意図的な操作をともなわないコントロールに対する推察
前回まで意図的な操作を行わずにボールをコントロールする例を見た。
ここではそのメカニズムを考える。
通常ロングボールを扱う場合、ボールの速さの方が人の速さよりも大きい。
図においてピンクの矢印はボールの速度を、オレンジの矢印は受け手の速度を概念的に表している。
接触直前において両者の速度は大きさが異なり、向きもずれた状態にある。
ボールとの接触が起こると足先の変形が始まる。
この時、足先とボールは接触を保ったまま前方に動く。
その過程において、ボールは足先から進行方向と逆方向の力を受け減速していく。
最終的に足先の変形が限界に達する。
この時、足先とボールはほぼ同じ速度と考えてよく、また足先は変形の限界にあるため体に対して静止しているとみなしてよい。
結果として、体全体の速度とボールの速度がほとんど一致した状態になる。
これは両者の相対速度がゼロに近いことを意味している。
ここで接触が終われば、その後の体とボールの間の距離はほとんど変わらない。
現実として両者の距離はほとんど変わっていない。
相対速度がゼロに近いことは、選手から見てボールが止まっていることを意味しており、次のプレーに移りやすい。
この過程が起こるために重要なことはボールと足先がある時間、一体化して動くことである。
そのためには、足がボールに伝える力は弾性的あることが望ましいと考えられる。
つまり接触の最初においては非常に小さく、変形の増大とともに大きくなるような力である。
それを示唆する次のようなコントロールがある。
(画像出展:www.youtube.com/watch?v=ir2voHcPvbU ※非公開 Zinedine ZIDANE trapping compilation - christinayan - 1:35)
このコントロールも受動的である。
その特徴はボールとの接触後、足首から先に振動が見られることである。
振動は静止画では判別しづらいが、連続表示もしくは元動画の1分35秒より確認可能である。
そのような振動は、足の末端部分が緊張から開放されていない限り発生しないと考えられる。
また振動が起こることは、何らかの弾性的な力が働いていることを示している。
これまでに見たコントロールが現実に行われていることから推察して、足の末端部分が緊張から開放されてボールと接触する場合、受動的なコントロールが成功する要件が自然に満たされると考えられる。
次回は、これまでよりも意図的な操作が可能な状況におけるコントロールを見る。
【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら。