結果からプレーを作る、逆算(サビオラ)
「さて」
「個人技術のお時間なわけだが」
「今日の題材は、マドリー対スポルティングから取ったものになる」
「下の流れで白いチームは右から左に攻めており今、一番右の選手から左へパスが出る」
「ボールコントロールの後、中に折り返す」
「コントロールからシュート」
「一言で言うと長い壁パスのようなプレーであるな」
「ここでボールを中に折り返した選手、つまり下の写真でボールを持った選手がどのような技術を用いたかを見る」
「最初のコントロールの後、セカンドタッチは次のようになる」
「ここで大切なのは、ボールを相手に向けて押し出していることである」
「下の状況においてディフェンスは縦へのドリブルを切ろうとする」
「これに対しボールを相手に向けて押し出しすことで、ディフェンスは止まらざるをえなくなる」
「これにより相手を受身にすることができ、先手を取ることができる」
「また正対することにより、後ろから味方が飛び込むための時間を作り出すことに通じる」
「いわゆる”間”と呼ばれるものやな」
「つまりスペースではなく、相手に向かうことは先手を取ると同時に間を作り出す効果がある」
「正対した後は次のようになる」
「相手の両足が整う前に次の技を仕掛ける」
「この場合、体を左に傾けることで縦への突破を見せ、それと同時に股抜きを見せている」
「ディフェンスは足を狭めて股抜きを防ごうとしている」
「しかし真のパスは右方向に出る」
「ここでは、インフロントキックからインサイドによる方向変換技術が使われている」
「まず下の写真から足を前に押し出せば、股の間を抜くパスが出る」
「しかしそこで足首を前に押し出すことにより、パスの角度が変わる」
「非常に小さい動きでパスの方向を変えることができるため、相手は直前までその意図に気づかない」
「この場合、体を左に傾けていることでより角度の変化がつけやすい」
「重要な技術であるわりに習得も難しくない」
「最終的に次の状態でボールが渡る」
「この時のパスはスピードが非常に遅く、スペースに置くように出されている」
「これは、前に走る味方がなるべくコントロールしやすいようにするためである」
「前に走りながら90度方向からのパスをコントロールするのは難しい。このためパスのスピードはできるだけ遅い方が良い」
「理想的にはスペースで止まっている方が良い」
「パスを出した選手は、それを実現させるため股抜きを見せている」
「相手が待っている状態の場合、その横を遅いパスで抜くことは難しい」
「パスカットの危険性が高まる」
「しかし下のように足を閉じさせてしまえば、その横に遅いパスを出してもカットされる心配はない」
「つまり股抜きのフェイントは、横に遅いパスを出す準備として使用されている」
「このプレーは結果から逆算して作られている」
「後ろから走り込む選手に対してスペースに置くような、なるべく遅いパスを出したい」
「しかし遅いパスではカットされる危険がある」
「それを避けるために股抜きで相手の足を逆に動かす」
「最後のイメージに向けてプレーが作られていると見てよい」
「以上」
「真面目な説明終わり」
「えらい長かったな」
「こら読む方もしんどいで」
「何にしても、結果のイメージからプレーを組み立てるというのは大切やな」
「サッカーにおいて一番大切な技術というか、テクニックというか資質というか」
「プロとアマとか上手い下手の差は、その差に起因する部分が大きい」
「例えば将棋や囲碁でもそうやな」
「あそこに石が欲しいとか、この形にしたいと思ってから読んでいくのとそうでないのでは雲泥の差やからな」
「最後に一歩いるから今は打てないとかやな」
「ひどい人間になると読めてもいない内から、次の一手で勝てるのがわかるらしい」
「ほんまかいな」
「実際に見たことがあるからほんまやで」
「この場合、サビオラは下の場面あたりで最後のイメージが読めてたんかね」
「自分へのパスが出された瞬間か、そのあたりやろな」
「それで後はそれに向けて詰めていくと」
「このプレーは確かに詰め将棋っぽいな」
「相手方向にボールを押し出す、先手を取る、正対して間を作る、体を左に傾ける、股抜きを見せる、相手の足を動かす、パスコースを変える、遅い球を通す」
「実に論理的というかなんというか」
「ディフェンスに対処法はあったのかね」
「股抜きフェイクに引っかかる振りをして、遅いパスを狙って足を出すとかかね」
「ただそれをやると、本当に股抜きをくらってボールに追いつかれてシュートを打たれる、というのが最悪やな」
「守備が最も恥とする決められ方やしな」
「その辺はイメージとイメージの戦いかね」
「そんなこんなで」
「今回はこの辺で」
「おまけに、ラウールの蹴る直前までその意図が読めないシュートの映像がありますので」
「よろしければこちらから」
「というところで」
「また次回」