技術構築における注意点 技術が思考を規定する1
前回は技術ミニマムを構築する際、スラローム系の技を覚えることにより、サッカーが下手になる可能性を述べた。
ここではその具体例を見る。
スラロームの定義をご存じない方はこちらをお読みいただきたい。
スラローム系の技として、次のものを考える。
足の内側でボールを弾いて切り返す。
特徴は角度の変化が非常に大きいことである。
90度、もしくはそれ以上の角度で切り返す。
概念図は以下のようになる。
この技を攻撃で使う場合、ゴールの正面を向いて使うことはできない。
図で明らかなようにプレーの方向がペナルティエリアを向かない。
ベクトルをゴール近くに向けるためには下のような体勢をとる必要がある。
エリア手前で横を向く。
この形から上手くいけば下の形でシュート、もしくはクロスを狙うことができる。
このような切り返しを得意とする選手が下の状況を迎えたとする。
下のように動く可能性が高い。
これにより得意技を使用可能にする。
具体例として以下のプレーを見る。
(画像出典:www.youtube.com/watch?v=euMu1SKi-ak ※リンク切れ)
1m11s
左足の内側でボールを弾く。
最初に右足でボールを横に転がす。
中に入った後、左足の内側でボールを弾く。
最終的に下の形で終わる。
これは極めて非効率なプレーである。
この形から始めるならば下のように動くだけで、ほぼ同じ形が出来上がる。
白と赤を比べると、白は時間とスペースを無駄にしているだけである。
スラロームを行うと時間とスペースを無駄にし、結局苦しい体勢で終わりやすい。
これは今までに多く見たスラローム系のプレーの本質的な欠陥による。
改善のためには正対を行う必要があることも既に見た。
このように正面から押し込んで抜く。
切り返しが小さな角度でよく相手を押し込んでいるため、その後のプレーが楽になる。
このようなプレーの具体例はこちらを参照されたい。
概念的には次のようにまとめられる。
スラロームで目指す形は下のようになる。
正対は、ほぼ同じプレーを下のように行う。
切り返しが小さいこと、体勢を苦しくしないこと、使うスペースが少ないこと、どれをとっても正対からのプレーの方が効率がいい。
上のプレーが可能な状況で下のプレーを選ぶ選手がいるとすれば、それは無駄の多い選手であり、無駄の多い選手を下手と呼ぶ。
通常、効率の良いプレーと悪いプレーが選択可能な状況で、後者を選ぶ選手は「判断」に問題があると言われる。
これは二つの選択肢から決定を下すのは脳であり、そこで間違った方を取るから良くないという考え方にもとづいている。
しかしその考え方自体が誤りである。
この選手が無駄の多いプレーを選択するのは、足の内側で弾く切り返しが得意だからである。
人の脳には得意な技を使うアイディアが閃きやすく、最終判断はそれに大きく左右される。
足の横で弾く切り返しが得意な選手は、それを用いたプレーを選択しやすい。
つまり得意な技術が判断を規定するのである。
サッカーにおいて思考、もしくはアイディアを規定するのは技術である。
これは忘れてはならない概念の一つである。
無駄の多い技術が得意な選手は、それを繰り返し用いることでプレーの非効率性を高める。
スラロームが得意になると思考がそれに縛られ、そこから抜け出せなくなる。
判断ではなく身につけた技術に問題がある。
次もこれを示唆する例を見る。
【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら。