フェリポンの設計
「フェリパオことフェリポン」
「フェリポンことフェリパオ」
「スコラーリなのかエスコラーリなのか」
「そんなことはどうでもよく」
「今回のワールドカップにおける、ブラジルの設計を見てみようかと」
「特徴としては中盤にボールを取れる選手を置いて、そこからのカウンターを狙っている」
「次の例では、フェルナンジーニョが中盤で相手に競り勝つ」
「で、この時フッキが一気に左を前に出る」
「そこにボールが渡ればカウンターが成立する」
「ブラジルは、常にこれに類するパターンを狙っている」
「だから中盤の相対的に低い位置にボールを取れる選手を抱えている」
「フェルナンジーニョ、オスカル、さらには、ルイス・グスタボ」
「オスカルはボールをずいぶん回収していて、コロンビア戦では12回」
「これはフェルナンジーニョの13回に次いで2位」
「チリ戦でも11回を数える」
「で、この特徴は前回のように、ファールに甘い試合になると力を発揮しやすくなる」
「じゃん」
「なんじゃこれは」
「蹴球計画特製、ファールメーター」
「なんかやっつけ感にあふれるというか」
「いや、それは単にデザインセンスがないだけでだな」
「縦軸が接触の激しさか」
「激しくなるとファールになって、度を過ぎるとイエローやレッドになると」
「当たり前のことを書いてあるだけの図である」
「コロンビア戦のようにブラジルがホームチームアドバンテージを活かすと、このファールメーターの様子が変わる」
「普通ファールのものがファールでなくなる」
「イエローのはずがファールになり、レッドのはずがイエローになる」
「判定の基準が激しい側にずれる」
「そうなるとブラジルにとっては都合が良い」
「普段できないはずの所でカウンターができる」
「どう見てもマイコンは相手を押している」
「そうでなければ、真上に飛んだ人間がこんな体勢になるはずがない」
「でも笛は鳴らない」
「その後どうなるかというと」
「カウンターでエリアの横まで行っている」
「これは多分、もっと良い形で攻められる」
「次の場面が鍵やな」
「ここで縦へのパスフェイクからボールを止めて前を向けば、決定的な形になる」
「鳴るはずの笛が鳴らないことは、かくもブラジルには都合が良い」
「次もそれと関係する」
「フェルナンジーニョはハメスの首がのけぞるくらい、意図的にぶつかっている」
「しかし笛は鳴らない」
「中盤で味方がフリーだ」
「カウンター頑張ろう」
「このようにファールの基準が激しくなることは、ブラジルにとって都合が良い」
「特にブラジルが得意とする中盤の守備で、ファールまがいのプレーをやりやすくなる」
「ファールまがいというか、フォールそのものやけどな」
「前回見たファールで、センターサークル付近のものを抜き出す」
「今回見たファールにならなかったもの」
「ブラジルは大体この辺りを、意図的なファールゾーンに設定していると思われる」
「これより深いゾーンでファールをすると、セットプレーが怖いので基本的にやらない」
「フェリポンのチーム設計はこれだと思われる」
「まずホームチームに笛は甘くなる」
「だから中盤に潰せる選手を揃える」
「そこでファールお構いなしにボールを取りに行く」
「で、運良くファールにならなかったものも含めて、得意のカウンターに出る」
「そのためにフッキ、ネイマール、フレッジがいる」
「さらに付け加えると、審判の笛は両チームにとって甘くなる」
「コロンビア戦で見たようにブラジルだけを贔屓しているように見せるわけにはいかないので、相手チームのファールも見逃すようになる」
「激しい軸にある線がもとの判定基準だとすると、両チーム共に上に移動する」
「これにより、カウンターが出来る範囲は両チームともに広がる」
「ブラジルだけが得をするわけではない」
「しかしこれでも構わない」
「ブラジルは最初からこれに特化してチームを作っている」
「それに対して相手チームは大方の場合、設計思想が異なる」
「そうなると、判定基準の変化が相手チームにとって有利になるとは限らない」
「特にスペインのようなチームがそうである」
「パスを回そうとすると当然、ブラジルの意図的ファールゾーンでもボールをつなぐ」
「そこを狙い打てばカウンターは入りやすい」
「ブラジルが優勝するプランを描くにおいて、当然スペインは大きな仮想敵国だったと思われる」
「まあグループリーグで消えてしまったんですけどね」
「対ポゼッションサッカーとして有意なチーム構築だと考えられる」
「裏を返せばデル・ボスケがジエゴ・コスタを欲したのは、これがあると思うねん」
「ほう」
「こういうブラジルを相手にするとなると、中盤を飛ばして直接前線にボールを入れた方が良い場面が増えるやろ」
「まあ、相手のファール防御壁を突破するにはそれが一番早いわな」
「それを受けるのに最も適した選手がジエゴ・コスタで、それにこだわらざるをえなかったんじゃないかと思うんやけどな」
「そうなんかね」
「多分な」
「それはさておき」
「さらにフェリポンの設計には、もう一つ重要な点があると考えられる」
「自陣ペナルティーエリア付近での守備やな」
「そこでは本当にファールをしない」
「中盤であんだけ無茶苦茶やってるくせに、突然普通になる」
「普通というのを画像で示すのは難しいので、データで代用しようかと」
「元のデータはマルカを見ていただくとして」
「ブラジルが犯した全ファールがこう」
「下が自陣で上が敵陣」
「コロンビアのファールがこう」
「これも同じで下が自陣」
「重ねるとこう」
「前に話が出てきたブラジルの意図的ファールゾーンは、次のようであると考えられる」
「その辺りでファールが多い」
「その半面、自陣深くでファールが少ない」
「センターサークル下、11とかいてある白い星を大体の北限として円を描いてみる」
「ちなみに円内の5と描いてある白い星は間接フリーキック」
「つまり円内に完全に入っているものに限ると、直接フリーキックは1つもない」
「いうてもPKがあるけどな」
「それを入れても1対5」
「おそらくこれは偶然ではない」
「ブラジルは、ファールの基準が激しい方にずれることを最初から想定している」
「自分たちでわざとそう持っていくわけやからな」
「だから試合が荒れても、そのエリアでファールをしないように準備しておける」
「しかし相手がブラジルほどそれを想定していない場合、勢いに任せて自陣のペナルティーエリア近くでもファールを行う可能性が高まる」
「そうすればブラジルに良いフリーキックのチャンスが増えるのに対し、相手は増えない」
「これが極めて有利であることは自明である」
「自分たちの意図するカウンターチャンスが増えて、フリーキックのチャンスも増える」
「そりゃ有利やし、勝つ確率が上がるに決まっている」
「その代わり沢山つないで攻めるとか定義がよくわからんけど、良いサッカーをして勝つとかそんなことは最初から考えてない」
「色々あって何だかんだあって、最後はブラジルが勝っている」
「そして勝つことこそが最大の正義だ」
「2014のブラジルとはそういうチームに違いない」
「という話なんですけどね」
「どうなんですかね」
「何しろ最近は妄想回ばっかりやったからな」
「これが妄想か否か」
「ビデオを見返す時の楽しみと共に今後の楽しみにしていただければ」
「という感じなのですが」
「はて」
「どんなもんかと」
「しかし何か、同じような話がポルトガルでもあったような気がするな」
「準優勝したやつか」
「あの時も球際がやたらと激しくて、コスティーニャという選手がまるでフェルナンジーニョだったような記憶があるのだが」
「フェリポンのチームは、基本球際でえげつないからな」
「まあそうやな」
「個人的には2002年の戸田を思い出すけどな」
「あれもすごかった」
「グループリーグ3試合でイエロー1枚だったけど、そんなばかなと思ったもんだ」
「レッドが1つにイエロー2枚ぐらいはいってたで」
「それかイエロー3枚か」
「ほんとに審判は、ホームチームに甘くなるもんだと確認させられた」
「フェリポンはそれを悪用してチームを作っている」
「悪用か」
「だってあれ危ないで」
「まあ、ファールの基準というのは選手が怪我をしないようにできたもんやからな」
「激しい方にずれると怪我の可能性が上がる」
「大怪我の可能性も出る」
「イエローやレッドはそれを防ぐためにもある」
「それをずらしたら、そら怪我人も出るで」
「ネイマールのことやな」
「あれ、膝蹴りした選手が悪いように言われているけど、ほんまにそれでええんかと」
「悪いは悪いけどな」
「ファールゲームを仕掛けたのはブラジルで、コロンビアはそれに乗っただけやで」
「ハメス・ロドリゲスもいつ潰れてもおかしくないファールを受けていた」
「みんなでロシアン・ルーレットやってたような試合で、そこで最悪の外れを引いたのがネイマールとスニーガだっただけの話ちゃうかね」
「そうとも言えるのかね」
「どうやろ」
「悪用と言えば、開幕のクロアチア戦も悪用されていた」
「何しろ、ブラジルのファールは5つしかないからな」
出典:Marca
「ありえん」
「普通はありえんな」
「これは、狼が羊の皮をかぶっていただけではないのか」
「そんなところにも疑問を残しつつ」
「また次回」
「ごきげんよう」