サッカー選手と準備運動
「前回はマルセロは準備動作を作るタイミングがわかっていない、というお話だった」
「今回は動き出す前の体勢を見てみよう、ということやな」
「では早速」
「画面一番手前の白い選手がマルセロで、左側に攻めている」
「ボールを待って動き出すまでの一連の流れを、まずは通してご覧下さい」
「最も沈み込んだ状態はこう」
「マルセロのこのような体勢は、異なる場面でも見られる」
「例えば守備では下のようになる」
「ニアポスト横にいる選手がマルセロ」
「最も沈み込んだ体勢は下のようになる」
「さらに別の守備機会」
「最も沈み込んだ体勢は下のようになる」
「三つまとめると下のようになる」
「おそらく、ここまで大きく足を開き腰を落とし過ぎてしまうと、かえって動きにくくなる」
「通常、下のような体勢でよいと考えられる」
「マルセロは準備動作のタイミングがわかっていないということは確実に言えて、おそらく準備の体勢そのものも最適化されていない」
「そしてこの二つのことがあれば、マルセロのプレーについてあらかた説明がつく」
「セビージャ戦で、いかにマルセロが守備に不向きであるかを見た」
「マルセロの癖として、パスで簡単に裏を取られるというのがある」
「準備動作ができていなければこれは当然で、動き出しが遅くなる分、裏を取られやすくなる」
「さらには相手がボールを持った瞬間に、ポジションが異常にずれていることがある」
「これはパスカットに出ようとしたが、準備動作ができていないためボールに触れなかったと考えれば説明がつく」
「さらに、マルセロがドリブルに対して非常に弱い点も納得がいく」
「まず準備動作が正しくなければ、ボールを受ける選手に対して詰めが遅れる」
「詰めが遅れるということは後手後手に回ることを意味しており、守備で不利になることはさけられない」
「おまけに準備動作が最適化されていないことは変化への対応が遅れることを意味しており、フェイントや仕掛けに対して弱くなる」
「そうなれば下のように抜かれることも当然である」
「当然ポジショニングなどのその他の要素も関係するが、準備動作が正しくできないということが、マルセロの下手なプレーに大きな影響を及ぼしていることは疑いがない」
「以上がクラシコからオサスナ戦までを見て”なぜマルセロはサッカー選手ではないか”、という疑問に対して得た答えの一つである」
「そうなんか」
「そりゃ動き出しが少しずつ遅れるというのはサッカーにおいて致命的で、守備では上で見たような数々の欠陥につながるし、攻めにおいても余裕をもって追いつくはずが追いつけない、
余裕がなくなるからパスが適当になる。エリア内ではほんの0.1秒稼げば点になるのに、自分で時間を失っては点になるものもならない」
「いいことがないのは確かやな」
「ピッチ上で下の体勢で待つことに違和感を覚えない時点で、サッカー選手としておかしい」
「しかし、おかしいおかしいと言うが、わりとこの点はみんな抜けがちなのではないかね」
「うむ」
「きちんと準備しているようで、実は適当になりがちでもある」
「マルセロのこの癖に気づいてから、自分でも反省して初心に返ってみたらゴール前での反応などが確かによくなった」
「つまり、いい加減になってたということやろ」
「まさしく」
「人の振り見てわが振りなおせという話やな」
「しかしマドリーにそんな選手がいても困るやろ」
「どんなレベルでも起こり得ることだから、日々注意していかないかんというお告げと違うか」
「まあどんなに戦術を整備しても、これがきちんとできないチームがあるとすれば、それはゴミ程度の価値しかない」
「ちなみに準備動作がマニアのように上手い選手としては、ロマーリオがあげられる」
「下のモデルやな」
「お気付きの方もおられるように、この絵は有名なコラ・デ・バカの前段階で、グァルディオラのパスを待つ場面である」
「コラ・デ・バカという派手な技をできるのは才能であり、常に準備動作を怠らないということも同じほど非常に重要な才能であると言える」
「今のレアル・マドリーで言えば、シャビ・アロンソが非常な準備動作マニアやな」
「彼とマルセロと比べながら見ると、違いが際立って興味深い点が多いのではないかと思われますので」
「ぜひご覧いただければと」
「また実際のプレーも、この点をより意識するだけで違ってきますので」
「ぜひ点検していただければというところで」
「また次回」
「ごきげんよう」