2008/08/20 親善試合
デンマーク 0-3 スペイン
監督 ビセンテ・デル・ボスケ
フォーメーション 1-4-4-2
「デル・ボスケが監督に就任した緒戦」
「ヨーロッパチャンピオンになった後の戦いが注目されるスペイン代表」
「結果的に0-3で勝利を収めた」
「まずはめでたしめでたしと」
「内容的にも興味深かったこともあり、よろしかったのではないかと」
「先発はこうやな」
「スペインだけを取り出すと、次のようになる」
「先発はユーロとほぼ同じ」
「ユーロでは最初のロシア戦から準決勝まで、先発は基本的にこれやな」
「怪我のマルチェナの代わりにアルビオルが入っている点だけが違う」
「システムも選手配置も、完全に前任者を引き継いでいる」
「この辺はデル・ボスケらしい」
「基本的に現状を無理に代えず、徐々に自分の望む状態にするのが得意技やからな」
「レアル・マドリーでトシャックの後を継いだ時もシステムや配置はほとんどそのままで、干されてくさっていた選手を上手く使うことでチーム全体のモチベーションを上げる方法を取っていた」
「まあしかし、本人の頭の中ではアラゴネスと違うアイディアがあるはずやな」
「当然やな」
「それを最初から出さない辺りが、政治的というか何というか」
「見方を変えれば、アラゴネスに敬意を表した先発ということもできる」
「前半のスペインは、よろしくない展開だった」
「デンマークに、ディフェンスラインから長いパスを通されたのがその原因やな」
「このメンバーのスペイン代表は、長いボールを使うユーロのスウェーデン戦のような展開を最も苦手としている」
「おまけにすでに公式戦が始まってるデンマークの選手に対し、スペインの方は大部分がまだシーズン前」
「走り負けるのは当然といえば当然やな」
「長く蹴られてキープされた後、サイドを突かれて全体が下げられるような流れが続くとスペインは非常につらい」
「つらい前半をなんとか0-0で凌ぎ」
「期待の後半」
「どんなデル・ボスケの特徴が出るかと思っていると」
「こうなった」
46分:
「ディエゴ・カペルが左、とシャビ・アロンソがセナの横に入り、シャビがトップ下、イニエスタが右の1-4-2-3-1か」
「ベンチに下がったのはビジャとシルバ」
「49分に先制すると62分に次のようになる」
62分:
「グィサとカソルラが入り、トーレスとイニエスタが下がる」
「これは、非常に典型的な1-4-2-3-1の選手配置やな」
「確かに」
「このシステムにおける、いわゆる教科書的な役割分担は下のようになる」
「まずボランチでは片方が中盤をカバーし、もう一方がボールをさばきながら前に出る」
「カバーするのがセナで、さばくのがアロンソ」
「サイドの選手はサイドを縦にえぐり、守備においては相手サイドバックにプレッシャーをかけつつ、中盤をフォローし味方サイドバックを助ける」
「縦に長い距離を速く走る必要があり、ドリブルも上手い方が良い」
「それがカペルとカソルラ」
「トップ下はラインの間でボールを受けてパスを散らしつつ、フォワードをフォローしてラストパス、シュートを狙う」
「それがシャビ」
「トップはラインの裏を狙うことでスペースを生み出し、左右に動き縦に入るボールを受けてつなぐ」
「当然、ゴールも狙う」
「それがグィサ」
「各ポジションに選手の特徴がきちんとはまっている」
「特にこのシステムを攻撃面で機能させるには、下のパスが必要になる」
「ボランチから左右のサイドの選手へのパス、ディフェンスラインからのクロスのパス」
「このシステムやサイドを重視した3トップ系のシステムにおいて、このパスが出ないと選手を前に置く理由が非常に薄くなる」
「むしろ、その裏をつかれてアップアップになることが多い」
「逆にこれが通り相手をサイドから押し込むと、守備も非常に楽になる」
「サイドの高い位置に選手を置くことと、そこにクロスに長いパスを合わせる選手の存在は、セットである必要があるので覚えておかれるとよろしいかと」
「以上が教科書的な説明であるが」
「スペイン代表は右サイドの具合が少し異なる」
「下の形やな」
「右前のカソルラは中に入ることが多く、その外にセルヒオ・ラモスが出て最後からの攻撃を担当する」
「その辺はユーロプレビューで見たアラゴネスのアイディアと同じやな」
「セルヒオ・ラモスの上がる能力をいかそうということやな」
「そしてセナは中盤をカバーする役割でありながら、パスを出す能力にも優れる」
「その証拠といってはなんだが、前半のデンマークはトマソンが非常に気を使ってセナをマークしていた」
「準決勝のロシア、決勝のドイツともに、セナのパスが発端となって失点をしたことを考えると当然といえば当然かね」
「アシストの一つ前のパスや、崩すきっかけになるパスをセナが出すからフリーにすると危ない」
「通常、カバーを担当する選手というのはボールを持つと何をやっていいのかよくわからないことが多い」
「その中で、両方の能力を高いレベルで持ち合わせたセナの存在は非常に大きい」
「それにしても上のシステムと配置がデル・ボスケの基本になると見ていいのかね」
「おそらくそうやと思うが、今後に注目したいところではあるな」
「73分にシャビがミドルを決めて75分に再び交代」
75分:
「イラオラ、レイナが入り、セルヒオ・ラモス、カシージャスが下がる」
「実はこの時、ピッチ上にレアル・マドリーの選手が1人もいない」
「それはどうでもええやろ」
「いやかなり珍しいと思うで」
「そんなことよりイラオラおめでとうやで」
「やっと代表のピッチに立てたな」
「4年前から代表になってもおかしくない働きだったんやけどな」
「右を上げるという方針なら彼は実にええな」
「長いパスやクロスでも良い球筋だったので、今後にも期待が持てる」
「セルヒオ・ラモスから先発を奪うのは難しいとは思うけどな」
「そういえばこの試合でも、ラモスは左サイドを崩された後のクロスに対して鬼のような働きをした」
「ユーロのイタリア戦でもそうだった」
「あれを見るとちょっと他の選手を使う気がおきない」
「無駄にファールをしない、大ポカをしない、キックが上手い、という点ではイラオラが勝ってるんやけどな」
「まずは控えに食い込んでチャンスを待ちたいところではある」
「そういえばレイナの父親も代表ゴールキーパーだったが、常に控えだったらしい」
「有名な話ではあるな」
「控えといえば今、代表に呼ばれていない選手で今後呼ばれる可能性のある選手はどんな感じやろな」
「つらつらと考えるに下のようになる」
「ふむ」
「うむ」
「キーパーはディエゴ・ロペスか」
「ビジャレアルでのプレーを見ると代表も近かろう」
「ハルケは何でだ」
「ディフェンスラインからの組み立てをより良くするために、ハルケに期待したいんやな」
「左のコイキリはええな」
「小さいのが難点だが実にいい守備をする」
「クロスも今ひとつやけどな」
「ブルーノは潰せてさばける選手として代表まで成長しないものかと」
「プレシーズンではビジャレアルで左サイドバックとしてプレーしていた」
「右はスサエタ、へスース・ナバス、フアン・ロドリゲス」
「スサエタ、ナバスは、サイドでも中でプレーできるからチームに合う」
「へスース・ナバスについてデル・ボスケは”彼は右でもいいけど、トップ下でこそもっといきる選手だ”と言っていたから呼ばれると面白い」
「その発言については、ナバスのどこを見てそう思ったのか非常に聞いてみたいところではあるな」
「フアン・ロドリゲスは中盤から前ならどこでもプレーできおまけにチームを支えるために走り続けるから、デル・ボスケ好みかもしれん」
「昔のソラーリやジェレミ、マクマナマンみたいな役割やな」
「左はクエバス、リエーラ、セラーノか」
「うむ」
「リエーラとセラーノは気分の波が激し過ぎて、使うのは難しくないかね」
「そこでクエバスに期待したいところではある」
「アトレチコの左サイドで右利きで左サイドを縦に抜けるタイプやな」
「その意味ではシモンとの類似点が多い」
「ほんでトップにネグレドと」
「ワントップとして非常に優秀やな」
「こうして見ると、代表の外の選手にも楽しみが多い」
「スペイン代表は楽しみが一杯と」
「監督の今後の働きも楽しみやしな」
「そういえばこの試合で後半、1-4-2-3-1に変えたのは守備的にも上手かった」
「相手のディフェンスラインによくプレッシャーがかかるようになり、相手の狙いである長いパスを出しにくくさせた」
「これは単純に前方に選手が増えたこともあるが、サイドにカソルラ、カペルという詰めの早い選手が入ったことも大きい」
「こういう相手の狙いに合わせた対応というのは、デル・ボスケは非常に上手い」
「そんなこんなに注目しつつ」
「今回はこの辺で」
「また次回」
「ごきげんよう」
おまけ:
スペインの一点目
サイドからの展開も上手いが、中央でトーレスにパスを出した後のイニエスタの動きと、それによりフリーになったトーレスが一度前を向いた後、ボールを中に返した点は非常に見事だった。
シュートを決めたシャビ・アロンソは、トーレスの前に出た後の切り返しを予測して動いたと推察される。
トーレスがラインの裏に抜けた後、赤い点線のようにディフェンスが飛び込んだ。
しかしこれは良くない。この状態でバウンドしているボールに対して飛び込むとソンブレロ(頭を越す浮き球)で逆を取られる。
アングルのほとんどない場所からボレーシュートを打たれる危険性と、ソンブレロでフリーになられる危険性を比較すると、かぶせるように詰めてシュートを打たせた方が良い。
頭でわかっていても飛び込みたくなる場面ではある。
【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら。