中盤でのプレスへの対策
2008年5月7日 第36節
レクレアティーボ・デ・ウエルバ 0-2 ビジャレアル
該当試合において、次のような両チームが対戦した。
前半はレクレアティーボが優勢だった。
それは以下の理由による。
今期のビジャレアルは、中盤でパスを丁寧につなぐことを基本として設計されている。
右サイドでの様子を模式的に表すと次のようになる。
しかしこの試合では、相手中盤の守備が非常に強固であった。
出足良くボールに詰められ、周囲のスペースを消されるためパスが切断された。
模式的には次のようになる。
また中盤でボールを奪われた後、カウンターで度々ピンチを迎えた。
特にディフェンスラインの裏を狙うシナマ・ポンゴールに対する素早いフィードに苦しんだ。
特に26分のシュートがポストを叩いたプレーが典型であった。
前半の決定的なチャンスはレクレアティーボの4回に対して、ビジャレアルは0回、エリア内へのセンタリングも13本に対して5本、シュートは9本対2本と圧倒された。
Q1.
後半におけるビジャレアルの変更を予想せよ。
ただし選手交代は行わないものとする。
また状況として、双方ともに勝ち点3が必要だった。
A1.
マヌエル・ペレグリーニの出した指示は、前線へのロングボールを多用するというものだった。
しかしこれにはいくつかの問題がある。
まずビジャレアルのフォワードの2人、トマソンとニハットはロングボールを受けるのに適切だとは言えない。
トマソンは身長のわりに競り合いに弱い。ニハットは身長が低いためハイボールに強いとは言えず、裏へ抜けるスピードも以前ほどではない。
またベンチには攻撃の控えとしてカソルラ、ピレス、ロッシ、ギジェが入っていた。
キープ力に長けスペースにパスを出すことのできるピレスを入れることで、中盤でのパスワークを強化することも可能だった。
Q2.
ビジャレアルにとって得意な攻撃ではないにもかかわらず、上記のような対策を選んだ理由を述べよ。
A2.
一つは単純に相手の固い部分を避けるためである。
ロングボールで中盤を飛ばすことにより、相手が網を張っている部分を避けることができる。
またこれにより、最も危険であったカウンターを避けることもできる。
前半はパスをつなごうとするあまり、中盤の危ない位置でボールを失った。その場合、ディフェンスのバランスが崩れた状況であるためカウンターからピンチを招いた。
状況が厳しくなる前にロングボールを蹴ることにより、自らのバランスを崩す場面が少なくなる。
実際にレクレアティーボは、前半のような決定的チャンスを1度も作ることができなかった。
これに加えロングボールには、中盤を間延びさせる効果がある。
ロングボール主体のチームに対しては、どんなに訓練を積んだチームでもコンパクトに保てなくなる。
これはディフェンスラインが押し下げられ、それにともない中盤のラインも下がらざるを得なくなるためである。
この二つのラインが同じスピードで下がることは不可能であり、徐々に空隙が生じる。
これは中盤での守備が進歩した現代サッカーにおいてロングボール主体のチームが増えた一つの理由であり、それを受けることのできる大型フォワードがもてはやされる原因でもある。
この空間は疲労のため、時間が経てば経つほど広がる。
中盤にスペースができれば、それを利用する技術で勝るビジャレアルの方が有利である。
また途中出場する可能性の高いピレス、カソルラ、ロッシにとってスペースの多い状況はより都合がよい。
ロングボールを増やすことでビジャレアルは守備での落ち着きを取り戻し、52分にニハットのフリーキックから先制した。
59分にトマソンに代えてギジェを入れた。
ギジェはビジャレアルのフォワードの中で最も空中戦に強い。
65分にレクレアティーボが交代を行った。
アイトールが下がり、ハビ・ゲレーロが入った。
システムは3バックに変更された。
これは中盤を飛ばしてくる相手には弱い。
この形で攻めるにはサイドを上げなければならず、サイドを上げると3人のディフェンスの横にスペースが生じる。
ここをロングボールで攻められると3バック側は苦しい。
82分にビジャレアルが追加点を決める。
これは上図における左のスペースから崩した結果だった。
【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら。