バルセロナ 1-1 ラシン
監督 ジョゼップ・グアルディオラ
フォーメーション 1-4-3-3
「バルサはホームで引き分け」
「2試合で勝ち点1の15位」
「よろしくない状況であるな」
「まさに」
「この日の先発はこう」
「ラシンは1-4-4-2」
「綺麗に3ラインを作る」
「バルサはいつものやつやな」
「一応1-4-1-2-3だが、見慣れない選手が幾人か出ている」
「ピケ、セルヒオ・ブスケツ、ペドロ辺りがそうかね」
「ペドロはペドリートとも言う」
「小さいペドロとか、ペドロちゃんといった意味やな」
「それはさて置き、やはり注目はセルヒオ・ブスケツ」
「チームの要になる部分に彼が置かれた」
「いわゆる中盤の底で、監督であるグァルディオラの現役時代のポジションやな」
「そこで今回は彼に注目しつつ、ここのところ取り上げてきた組み立ての上手、下手、サッカーの上手、下手を見ていこうと思うわけや」
「よかろう」
「まず結論から始めると、ブスケツは上手い」
「特に組み立てにおいて抜群の能力を持っている」
「論より証拠ということで、次の流れを見ていただきたい」
「ディフェンスからのパスを受けてブスケツが前に出す」
「センターサークル付近でボールを受けたのがブスケツやな」
「これは非常に上手い」
「最初の段階でブスケツはセンターサークル内、相手の2人のフォワードの間でパスを呼ぶ」
「これは実は恐い」
「ここから前を向いてパスを出そうとすると2人に挟まれる」
「蹴る直前の写真がこれやな」
「相手のフォワードが寄せて来ている」
「この距離だとパスをコントロールして反転する段階で、ほんの少しミスを犯せばボールを奪われる」
「そしてこの位置でミスをすると、失点の可能性が非常に高くなる」
「だから自信のない選手だと前を向かずにバックパスを出す」
「むしろ自信のない選手だと最初の段階でボールを呼ばない」
「ところがブスケツは相手のど真ん中で、ボールを呼び簡単に前を向く」
「これは、よほど自分の技術に確信があると見ていい」
「これがデビュー戦と聞くと、なおのことびっくりする」
「そして前を向いた後のパスも極めて正確で、非常に良い場所へボールを預けている」
「ブスケツ1人で、相手のフォワードとミッドフィールダーの2つのラインを通した勘定になる」
「これをやられては、守備としてはたまったもんじゃない」
「この場面からしてブスケツは技術が高く、組み立てに自信のある選手であろうというのは想像がつく」
「下の流れも組み立てとして上手い」
「今、右サイドからブスケツにバックパスが出る」
「それを受けて横に出すわけですが」
「その間の何が上手いのか」
「考えながらご覧いただければと」
「この形の鍵は下の図で、横パスを受けた選手とそれに対して詰める選手の間に十分な距離がある」
「以前にもあるように組み立てが上手いか下手かの大きな差は、パスを受けた選手と一番近いディフェンダーとの距離の差にある」
「もちろん遠ければ遠いほど良い」
「この場合、なぜ遠いかというと下の理由がある」
「ブスケツは赤い矢印のパスを出すフェイントをかけており、このため丸で囲まれた選手は前に出ることができなかった」
「いわゆるピン止めという奴やな」
「赤いパスコースにピン止めされて、そこからずれることができない」
「これが下手な選手だとどうなるかというと」
「まずはパスフェイントで相手をピン止めする、というアイディアがない場合やな」
「ディフェンダーはより早く前へのスタートをきることができるので、横パスを受けた選手はより近い位置にディフェンスを迎えることになる」
「次にパスでピン止めするアイディアはあるが、パスコースの変更が下手な場合やな」
「この場合、キック表面をインフロントからインサイドに変えてパスコースを変えるわけだが」
「技術的に下手であれば、より早い段階でその意図を見抜かれてしまう」
「以前、パスの方向を変える技術で見たように、2つの違うコースに蹴るモーションはなるべく最後まで一致してしていなければならない」
「この場合のブスケツはきちんとパスフェイクを入れ、しかもその意図が最後の最後まで読まれていないという意味で上手い」
「受ける選手がなるべく楽な状況で持てるように、気遣いのあるパスやな」
「おまけに右利きの彼が左足でそれをやったところに価値がある」
「ところでや」
「なんや」
「今までの話からすると、ブスケツの逆のフェイントも試したくなる」
「どういうことや」
「横に出すパスをフェイントにして縦に出す」
「これは有名なグティパターンやな」
「早い話がそうやけどな」
「この状況では守備が過剰に反応しないだろうから、ちょっと使いづらいな」
「ちなみにグティパターンというのは下の形で」
「こちら(※リンク切れ)に詳しい解説もありますので、ぜひご一読いただければと」
「それはそれとして、ブスケツは上手い」
「良いところは少ないタッチでパスを回すイメージとビジョンがあり、浮き球のコントロールが上手くサポートの動きも良い」
「おまけにスライディングタックルも上手い」
「現状で弱点といえば、空中を飛ぶパスかね」
「グラウンダーのパスは非常に良いのだが、ミドルレンジの浮かせたパスは今ひとつやな」
「距離が今ひとつあわんな」
「正確に蹴ろうとすると遅くて短いパスになるし、強く蹴ると飛び過ぎる」
「図の赤い線のような感じやな」
「少なくともこの試合では3回そのようなパスを蹴って、ことごとく失敗した」
「はたしてそれが本質的なものなのかどうか」
「今後も注目と」
「後は競り合いを嫌うそぶりがあるので、それもチェックポイントやな」
「ところでグァルディオラは彼を使い続けるのかね」
「いかにも好みの選手であるし、低い位置からの組み立てにおいて彼を越える選手はほとんどいないので、使うのではなかろうかと」
「そんなところで」
「新しい才能が出てきたリーガ」
「その辺りを楽しみにしながら」
「今回はこの辺で」
「また次回」
「ご機嫌よう」