2008/05/11 リーガ・エスパニョーラ 37節

アトレティコ・マドリー 1-0 デポルティーボ・ラ・コルーニャ

監督 ミゲル・アンヘル・ロティーナ
フォーメーション 1-5-3-2


「アトレチコはチャンピオンズリーグを、デポルはUEFAを目指したこの戦い」

「結果的にアトレチコが勝利した」

「アトレチコは来期のチャンピオンズリーグ出場を決めた」

「予備戦を通過したらの話やけどな」

「一方のデポルは、インテルトトことインタートトを目指す感じかね」

「そうやろな」

「先発はこうか」

「今日のデポルは1-5-3-2」

「同じ5バックでも、1-5-4-1や1-5-3-1-1といったオプションもある」

「バルサ戦やマドリー戦、サラゴサ戦も少し違う」

「それぞれに一長一短があるわけだが、このシステムではどうしても気になるところがある」

「どこや」

「いわゆる脇とかアゴとか呼ばれる場所のことやな」

「この形か」

「まずこのシステムでは①の部分が空きやすい」

「図を見ただけでも空きやすそうな感じではある」

「次にそこを埋めるのは中盤の選手かサイドバックなわけだが、サイドバックが上がると②のスペースが空く」

「当然やな」

「実はそれが結構カバーしづらい」

「3バックのアゴを叩けという標語は、②のスペースを狙っていけということやしな」

「こう書くとなんや理屈に過ぎる気もしなくもないが、実際にこの試合唯一の得点は正にこれが原因で決まった」

「それを見ていこうと」

「そういうわけやな」

「まず写真で見ていただくとして」

「このような状態から始まった」

3back-side1.jpg

「しかしこれだけでは、何のことかわからん」

「そこでまず黒い側。つまり守備をしているデポルティーボの配置から見てみたい」

「デポルのゴールは画面の右奥にある」

「選手の名前を書くと下のようになる」

3back-side2.jpg

「システムとしては崩れていない」

「ディフェンスの前に3人の中盤がちゃんと揃っているから、ごく普通の状態で守っている」

「ちなみに中盤は、セルヒオ、デ・グスマン、フアン・ロドリゲスの3人やな」

「次にアトレチコの配置を見てみる」

「赤と白のチームで右に向かって攻めている」

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「左サイドバックのペルニアが中に来て、フォワードのクンが左サイドに開いているのがもの珍しい」

「まあその2人の位置を入れ替えてしまえば、よく見られる形やな」

「1-4-4-2ではごく普通の選手配置になっている」

「そして、ここからどうなるかというと」

「まずサイドにパスが渡る」

3back-side4.jpg

「それを受けたクンは、少し内側へ入りながらドリブルで前へ」

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「中央へのパスフェイクでディフェンスを引き付けた後、サイドへ」

3back-side6.jpg

「パスを受けたマキシは、一気にペナルティーエリア内へとドリブル」

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「後ろへ戻したボールをフォルランがダイレクトシュート。ゴールが決まる」

3back-side8.jpg

「綺麗な流れであるな」

「確かに」

「これは上で出てきたこの形の5バック、もしくは3バックにおける泣き所をよく表している」

「上から見ると次のようになる」

「まずサイドにパスが渡る」

「この時、理想的には図のように守備の選手が動く」

「中盤の選手、つまり8番がサイドに出て5バックの一番右端の選手、この場合2番が相手のサイドの選手をマークする」

「それが実行されるとこうなる」

「これならば守備として何の不安もない」

「ところが世の中そうそう上手くもいかない」

「サイドに出るべき8番の選手が、何らかの理由でそれが不可能なことは多い」

「例えば8番がボールに当たりに行って、サイドに開くのが遅れるといった場合やな」

「そうなると、下のように2番の選手が前に出ざるをえない」

「そして右センターバックの4番が、相手のサイドの選手に詰めるわけやな」

「この時、中央でフリーになるフォワードに対しては3バックの中央の選手が詰めればいい」

「結果こうなる」

「うむ」

「これはこれで心配ない」

「ところが、こうはならなかった」

「その理由はというと」

「一つは、クン・アグエロのドリブルの方向とパスフェイクやな」

3back-side5.jpg

3back-side6.jpg

「やや内側にドリブルしたことで、サイドのディフェンスの選手はそれに対応せざるをえなくなった」

「そして中央へのパスフェイクが入ったことで、中のディフェンスはそちらに引っ張られた」

「二つ上の図でディフェンスとしてはオレンジの矢印の方向にマークに行きたいのだが、クンの動きにより黄色い方向に動かざるをえなかった」

「この時、中央のフォワードの動きも重要な意味を持っていた」

「どういうことや」

「下の図のように、7番の選手が4番の選手に近づくように動いたんや」

「7番はフォルランか」

「4番はロポやな」

「こうなると4番は7番につかざるをえない」

「ディフェンスラインの前でフォルランをフリーにしては、失点の可能性が大き過ぎる」

「しかし、そうなると青い点線のゾーンがぼっかりと空く」

「実はそれが10番、クン・アグエロの最初からの狙いやな」

「中に向けてドリブルしたのも、中央へパスを出す構えを見せたのも、すべてはサイドにスペースを作るためだった」

「結果、下のように11番が完全に抜ける形が出来上がった」

「これは下の①を防ぐと②が空く、というセオリーの典型的な例になる」

「3バックや5バックは、常にこの関係が悩ましい」

「最近、極度にこのシステムが少ないのは、このことも関係している」

「ロティーナのデポルは5バック系を採用してからぐんぐんと成績をあげたが、対策の進む来年もこの形で行けるのかどうかはよくわからんな」

「そもそも、デポルがこれを続けるかどうかがよくわからんしな」

「何はともあれ3バック系のシステムの弱点として、このことを記憶されておくとよろしいかと」

「テストに出るのか?」

「どうやろな」

「まあ、何にしても下のクンは上手かった」

「パスをもらう前の段階で、この形を描いているのはさすがというか何というか」

「フォルランはマキシをフリーにするために、わざとロポを引き付ける動きをしたんかね?」

「賢い彼のことやから、そうかもしれん」

「動く前に、そのことで周囲のスペースがどうなるかというのを認識しておくことは実に重要やな」

「それが上手いと下手の分かれ目でもある」

「例えばルーニーはドリブルを始める前にそれを確実に認識しているので、チャンピオンズリーグの決勝などでも注目していただければと」

「クリスティアーノ・ロナウドやテベスは、ドリブルしながらスペースを見つける傾向が強いな」

「ロナウドは感覚でドリブルをするから、始めてみないと自分でもどこで終わるのかわからんのではないかね」

「それはディフェンスにとっても先が読めないということにもなる」

「確かに」

「そんなこんなで」

「戦術問題集は、過去の試合からのものが水曜日にはできる予定ですので」

「そちらもどうぞご覧下さいというところで」

「では、また次回」

「ご機嫌よう」


おまけ:サイドを空けない5バック




【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら

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