していただくとして」
「システムの眼目はその時と変わらず右のイニエスタを中に入れて、そこから崩していこうというものだった」
「しかし、それは封じられた」
「封じられた理由は後から見るとしてだ」
「うむ」
「19分にスペインが先制する」
「ビジャのゴールだった」
「その後の布陣が面白くて次のようになった」
「完全に自陣に引いた1-4-4-1-1やな」
「1点リードしただけで完全に引く、というのはこれまでのスペイン代表にはない姿やな」
「カウンターから逃げ込みを狙う、まことに正しい姿ではある」
「それは試合終了まで変わらなかった」
「その証拠にこの試合のボール保持率はスペインが46%、ロシアが54%」
「UEFAの調べ(※リンク切れ)によると、スペインが8%負けている」
「これは驚きのデータやな」
「普通にやればスペインがボールを持ってロシアが守るはずやから、逆になるはずやな」
「その理由は簡単でスペインがしっかりと引いたもんだから、ロシアはハーフラインの前方のスペースでいつまでもボールを回すことができた」
「その最中にミスが出るのが困りものやったんやけどな」
「スペインはそのミスに乗じてカウンターからチャンスを作り出す」
「リードしたまま試合は進み、62分までに下のようになる」
「トーレスとイニエスタが外れて、セスクとカソルラが入る」
「これもペルー戦で見られた配置やな」
「今のスペインはイニエスタを右に置いてそこを起点にするパターンと、トップ下にセスク、右にカソルラを置いて一般的な1-4-4-1-1で戦うパターンが存在する」
「この試合では相手の左サイドバック、ジルコフが攻撃で非常に良いプレーを見せていたので、それを押さえるためにもカソルラの方が良い」
「ジルコフは、イニエスタを後ろに引っ張るというスペイン対策としても良い働きだった」
「おまけにセルヒオ・ラモスでも止めるのに苦労していた」
「あれだけ苦労するセルヒオ・ラモスというのもあまり見たことがない」
「それはそれとして先制した後、引いてからのカウンターという手が見事に決まって4-1で快勝した」
「まずはめでたいと」
「うむ」
「次にロシアの方を見てみる」
「ペルー戦で大活躍をしていた、スペインの右サイドを非常に警戒した布陣だった」
「右はイニエスタを左サイドバックのジルコフが、セルヒオ・ラモスを左中盤のビリアレトジノフがマークする」
「中央ではシャビをセムショフとパブリュチェンコが、セナをズリアノフがマークする」
「パブリュチェンコはマルチェナもケアする」
「そのようになっていた」
「ここで一つ不思議なのはロシアの中盤のラインで、20番のセムショフが少し凹んでいた」
「システムを1-4-1-4-1だと見ると、確かにセムショフの位置が他の選手より低い」
「1-4-2-3-1だと見ても変で、明らかにセマクよりも高い位置にセムショフがいる」
「これはどういう意図なんやろな」
「天地は逆になるけどスペイン対策で1-4-1-4-1に組んで、中に入るイニエスタをケアする方法があったやろ」
「中に一枚置いて対応するやり方やな」
「ロシアのように組めば、その一枚が左サイドに寄るのでイニエスタに対処しやすい。これともう一つはシャビのところにパスを集めさせて、セムショフとパブリュチェンコで挟む狙いがあったのではないかと思う」
「思うだけか」
「本当のところは監督のヒディングに聞かないとわからないので、どなたか聞いていただきたいと思う次第やな」
「イニエスタに対する守備としては、まず彼が単純に中へ入った場合には下のように対処する」
「ジルコフがついていき中でセマクと挟む。そこへ17番のズリアノフが下がってきてボールを奪ったらカウンター」
「その時、上がってくるセルヒオ・ラモスには、ビリアレトジノフがつく」
「ビリアレトジノフの名前がどうにも覚えられなくて困る」
「歳やな」
「何にしても、先制を許す前は良いカウンターが出ていた」
「イニエスタが本当に中央に行った場合の守備はこうなる」
「普通に中盤がボールに寄せて、ジルコフがサイドに残ってセルヒオ・ラモスをケアする」
「これによりスペインの右サイドを抑えた、という点ではロシアの作戦は成功だった」
「しかし17分に失点して話が変わる」
「その失点はセンターバックのパスミスからだった」
「14番のシロコフがほぼフリーの状態で前方へパス」
「それが相手のカプデビラに直接渡った」
「ワンタッチで前方へパス」
「そこにトーレスが走り込んだところから悲劇は始まった」
「トーレスを追いかけた8番のコロジンがショルダーチャージ」
「これでボールがルーズになり、ディフェンスがクリア」
「ところがどっこい、これをトーレスがカット」
「ボールは中央へ」
「トーレスが回収してパス」
「走り込んだビジャが無人のゴールに決める」
「ロシアとしては最悪のミスやな」
「ヒディングが試合後”チームが未成熟だった”と言ったのはこういうことやろな」
「これだけじゃなくてパスミスは非常に多かった」
「それも絶対にやってはいけないたぐいのミスやな」
「それにしてもロシア人というのは堂々とミスをする」
「俺様のパスが通らないわけがない、という態度でミスが出るところが何とも言えない」
「最初のパスミスはそうやな」
「次のクリアミスは、体勢が崩れていたせいではある」
「あれはトーレスに当たって中にこぼれたように見えるが、実はそうではない」
「ただの偶然ではないな」
「トーレスは意図的に足を出している」
「この場面か」
「二人のバランスを見るとわかるように白い方はつんのめりになっているのに、赤い方はバランスを崩さず足を出している」
「ショルダーチャージの後、バランスの回復が早かったということやな」
「これを見てもトーレスの体のバランスが良くなったことがわかる」
「そういえば一つ謎があるんやけどな」
「なんや」
「このプレーの開始はこうやろ」
「そうやな」
「14番が右で8番が左や」
「そうなっている」
「しかしメンバー表ではその位置が逆やろ」
「そうやな」
「これはどうしたことかと」
「なぜかはわからんけど、この二人は試合中に頻繁にポジションを交代するんや」
「センターバックがか」
「そうなんや」
「珍しいな」
「どういう意図でやっているのかさっぱりわからんけど、そうなんや」
「そうか」
「実は、この二人はロシアの弱点でもあるねんけどな」
「どちらも加速が遅いし小回りがきかない」
「ビジャの3点目(※リンク切れ)に如実にそれが出ている」
「後半のロシアは前に出たけど、センターバックがこれでは後ろが不安でたまらないところやな」
「おまけによくスルーパスで裏を取られていた」
「あれはスペインが上手いのもある」
「ただスペインのスルーパスは、ほとんど下のパターンやから読めるで」
「ラインの前で一度横に動いて、反航した選手に出すわけやな」
「反航についてはこちらが詳しいですので」
「ご一読いただければと」
「さて」
「うむ」
「スペインは強いのかね」
「相手のミスを確実に点につなげる、カウンターを確実にチャンスにつなげる、という意味では強かった」
「あのカウンターはこれからも続けるんやろか」
「ロシアはミスが出るから、それを待った専用の作戦かもしれん」
「テクニックがあるチームがカウンターに入ると強いもんやけどな」
「スペイン人の性格がそれに向くかどうかは疑問やけどな」
「まあな」
「スペインの4点を見ると1点目は相手の大ミスと相手センターバックの弱さ。3点目は相手センターバックの弱さ。4点目は誤審。それらが大きな役割を果たしていて、それのないチームと対戦する時にどうなるかは予断をゆるさない」
「この布陣自体、ほとんど実戦例がないしな」
「はっきり言って予選とは別のチームやしな」
「はたしてどうなるかと」
「うむ」
「そんでロシアはどうや」
「みんな落ち着いてボールを操るわりに、落ち着いたままミスをおかすという奇癖さえなければ強いで」
「そんな急には直らんやろ」
「ゴール前のアイディア何か非常に面白いけどな」
「ミスで自滅するか否か、というところか」
「一つの方法としては無理につながず、カウンター型に変えることはできるんやろうけどな」
「その辺りが注目というところで」
「また次回」