2008/06/26 ユーロ2008 準決勝 (2)
ロシアの守備
「さて」
「ロシアの守備についてやな」
「そのために、まずはスペインの守備から見てみたい」
「比較用やな」
「ロシアの中盤がセンターサークルの横でボールを持っている」
「赤がロシア、黄色がスペイン」
「この場合トーレスも下がってビジャと2人でフロントラインを組み、その後ろに中盤の4人が見える」
「オレンジの丸のついたビジャは、サイドへ相手を追い込んでいく」
「この時、中盤は綺麗に4人並んでいる」
「見本のような中盤のラインやな」
「選手を横に並べると相手のパスコースが最も限定されやすく、ボールの横移動に強いためこのような構造が用いられる」
「ふむ」
「このラインを頭に入れた後、ロシアの守備を見てみる」
「下やな」
「この時点であれ?と思う」
「一番左にフォワードが残っていて、その後ろに3人のラインらしきものが見える」
「そこから右にパスが出る」
「ここでもあれ?っと思う」
「何やら3人のラインがもう一つ出てきた」
「そこからもう少し進む」
「おお」
「これはいったい、いかなるディフェンスなのか」
「伝説の1-3-3-3-1システムやな」
「それやったらもう少し前でプレシャーをかけるし、こんなに3人のラインが互い違いにずれたりはしない」
「何か不思議というか、現代絵画的のような配置やな」
「次にさらに恐ろしいディフェンスを見る」
「ほう」
「まずスペインのキーパーからセンターバックにパスが出る」
「センターバックからセンターバックへ」
「もう一度戻す」
「縦へドリブル」
「引いてくる選手にパス」
「ワントラップからサイドへ」
「これまたワントラップからサイドへ」
「縦へドリブル」
「縦パス」
「それを戻す」
「ここからは敵陣に入ったということで、ボールを持っている選手と一番近いディフェンスとの距離を表すオレンジの点線に注目していだきたいかと」
「サイドから中へ」
「中央へ横パス」
「サイドへ縦パス」
「ダイレクトで戻す」
「相手陣で完全にフリーになる」
「これは守備としては恐ろしいことで、ぜひ堪能していただきたい」
「まずスペインは何も特別なことはしていない」
「難しい技術を使ったわけでもないし、途中でスピードを上げるパスも使っていない」
「簡単なパスを空いてるところにつないだら、いつのまにか絶好の状態になっている」
「これは攻撃としては理想的やな」
「守備としたら、何をやっているのかという話やけどな」
「スペインの攻撃はゴールキーパーから始まっていて、しかもゆっくり攻めている」
「これで守備組織が整わなかったら嘘である」
「嘘であるのに中盤で何の抵抗もなくボールは進み、見事にピンチを招いている」
「ボールを持つ選手に対して距離が詰まる場面すらない」
「どこで守備をしたいのかがさっぱりわからない」
「それを言うなら、下の例もなかなかのもんやで」
「セナがくるりとターンして縦パス」
「ロシアは相手陣でプレッシャーをかけているわけやな」
「ところが間を抜かれて即ピンチ」
「5分でわかるに出てきた無駄プレスというやつか」
「下の流れも中々興味深い」
「中央から左前方にパス」
「それを中へ」
「フリーの上、右サイドに大きなスペースがある」
「これまたロシアの中盤が無抵抗でやられていることに注目したい」
「わからんな」
「とにかくわからんな」
「ユーロ後、ヒディングへのインタビュー企画というのは必ずあると思うが、ぜひその時は上の図を見せていったい選手への指示はいかなるものであったかを聞いていただきたいところではある」
「やはり疲労かね」
「それが一番楽な説明の仕方ではあるけど、ここまで守備に構造がないというのはそれだけでは理解できんじゃろ」
「ロシア人のむらっ気というやつかね」
「なんじゃ、それは」
「業界ではわりと有名で、ロシア人はどんなに強い相手にも勝つことができるが、どんなに弱い相手にも負けることができるという説がある」
「どこの業界や」
「知らんけどな」
「さよか」
「とにかく次はセスク、そしてトーレスとグィサの違いやな」
「やっとスペインか」
「この試合はロシアのことがわからないと理解できないから、仕方ないんや」
「続きは」