本当の恐ろしさ
「前回までヒディングの戦術的恐ろしさを見てきた」
「相手を誘い込み、裏を取る形でロシアが56分に1点をリード」
「攻めるしかなくなったオランダは、62分にエンヘラールを下げてアフェライを入れる」
「イタリア戦でも見せたファン・デル・ファールトが一つ下がる形やな」
「これに対してオランダは69分にセムショフを下げてビリアレトジノフ、81分にサエンコを下げてトルビンスキーを入れる」
「味わい深い交代やな」
「81分のトルビンスキー投入のタイミングなんかはそうやな」
「ロシアの選手は78分からぱったりとボールに詰めることができなくなり、オランダが自由に攻めゴールを奪われるのは時間の問題に見えた」
「いわゆるヘロヘロの状態やな」
「それを見てトルビンスキーを送り、これにより守備での組織がある程度復活した」
「選手としては、もうあかんと思う時に援軍が来るようなもんやな」
「あのタイミングで出すのか、というのは非常に参考になる」
「あとアルシャフィン、パブリュチェンコを代えない辺りも味わい深い」
「前線を1人削って中盤を増やしてリードを守り切る、という考えも当然成り立つ」
「81分で一点リード、相手がオランダということを考えるとついついそうしたくなると思うけどな」
「それだともし同点に追いつかれた場合に反撃の糸口がなくなる」
「まあ当然良し悪しはあるけどな」
「実際はというと86分にオランダがフリーキックから同点に追いつく」
「なんともはや」
「1-1のまま延長戦に入る」
「そこで優位だったチームはどちらかというと」
「ロシアだった」
「ここが凄いな」
「凄いな」
「作戦が見事に決まってリードしたのに、終了近くで追いつかれる」
「選手としてはやられたという思いがあるし、がっくりもくる」
「そこでもう一度ネジを巻きなおしプレーで追いついた相手にまさり、再び突き放すというのはそれだけでも凄い」
「監督がまずいと思ってたらそれはできんな」
「ヒディングは追いつかれた時点でも勝算があって、さらにはそれを選手に伝える力があるということやな」
「状況としては、決して有利なわけじゃないんやけどな」
「このことが戦術で勝ったことより、ヒディングの恐ろしさを示していると思うけどな」
「そうなんか」
「オランダの右を誘い込んでその裏を叩くということ自体は、戦術が好きな監督やったら思い浮かぶし実行可能なことやと思うんや」
「まあな」
「交代が絡んでいるだけ今回の方が高度やけど、バルサがポルトアレグレに負けた(※リンク切れ)時も、同じような形やったからな」
「参考はこの辺り(※リンク切れ)やな」
「それに比べてオランダを相手に点を取って勝つ、攻めて勝つ、それで勝てるということを選手に信じさせ、それに向かってチームを結集して戦わせることのできる監督というのは、この世にほとんどおらんのちゃうか」
「それはおらんやろ」
「例えばロシアが最後の交代を行ったのは、延長終了5分前の115分だった」
「トップのパブリュチェンコに代えてシチョフやな」
「これは112分にトルビンスキーが勝ち越し、ゴールを決めてから行われている」
「そうやったな」
「もし1-1でPKを目指すなら、この交代がもっと早くてもいいはずやろ」
「中盤に近い位置に走れる新しい選手を入れる方が、守備としては楽やからな」
「前の2人、パブリュチェンコとアルシャビンを最後まで点を取るまで残したというところに信念を感じるわけや」
「それはそうかもわからんな」
「この試合は戦術面もさることながら、監督の信念や人格がチームに及ぼす影響という意味でも、非常に素晴らしい試合だと思いますので」
「この文章がビデオを見返す時などの参考になれば幸いです」
「というところで」
「今回はこの辺で」
「また次回」
「ご機嫌よう」
参考:ロシア対オランダ補足
選手配置など色々な補足