楔型インステップキック イメージ、メカニズム
これは軸足が地面につく直前の姿勢である。
〇は関節を表し、赤い線はそれをまたぐ筋肉を表す。
関節は一番下から膝、腰、体内を表す。
体内の関節とは下図のピンクの部分を近似的に関節とみなしている。
(参考:立ったまま蹴る、体幹、ムチ効果、捻りの利用)
着地において軸足を踏ん張ると、軸足から体にかけては上に移動しようとする。
これに対し振り上げた足の部分は、下に移動し続けようとする。
この結果、この関節をまたぐ筋肉が瞬間的に引っ張られて伸びる。
瞬間的に伸びる筋肉は、逆に縮もうとする反射をおこす。
これに合わせて筋肉を縮めることで、短時間に強い力を発揮することができる。
一番上の関節が強く閉じた場合、二番目の関節に次のような作用がおこる。
このずれにより関節をまたぐ筋肉が、瞬間的に引っ張られて伸びる。
第二関節が鋭く動いた場合、第三関節に同様の作用がおこる。
以上のように連続的にこの作用が発生し、次のような関節運動が引き起こされる。
短時間に強い力を発生させるメカニズムが、各関節において連鎖的におこる。
全体の動きは下のようになる。
このように動き続ければ、最終的に上体と蹴り足が地面に平行に近づくことが自然である。
これは以前に見た、エウゼビオのポーズを再現する。
ここまで極端でなくとも上体と蹴り足が縦に近づく動きは、楔型の一般的な特徴である。
以上のように、楔型は体の中からの動きを利用してボールをとらえる。
いわゆる体幹の力を利用したキックの実例となっている。
また筋肉が瞬間的に大きな力を発揮する元となる伸張反射を上手く利用するためには、以下の点に注意する必要がある。
参考:ためになる用語集、プライオメトリックトレーニング (Plyometric Training) ※リンク切れ
Plyometrics
瞬間的に伸びる筋肉は逆に縮もうとする反射を起こす。これに合わせて筋肉を縮めることで、短時間に強い力を発揮することができる。
その詳しいメカニズムは、上記リンクを参照されたい。
この伸張反射を有効に活用するためには、いくつかの注意点がある。
①タイミング
黒い矢印は時間を表している。
図の左は筋肉が伸ばされ、急激に収縮した状態を表す。
図の右は筋肉が伸ばされた後、しばらく時間をおいてから筋肉に力を与えた状態を表す。
伸縮反射が起こってから間が空く場合、急激な収縮は起こらないとされる。
これはインステップキックにおいて、体に地面の衝撃を感じてから時間をおいて筋肉を引っ張ても、短時間で強い力を発揮する効果は期待できないことを意味する。
左で発揮される力は下の赤線に相当し、右は紫線に相当する。
②力の向き
筋肉が縮む反射を得るためには、その前に筋肉を急激に伸ばす必要がある。
そのためには、力が筋肉の伸縮方向となるべく平行な方が良い。
図の下のように力が斜めを向くと無駄が生じる。
③リラックス
筋肉が縮む反射を得るためには、その前に筋肉を急激に伸ばす必要がある。
図の左右で筋肉は同じだけ伸びている。
しかし左はより短い状態から、右はより長い状態から伸びを開始する。
一般的に、伸びているものをさらに伸ばす方が難しい。
このため伸縮反射を上手く起こすためには、筋肉が自然な長さに近いことがのぞましい。
つまり筋肉は開始において、十分リラックスしている必要がある。
このことは上手い選手ほど、ピッチ上でリラックスしているように見える一つの理由であると考えられる。
以上のことは伸縮反射を利用するためには、楔型のインステップの方が弓型よりも優れていることを示している。
左が楔型、右が弓型であり着地直前の様子を模式的に表したものである。
一番上の関節をまたぐ筋肉に着目する。
地面を踏む力は体幹に沿って伝わり、該当筋を伸ばす。
この時、楔型の方が力と筋肉の伸縮方向のなす角度が小さい。
上の②の理由により楔型の方が、伸縮反射を上手く利用できると考えられる。
同時に弓型の方が全体を弓なりに反らせるため、該当筋の伸びが大きく楔型の方が小さい。
③の理由により、楔型の方が伸縮反射の利用に向いてると考えられる。
次回は楔型インステップの練習法について見る。