グティ、フアンデ・ラモス事件に思う
「グティに関してやな」
「先週辺りにグティとフアンデ揉める。フアンデは今後グティを使わない方針、といった感じのニュースが出た」
「ところがフアンデは、チームから誰かを締め出す気はないと発言」
「グティは無事、マラガ戦に招集される」
「無事かどうかはわからんけどやな」
「事件はそこで起きる」
「詳細はASのこの動画(※リンク切れ)で見ることができるわけやけれども」
「これはグティの性格や試合前のスタジアムの雰囲気を見ることができるという点で、非常に面白いのではないかと」
「まずは導入部分の訳を」
“Bueno, vamos con el caso Guti. Se nego a calentar, pero antes del partido….”
”ではグティの件に行きましょう。ウオーミングアップに出るを拒否したのですが、試合前には……”
“No No … Calento unos minutos, calento unos minutos.
Despues de calentar, se sento otra vez al banquillo y no quiso volver a calentar. ”
”いやいや。数分アップしたんだよ、数分。アップをした後、一度ベンチに座り再びアップに出るのを拒否したんだよ”
「そんな感じか」
「アクセント記号を抜かすとこんな感じだ」
「これだけの知識があれば流れは把握可能なので、一度動画(※リンク切れ)をご覧頂くのも手かと」
「では動画の詳細へ」
「開始から、スタジオで話す2人の大筋は上の通り」
「次に15秒くらいからマドリーのベンチが写り、下に文字が入る」
「写っているのは右からグティ、サビオラ、ハビ・ガルシアやな」
「言葉の内容はというと」
”今日は俺の出番はないな……まあ……出番があるのはハビが1番手だな……この点差だと最初にフォワードの後ろの奴を下げる……そんで中盤に1人入れる……まあ、俺じゃない”
「これはグティがしゃべっている内容で。読唇術をつかって抜き出している」
「スペインのスポーツ番組ではよくある」
「このグティの言葉を意訳すると次のようになる」
”あのチキン野郎は一点リードしたら必死でそれを守るに決まってる。今日は出番ねえな”
「おいおい」
「ん?」
「えらい悪い方向に意訳したもんやな」
「他にやりようがないやろ」
「こうとかやな」
”今日は私達がリードしておりますので、守備の上手な選手が交代出場することでしょう。残念ながら私の出番はありませんね”
「気持ち悪いわ」
「そうか?」
「まあどちらがよりグティの気持ちに近いかは、読む方に判断していただくとしてや」
「37秒から、ピッチ上の映像へと移る」
「試合前、妙なハイテンションで悪ふざけに興じるグティの姿」
「50秒からグティがベンチに向かい座る姿」
「そこで観衆から節をつけた野次が飛ぶ」
「グティマリコン、グティマリコン、グーティーマーリーコーーン」
「これは翻訳すべきなのか」
「グティ・オカマ野郎やな」
「あっさり言いよったな」
「マリコンというのは、グティの枕詞のようなものではある」
「いやグティの後につく言葉やで」
「細かいな」
「なんとなくな」
「これは実によく使われ、敵が彼を侮辱するためのみならずマドリディスタもよく用いる」
「グティがへたれたプレーでボールを失うと、すかさずマリコン!」
「試合中に髪を整える仕草を見てもマリコン!」
「チームの調子が悪い時など、練習場で車から降りるだけでマリコン!」
「何をやってもマリコンやな」
「多分、髪がやたらとつやつやしていて髪型もよくいじる。体が華奢である。すました態度が目に付くといった辺りが原因やろな」
「多分ではないと思うが」
「ちなみにグティマリコンコールはマラガだけでなく、スペインの多くのスタジアムで観測されるらしい」
「1分10秒あたりから試合中、グティが最初にウォーミングアップに出て行く映像になる」
「この時、プレパラドール・フィジコのジョルディ・ガルシアと軽口を叩くなど、まだ平和な雰囲気が漂っている」
「1分22秒、再びベンチに座り頬杖をつくグティが映る」
「これは試合開始から85分の時点で、右はミチェル・サルガド」
「そこにコーチが近づいてきていわく」
「もう一回、準備に行くぞ」
「それに答えていわく」
「ベンガ・コーニョ」
「おい」
「再びベンガ・コーニョ」
「結局、グティは後5分しかないのにアップなんかやってられるかということで、コーチを追い払う」
「さすがグティ」
「ちなみにコーニョというのは女性器のことやな」
「その前のベンガはまあ、あらゆる意味があり、それゆえに大した意味のない場合も多い言葉である」
「その後、サルガドの顔が無理やり拡大される」
「ミチェルの顔が全てを物語っています。グティ、何てことをいうんだ」
「さらにコーチの顔が無理やり拡大される」
「ふう、なんてこったい……どうしよう……もう一回言ってみようかな……それよりフアンデに何て言おう……」
「そして最後は”グティはフアンデと一緒にいる限り、二度とプレーすることはないと知っています。そして私たちがそれを知っていることも知っています”という言葉で締めになる」
「最後の”私たちがそれを知っていることも知っている”というセリフがわかりにくいな」
「ここはグティがカメラを見てる点が重要で、撮られているのを知っているということやな」
「多くの場合、マドリーの選手がベンチで何か話す時は手で口を隠す」
「それはカメラで撮られて唇を読まれ、後からどんな尾ひれをつけて報道されるかわからないのでそうする」
「そういえば昔、カナル・プルスのニュースか何かで、マドリーの古い選手が新しく来た選手に”おい、あそこにカメラがあるだろ。
あれに気をつけろよ。あいつらは映像から俺たちの言葉を読むんだ。だからこうやって口を隠してしゃべれよ”と教えているのを見たことがある」
「まあ選手の間では常識やな」
「にもかかわらず、グティが最初のように監督批判ととられかねない言葉を隠す気配もなくしゃべったということは、撮られてもかまわんという気持ちがあることを示している」
「撮られてもかまわんというより、撮れ、撮ってこれをニュースで流せということちゃうか」
「そういうことも含めて最後の”私たちがそれを知っていることも知っている”というフレーズにつながる」
「もう、何というかグティはフアンデが大嫌いなんやな」
「そうとしか解釈できない映像ではある」
「選手がこのように反抗するとどうなるかというと」
「内規で罰金を取られる上に、侘びをいれないと確実に干される」
「さて今後どうなるものか」
「どうなるもこうなるも、こげんなる前にどげんかせんと」
「ある意味、フアンデがマドリーに向いていないというのはこの点にも表れている」
「グティのような選手を使いこなせるかどうかが鍵やしな」
「そういうことや」
「それにしてもグティのやってることも無茶苦茶過ぎやけどな」
「明らかな就労拒否やしな」
「駄々をこねる子供じゃあるまいし」
「いや、正にそれと同じ状況やろ」
「よくもまあこの性格で今までやってこれたと感心する」
「その性格やねんけどな」
「なんや」
「ちょっとあることを思い出したんやけどな」
「だからなんや」
「雑談になるけどええか」
「もともと雑談やし」
「昔、ラージョ・バジェカーノが一部にいた時代の話やねん」
「古いな」
「マドリーが敵地で試合をしてグティもそれに出ていた」
「ふむ」
「試合が終了してユニフォームの交換が行われる」
「よくある風景やな」
「グティも誰かのユニフォームをもらい、小走りにロッカールームに引き上げていく」
「テレサ・リベロだと西側の客席のある方のバックスタンド下に向かうわけか」
「選手入退場用のトンネルの前には用務員のような人が立っていた」
「見張りやな」
「そこでグティは何と、さっき交換したばかりのユニフォームを用務員に投げつけてトンネルに消えていった」
「ほほう」
「なかなか凄い話やろ」
「何というか」
「相手選手と交換したばかりのユニフォームを投げ捨てて帰るとか聞いたことないで」
「うむ」
「ちょっと目が点になる出来事だった」
「多分、係員にそのユニフォームくれとか言われて、それであげたのではないかね」
「ほんまか」
「ほんまかと言われても困る」
「第一、公衆の面前で投げて渡すことはないやろ」
「それはこう合理主義的なだな」
「交換を求めた選手はグティのユニフォームが欲しかったわけで、それに対してグティはこんなもんいらんということにならんか?」
「倫理を厳しくして見るとそうかもしれんけどやな」
「グティはそういう性格だろうと思ってはいたが、中々に興味深い出来事だった」
「まあこっちは、グティの性格といえば違う話を思い浮かべるんやけどな」
「どんな話や」
「この稿の前にバジャドリー対バルサの試合があるけど、バジャドリーのボランチにアルバロ・ルービオがいるやろ」
「一家に一台、アルバロ・ルービオと呼ばれる選手やな」
「彼は昔、アルバセーテでダビー・サンチェス・ロドリゲスという選手とボランチを組んでいた」
「2004年前後の話か」
「このダビー・サンチェスという選手は、ボールを触れば抜群の才能があった」
「左足からのドリブル良し、スルーパス良し、組み立て良し、フリーキック良し」
「実にいい選手だった」
「それについては異議はない」
「ところが性格に問題があり味方のミスが許せない。気に入らないことがあるとすぐむくれて止まる。守備を全力でやらない」
「まるで誰かさんやな」
「人を支える、人のミスをカバーする、味方のために走る、といったことを信条とするアルバロ・ルービオはそれが我慢できなかったらしく、ダビーの態度にはいつも苛立ちを隠さなかった」
「能力の組み合わせとしては、良いコンビやねんけどな」
「能力的にはピルロとガットゥーゾのような形ではあるが、どうもに性格が合わない」
「そればかりはどうしようもない」
「ボールを扱う才能においてダビーはルービオの遥かに上、比較するのが馬鹿らしいほど上だったにもかかわらず、ルービオはリーガの一部でレギュラーを取り、ダビーはルーマニアに流れた」
「ルーマニアか」
「どうやら、そうらしい」
「それはまた意外な変転やな」
「やろ」
「それで何が言いたい」
「何がとはなんや」
「グティと関係した話ではなかったのか」
「それはこれから言うねん」
「引っ張ってどうする」
「要するにグティも一歩間違えばダビーのようになっていた可能性が高い、ということや」
「それはあるかもわからんな」
「彼の性格でやってこれたのはレアル・マドリーという組織の中で育ち、才能を認められてチームに守られたからで、もし何かの拍子で他のチームに出されたら周囲と上手くいかずにスポイルされた可能性はある」
「ふむ」
「圧倒的な天才であるデ・ラ・ペーニャも、バルサでロナウドと組んだ後、非常な苦労をした」
「安息の地を見つけたのは、一度バルサを出て4年後、エスパニョールでタムードと出会ってからやからな」
「才能のある選手というのは得てして使いにくいものだから、それをどう扱うかに監督の器量が問われると思わんか」
「そうかもわからん」
「最近ではエルゲラなんかもそうやな」
「お茶目な性格が災いしてウナイ・エメリと大喧嘩。チームを放逐された」
「エメリとは歳も近いし、経歴においてはエルゲラの方が圧倒的に上だから、一緒にやっていくのは元々難しかったのかもしれんけどな」
「エルゲラとグティについては蹴球計画でも話題になったことがある」
「これ(※リンク切れ)とか、これ(※リンク切れ)か」
「こういうネタになるというのはそれだけ癖のある性格である、ということができる」
「普通やったらネタにならんしな」
「監督というのは、それを使いこなしてこそだと思わんか?」
「どうやろ」
「まあ、そんなこんなを思いながらこの騒動を眺めると、少し違った色合いが見えるのではなかろうかというところで」
「また次回」
「ご機嫌よう」