2008-06-26 ユーロ2008 準決勝 (1)

ロシア 0-3 スペイン

監督 フース・ヒディンク
フォーメーション 1-4-1-3-2


「なんと」

「遂にスペインが決勝に進んだ」

「無敵艦隊と呼ばれて沈没するのが常やってんけどな」

「その手垢のついた呼び名が今回は実現する可能性が出てきた」

「まずはめでたい」

「先発はこう」

「スペインはいつものメンバーやな」

「ロシアもメンバーとしては、予想通りだったのだが」

「そのプレーというのは、予想しがたい内容だった」

「予想しがたいというか想像しがたいというか」

「実はこの試合がどうして0-3の大差で終わったか、という理由のほとんどは最初の5分間に凝縮されている」

「うむ」

「そこで、5分でわかるロシア対スペインというのを最初の題目にしたい」

「最初と言うからには続きがあるのか」

「次がロシアの守備、その後にセスクの意味、トーレスとグィサの違いと続く」

「長いな」

「ただでさえ長いねんから、無駄口はつつしんでや」

「努力するわ」

「まずロシアのこの試合の方針は、開始44秒から1分6秒の間に見られた」

「これはその22秒間につながれたパスを表している」

「ズリアノフからサイドチェンジ、そこから10本のパスがつながってスローインになる」

「途中スペインの選手に触られてはいるけどな」

「赤い線はそれを表している」

「これはこの試合、つないで攻めますよという意思表示やな」

「ロングボールに弱いスペインに対し、正面から戦うことを宣言している」

「要するにつなぐの大好きスペインと同じ土俵に上りますよ、ということでもある」

「そうやな」

「次のプレーは1分26秒」

「サイドでロシアの選手が縦にショートパス」

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「ロシアは左に攻めている」

「パスは簡単にカットされる」

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「赤がロシア、地味な黄色がスペイン」

「このカットのされ方は、技術的に問題がある」

「そんな短いパスをカットされていては、つないで攻めることなどできない」

「ロシアの選手は基本的に上手いが、こういったどうにでもなる場所でぽろっと間違える」

「対してスペインはそれがほとんどない」

「いわゆるパスサッカー同士の対決でその差は大きい」

「勝手にこけるロシアが不利になる」

「お次は2分18秒」

「キーパーへのバックパスを、パブリュチェンコが追いかける」

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「しかし簡単に横にはたかれてなんの意味もない」

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「この状況で追っても後ろにスペースを残すだけで、一文の得にもならない」

「回りが見えてないのか気合が空回りしているのか」

「不可解なプレーになっている」

「そして2分27秒」

「ロシアは前に4人の選手を並べて、プレスをかけているように見える」

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「しかしボールを持っている選手との距離があり過ぎる」

「そして何より、そのすぐ横に大きな隙間が空いている」

「プレッシャーの意味は何もない」

「そこを通されて下のようになる」

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「前に出た赤い選手が置いていかれ、中盤にぼっかり穴があいている」

「無駄プレスというやつで集団でスペースを消していないから、前に出たことでかえってピンチを招く」

「守備の意思統一が見られないということやな」

「というか何を狙っているのかがわからない」

「その後は2分57秒」

「中盤、自陣でアルシャビンがボールを持つ」

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「そこでピンクのパスをフェイクにして、白い矢印のパスを出す」

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「おそらく狙いは股抜きやな」

「ところがシャビに読まれて跳ね返される」

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「これは危ないプレーやな」

「遠くに跳ねたからよかったもののシャビの前にこぼれたり、別の角度で跳ねてスペインの選手の前にこぼれたりすると一気にカウンターを喰らう」

「自陣で股抜きをしかけてはいけないということか」

「というかアルシャビンの狙いが、シャビに完全に読まれたことの方が問題やな」

「そうか」

「細かくパスをつないで攻めるとなると、一対一で相手の裏を取ることが必要になる。それなのにロシアで一番上手いと思われるアルシャビンが、こうも簡単にパスを読まれてはその点に不安が残る」

「要するに相手の裏を取りながらつないで攻めたら、餅は餅屋でスペインの方が一枚上と言いたいわけか」

「次は3分28秒」

「アルシャビンがセルヒオ・ラモスを背負ってボールを受ける」

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「ターンしようとするが」

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「簡単に体を入れられてしまう」

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「左から攻めたいロシアとしてはこれはきつい」

「アルシャビンがキープしてセルヒオ・ラモスを引っ張った後、上がってくるジルコフを使いたいところやからな」

「アルシャビンが負けてはどうにもならない」

「おまけにジルコフも、セルヒオ・ラモスを相手に勝てなかった」

「グループリーグでは勝ててたのにな」

「一度振り切って追いつかれるシーンがあったから、疲労が原因だろうと考えられる」

「ジルコフが疲れているなら他の選手もそうだろうという予想はつく」

「ロシアとしてはスペインを崩すとっかかりにしたい左サイドを押さえられた選手に、疲労の色が見えたというのはマイナスだった」

「次は4分49秒」

「まだあるんか」

「まだまだあるで」

「これはロシアのディフェンダーが頭でクリアした場面」

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「それが味方につながらない」

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「このクリア自体はわりと難しいものだったが、他でもこのような場面は多く見られた」

「5分38秒、7分33秒、12分56秒とかのプレーやな」

「クリアが攻撃の起点になれないのは痛い」

「特に押されている時はそうやな」

「最後のプレーは5分10秒」

「ちょっと待て」

「なんや」

「開始5分でわかるロシア対スペインじゃなかったのか」

「切り捨てれば5分や」

「ああ、そうか」

「納得したんか」

「そういうわけでもないけどな」

「中央でシャビがボールをキープする」

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「この時、サイドに大穴があいている」

「そこに走り込むのはセルヒオ・ラモス」

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「自分へのパスで縦に抜け出す」

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「この場面では止められてしまったが、セルヒオ・ラモスにここまでスペースを与えてはまずい」

「オランダ戦では、ここを空けて相手を誘い込んだんやけどな」

「ブラルーズとセルヒオ・ラモスはまるで違う。クロスは遥かに正確だし、縦に勝負もできれば中に切り返してシュートも打てる」

「実はお手紙が来て、日本の解説者がこれをロシアのトラップディフェンスが失敗しているから云々といっていたが、実際どうなんでしょうという質問があった」

「どうなんや」

「まずヒディングは、第一戦で非常に気を使ってスペインの右サイドを止めに行っている」

「そのあたりはこちらから」

「つまりセルヒオ・ラモスを自由にしてはいけないということを知っているわけで、それをわざわざ誘い込む理由がない」

「しかし、実際にロシアの左はやたらとスペースが空いていた」

「おそらくアルシャビンが戻るはずだったのに、戻らなかったのだろうと考えられる」

「ムトゥと同じような理由か」

「一戦目でそこを止めようとしていた監督が、二戦目で急にそれを放棄して守備を崩壊させるとは考えにくい」

「何にせよ、そのトラップディフェンスが失敗している云々という話の内容がもう少し具体的にわかれば、答えも違ってくる可能性がありますので」

「ご存知の方はお教え願えればと」

「とりあえず最初の5分のおさらいだけはしておくか」

「箇条書きにすると下ようになる」


・ロシアは細かくつなぎ、スペインと同じ土俵に上がった
・ロシアはつなぐ途中でミスが出る
・守備で前に出るがその横、裏にスペースを残す
・1対1の読み合いで勝てない
・セルヒオ・ラモスとの1対1に敗れ左を抜けなかった
・ジルコフから推察して疲労が蓄積していた
・クリアがつながらない
・右サイドにスペースを残し過ぎた


「全部ロシアの敗因として採用できるな」

「その辺りを書く場合は押さえておきたい」

「しかしや」

「なんや」

「たった5分でこれだけ問題が発生するのも珍しいな」

「珍しいわな」

「それにロシアのプレーが、第一戦より内容的に落ちてしまったのは残念ではある」

「中盤の守備がとにかく滅茶苦茶やったからな」

「中盤か」

「その点については」

ロシアの守備編にて」

解説者のコメント
まず、お忙しい中ご教示いただきましてありがとうございました。

また、質問が正確さを欠き申し訳ありませんでした。

私の記憶が正しければ、

1:ロシアは片方のサイドを捨てているが、
2:上手くスペインはその捨てたサイドを使って攻めているのが面白い
3:また、捨てたサイドから逆サイドに持って行って攻めている

というものでした。

ロシアの疲労が問題で、守備が崩壊したということは素人の私ごときには分からなかったのですが、

解説者たちは

4:ロシアは積極的に来ているけど
5:スペインだからこそのプレスをかいくぐって
6:攻めていけるんですよ
7:セスクが変わってから距離感も良くなって
8:ボールが繋げるようになったこともあるし
9:ロシアはちょっとボールを取れないですね

と述べ、

試合終了後、

10:ロシアは健闘したが何も出来なかった

と言ってました。ロシアの守備に関するコメントは確かこのようなものだったと思います。
2008/06/28 15:32 - ZERO

【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら

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