2009/04/21 リーガ・エスパニョーラ 32節
レアル・マドリー 3-2 ヘタッフェ
監督 ビクトル・ムニョス
フォーメーション 1-4-4-1-1
「さて」
「マドリーが久しぶりに伝統芸的な試合をした」
「大筋はと言えば」
「前半は1-1で終わり」
「後半84分に、スカスカになった守備ラインを破られて失点」
「これはまずいと思ったら」
「2分後にグティが見事なフリーキックを決めて同点」
「行け行けムードになった直後」
「ぺぺが何を思ったか、エリア内で倒れたカスケーロを二度蹴り飛ばして退場」
「おまけに相手のPK」
「非常にまずいと思ったら」
「カスケーロが見た目最悪のPKミス」
「その5分後の93分」
「ロングボールで一気の攻め」
「押し上げた中盤がクリアボールを回収」
「そこからイグアインのミドルが決まって逆転」
「場内絶叫また絶叫」
「ピンチの連続、絶体絶命になってからのどんでん返し」
「特撮ヒーローものにおける、王道のような展開だった」
「シナリオとしてはベタ過ぎて、逆にしらけるほどのものだった」
「それを現実に起こすところが、レアル・マドリーというか何というか」
「伝統芸能というか何というか」
「実に盛り上がる試合であった」
「前半の配置はこう」
「マドリーはゆがんだ形でわかりにくいが、数に当てはめれば1-4-3-1-2」
「ヘタッフェは1-4-4-1-1」
「9分にグラネロのクロスから、ソルダドが頭で合わせて0-1」
「ベルナベウに暗雲が漂う」
「前半、鳴かず飛ばずのマドリーだったが、ロスタイムにガゴが頭で跳ね返したボールが非常に良い場所に落ちイグアインがゴール」
「同点に追いつく」
「ここのイグアインは上手かった」
「カタ・ディアスのチャージを受け、潰した体の当て方は見事だった」
「そのまま前半は終了し、どうにもならん内容ながらゴールだけは取って勝ついつもの試合かと思われた」
「が」
「後半」
「57分までに3つの交代が行われる」
46分:マリオ → ベレンゲル
46分:ファン・デル・ファールト → ロベン
57分:マヌー・デ・モラル → アルビン
「マリオの交代は怪我」
「マドリーはファン・デル・ファールトを下げ、ロベンを入れて上の配置になる」
「ラウールが右、フンテラールが左である点が興味深い」
「何はともあれ、ここまでの交代は普通やな」
「57分にマヌーを下げる点も含めて、予想の範囲内であるという意味でそう言える」
「まあマヌー自身は交代にえらく不満顔やったけどな」
「ヘタッフェの選手と、ビクトル・ムニョスの間になんかあるのかね」
「この前、コントラも交代関係で監督と喧嘩したらしいしな」
「そういえばあれやな」
「なんや」
「マドリーはグティが監督と問題をおこし、ヘタはコントラが監督に殴りかかり、似た者同士の対戦ではあったわけやな」
「似ても困るという話やけどな」
「それはさて置き」
「次の交代は、かなり予想を超えたものだった」
「59分、カンナバーロを下げハビ・ガルシアを入れる」
「ボランチのハビをセンターバックの位置に入れる勝負手かと思いきや」
「さにあらず」
「下のようになる」
59分:カンナバーロ → ハビ・ガルシア
「うむ」
「実に」
「何というか」
「ほんまかね」
「どう見てもこうなっていた」
「ガゴのセンターバック」
「うむ」
「ほんまにほんまかね?」
「ほんまなんやな、これが」
「これじゃ守備が持たへんやろ」
「持たんやろな」
「勝負手もいいとこやな」
「奇手というべきか」
「鬼手というべきか」
「実に攻める気満々のマドリーであったが」
「63分にロベンが負傷交代、ドレンテが入る」
「これは痛い」
「対するヘタッフェは78分にソルダドを下げ、ウチェを入れる」
「ガゴがウチェを一番後ろでマークするとか、どう考えてもありえん話やな」
「そのありえん話から、マドリーは失点する」
「時は83分」
「引き分けでは優勝が遠のくマドリーが強引に攻める」
「中盤から縦にパスが入る」
「この時点で、左側、前線方向に多くの白いユニフォームが見える」
「これをマルセロが受ける」
「ドレンテが左に開いている」
「中にドリブルして潰される」
「この時、半月部にマドリーのフォワードが3人固まっている」
「ここからカウンターを喰らい、右に開いたウチェにボールが渡る」
「手前がウチェでファーに2人の選手が見える」
「明らかにファーが受けらない配置で、実際にもそうなる」
「ウチェがクロス」
「この時、画面内のアルビンが中央へ動き、画面外からガビランが外側へ入る」
「パスがガビランに渡る」
「それを頭で落として」
「アルビンがボレー」
「見事にネットを揺らす」
「これで1-2」
「ヘタッフェからすれば綺麗な速攻だった」
「確かにそうやけどウチェのクロスのシーンで、誰がマークをしていたかを見ると下のようになる」
「ガゴとグティ」
「言うなればガゴがカンナバーロで、グティがラス」
「男前やな」
「この後の展開がもっと男前やけどな」
「最初にあったようにこの後、マドリーはグティのフリーキックで同点」
「直後にペペがファールでPKを取られた後、暴力行為で退場」
「そしてカスケーロがパネンカを失敗」
「パネンカについては後ほど見るとして」
「1人少なくなったマドリーは、下のような配置になる」
「ドレンテが左に下がりマルセロが中盤、前線はわかりにくいがイグアインが右でラウールが最前線、フンテラールが守備に走る分、やや下がった位置にいる」
「この無理矢理な形からイグアインが決めて逆転」
「これぞ正にエンターテイメント」
「そういう話か?」
「いや、これは盛り上がるで」
「それはそうやけどもや」
「何か不満でもあるんか」
「ヘタッフェ相手にガゴをセンターバックにするような無茶をした挙句、こんなジェットコースターのような試合をしなければ勝てないというのは問題ではないかね」
「それについてはカナル・プルスのアナウンサーが、PKのシーンで面白いことを言っておってやな」
「なんや」
「”マドリーはずっとロシアン・ルーレットをやってるようなもんだから、PKを取られて当然だ”という内容を話している」
「ロシアン・ルーレットとはおしゃれやな」
「弾が一発でも引き金を引き続ければ、いつかは発射される」
「そういう話やな」
「しかしながら、こういう理屈を超えた試合をできるのはマドリーの体質的な強さで、ええことやと思うけどな」
「それはそうではあるけれどもや」
「おまけにこれでリーガの優勝という興味も今後につながったし、二重にめでたい」
「そういうことにしとくか」
「しといたらええと思うで」
「ほんなら、最後にパネンカの話をして終わろうか」
「パネンカというのは、キーパーが横に飛ぶことを見越して中央にふわりと浮かせて決めるPKのことを言う」
「これは決まると冷静で超かっこよく見えるが、外すと馬鹿扱いされるという諸刃の剣でもある」
「今回も外したカスケーロは恐ろしい勢いで叩かれている」
「ある監督なんかは、あの場面であんな蹴り方をするとはけしからん、サッカーを冒涜しているといった趣旨の発言までしている」
「そんなことを言われても、あの状況でやるからこそパネンカやねんけどな」
「ギリギリの試合でみんなが極度に緊張する場面でやるからこそ、キーパーが引っかかりやすいので使う場面としては正しい」
「ただ外すと酷い目に合う」
「選手は一番自信のある方法で蹴ったらいいわけで、思いっきり蹴って枠を外すより、ふわりと蹴って外す方が余計に叩かれるというのはおかしな話ではあるねんけどな」
「それはやっぱり一所懸命やって外した風に見えるのと、なめて蹴って外した風に見えるのとの違いなんちゃうか」
「綺麗に決めても1点、泥臭くても1点、強く外しても0点、柔らかく外しても0点。ゴールやノーゴールに貴賎の差は無いのではないかね」
「それは世の中、色々なあれがあるからやな」
「バジャドリー戦でロッシが外したPKも、今回カスケーロが外したPKも重さは同じではないかといったことを思いつつ」
「今回はこの辺で」
「また次回」