2008/10/11 ワールドカップ2010 予選

エストニア 0-3 スペイン

監督 タルモ・リュトリ
フォーメーション 1-4-1-4-1


「さて」

「相変わらず順調なスペイン代表であるが」

「エストニア戦では非常に興味深い交代が見られたので、その辺りを見て行こうかと」

「うむ」

「まず先発はこう」

「スペインは中盤にシャビが2人並んでいるのが特徴的である」

「相手が引いてくるのは確実なので、そこに組み手の上手い2人を並べるということやな」

「それで守備的にも心配ないと」

「そういう判断やな」

「エストニアの試合運びは予想通りに守備を重視していた」

「プジョルにボールを持たせ中盤での寄せを早くすることで、スペインの選手に技をかける時間を与えず、非常に良い守備をしていた」

「かつ攻撃では、ほとんどカウンターに出て行かなかった」

「特にサイドの選手の切り換えが非常に遅い」

「ボールを奪っても全く前に出て行かない」

「実に消極的だった」

「前半はとにかく凌いで後半勝負ということやな」

「しかし35分にシャビのフリーキックからフアニートが頭で決めてスペイン先制」

「37分にはカウンターからビジャが右サイドを抜けてクロス」

「中でトーレスが倒されてPK」

「ビジャが決めて、0-2」

「もろくも狙いは崩れさる」

「スペインに回されて崩されたというのではないだけに悔しい」

「最初の得点につながったフリーキックなんか、全くいらんファールからやったしな」

「攻めなければいけないエストニアであるが、攻撃において下のような特徴があった」

「まずトップのボスコボイニコフはワントップで苦しい」

「体が大きくターゲットに使う選手だが、ロングボールをキープできない」

「コントロール技術もさることながら、読み合いの面でもフアニートに当たるフェイントから体を引かれてバランスを崩すなど負ける場面が目立った」

「次に左サイドバックのクルグロフから良いパスが出ない」

「組み立てで長いパスを出すと通らず、逆サイドに展開するパスもことごとく合わない」

「前半のエストニアは、彼が空く場面が多かっただけにもったいなかった」

「この2点がしっかりしていれば、もう少し押し返しが効いた」

「キーパーと1対1になる決定的なチャンスを一度作ったが、攻め手は非常に少なかった」

「逆に右サイドバックのヤーゲルは組み立てが非常に上手い」

「自分の動きに周囲がどう反応し、どのようなスペースができるのかをきちんと把握している」

「どんな国にも、こういったいわゆるサッカーのわかる選手が何人かいるのは面白い」

「ただ守備面では、イニエスタにしろ後半出てくるリエーラにしろ全く止めることはできなかったし、スルーパスに対する読みも外れていた」

「まあ組み立てができてイニエスタとリエーラをきちんと止められたら、トップクラスのチームでプレーできるけどな」

「そして中盤の中央に位置する14番ヴァシリェフと13番ヴンケ」

「きちんと相手を向いてプレーすることができる点で非常に良い」

「前半は守備に重きを置いていたが、端々にボールをもって良いプレーを見せた」

「その前半は、0-2とスペインリードで終了」

「追いつきたいエストニアは後半どうしたかというと」

「ガードを解いてきた」

「上はボールを持った時の概念図で、ヴンケとヴァシリェフのどちらかがフォワードに近い位置まで上がるようになった」

「スペインにはある程度スペースを空けた長い展開が有効で、そのわけはユーロのスウェーデン戦とかわらない」

「これで徐々にエストニアは良くなっていく」

「そんな中、53分にセルヒオ・ラモスがイラオラに交代」

「これは不思議に思う」

「この状況なら、理屈的にはフォワードとサイドとボランチを代えそうなもんやしな」

「この種明かしは単純で、セルヒオ・ラモスは1週間以上前から怪我を引きずってプレーしていたためなんやな」

「この後、さらにエストニアペースになり3回連続で決定的チャンスを迎えるなど、雲行きが怪しくなる」

「ところが69分、シャビのフリーキックからプジョルが押し込んでスペインが追加点」

「ありゃ」

「1点目に続き、またシャビのフリーキックが炸裂した」

「この日の彼のキック精度というのは恐ろしく、フリーキックにしろコーナーキックにしろ、どんぴしゃで味方に合っていた」

「当たり日やったんやな」

「そして得点直後、デル・ボスケが動く」

「70分、ビジャを下げてセスク・ファブレガスを入れる」

「その前の59分に、エストニアのキンクがプリエに代わっている」

「これは56分にキンクがイエローをもらっていたことが関係しており、疲労の他に退場を心配している」

「そういえば最初、イニエスタを倒してスペインの先制点を呼び込んだのもキンクやったな」

「それはさて置き、ビジャからファブレガスという交代は興味深い」

「まずその後に採用されたシステムは1-4-4-1-1だった」

「1-4-1-4-1ではない」

「シャビはセスクが入った段階で後者だと思っており、ポジションをセスクの隣に下げようとしていた」

「しかしセスクが”戻ってくるな、戻ってくるな、いいから前に居ろ”というゼスチャーを見せてそれを制止した」

「その意味は主に3つある」

「まず一つは相手の中盤の三角形に対して、こちらも三角形で対抗する」

「じつは1-4-4-2で1-4-1-4-1を相手にすると、中盤の中央で数的不利を招く場合がある」

「前者はボランチが2人なのに、後者はそれに対応する場所に3人居る」

「上の図ではシャビ、シャビ・アロンソ対ヴァシリェフ、ヴンク、ドミトリイェフで2対3やな」

「フォワードがきちんと下がっているうちは問題ないが、何かの拍子にずれることがある」

「典型的な例がユーロ2008の決勝やな」

deuchegoal0_09.jpg

「上の状況でフリングスはシャビ、ヒツルスペルガーはセスクについて、その前のセナがフリーになっている」

「その状況を避けるには、フォワードの片方を下げてディフェンスラインの前に残る1人につけてしまうのが一番早い」

「実はビジャレアル対ベティスでも、それは行われている」

「ビジャレアルは一番目の形でリードを奪った後、二番目の形に変更した」

「ギジェ、イバガサのどちらかが、必ずアウレリオについていた」

「1-4-4-2で1-4-1-4-1を受けるには、フォワードのどちらかを下げて中盤の1につければいい」

「監督をされる方は覚えておかれると便利な定石かと」

「二番目の狙いとしてセスクをディフェンスラインの前で左右に大きく動かし、低い位置からの組み立てを担当させるというのがある」

「大きく動くとなると体力を消耗するので、新しく入った選手がやる方が良い」

「おまえけに受けるスペースを変えながらボールを引き出すというのは、セスクの得意とするところでもである」

「相手が長い展開で押し込んできたとしても、セスクを経由することによりボールを落ち着けて前につなぐという意図がある」

「3番目はシャビで広がった中盤のスペースでパスを受けて、スルーパスなりサイドへの展開へつなげようということやな」

「組み変えて早々、トーレスに2つスルーパスが出た」

「一つはトーレスがコントロールミス、もう一つはディフェンスにカットされた」

「まあ、まとめると中盤にヘルプを増やすことで守備的に安定させ、組み立てで低い場所でセスク、高い場所でシャビを使おうということになる」

「それで非常に上手くいった」

「試合が急に落ち着いたしな」

「しかし一つ疑問が残る」

「なんや」

「相手が縦に長い展開を仕掛けている時にハイボールい強いわけでもなく、長い距離を走ることに向いているわけでもないセスクを入れるのは、守備的には矛盾でありそのデメリットが出るという理屈も成り立つ」

「例えばオーストラリア対日本(※リンク切れ)で小野を入れたときのような話かね」

「そうやな」

「スペインの場合、一人中盤に近づけてきちんと守備に人数を増やしているというのは大きい」

「シャビか」

「それにエストニアはハイボールからヘディングで勝負していたわけではなく、スペースに送ることで攻めていた。それなら同じような特徴を持った選手で、より新鮮な選手を入れるというのは守備面で矛盾しない」

「さよか」

「違うか?」

「まあ70分以降に試合が落ち着いたのは確かやけど、それがセスクのおかげとばかりは言えへんやろ」

「69分のゴールで、エストニアががっくり来たのは確かやしな」

「図にすると下のようになる」

shoot_estesp.jpg
引用元:http://www.as.com/futbol/partido/Estonia-Espana-0279_10_04_1393_0163


「一応、グラフが上に行けば行くほどチャンスが多いということになる」

「見ると後半開始からスペインの攻撃が止まり、徐々にエストニアペースになったことがわかる」

「ところが69分にスペインがゴール」

「70分にセスクが登場して再びスペインが優位に立つ」

「それにしても前半、エストニアは良く守ったとはいえ、やっぱりやられてるな」

「そりゃ、戦力差が段違いなんだからしょうがないで」

「そこで思うんやけどな」

「なんや」

「スペインはエストニアが引くと予想して、シャビとシャビ・アロンソを中盤に並べたわけやろ」

「そうやな」

「それに対して前に出れば、後半開始からのようにわりと優位に戦える」

「それがどうした」

「それなら、キックオフと同時に最初から前に出たらどうかと思うわけや」

「奇襲か」

「15分くらいバンバン選手を前に上げて、相手が空けた中盤を攻めていくわけや」

「それでビジャへのロングパスを返されて、一発で沈むわけか」

「まあその危険はあるけれども相手のペースにはまらず、こっちから主導権を握りに行くという意味ではええやろ」

「博打やけどな」

「やる価値のある博打やと思うけどな」

「まあ」

「そんなこんなで」

「また次回」

「ご機嫌よう」


おまけ:先発(スペインのみ)

最終配置

おまけの画像
上下が逆のようです。

現状は、最終配置が上、初期配置が下、
となっているようです。
2008/10/13 15:27 - ZERO

Re:おまけの画像
ご指摘ありがとうございます。
修整しました。
またなにかありましたらよろしくお願いします。
2008/10/13 21:31 - studio fullerene C60

無題
ビエルサのチリVSアルゼンチンの解析をぜひやってほしいです。お願いします。
2008/10/17 22:07 - ひかり

【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら

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