ドイツ 対 トルコ 後半
「さて」
「前半はトルコが上手く試合を運びながらも追いつかれた」
「苦しいと言えば苦しい」
「リードを奪うつもりでキックオフから無理をして、同点にされたわけやからな」
「その分、後半は体力的にも苦しくなる」
「具体的には中盤での守備がほころび始める」
「徐々に相手に詰めきれなくなっていく」
「1人でも詰められなくなると、全体が下がるしかない」
「例えば下のような形での守備はできない」
「もしサイドのボールを持った選手に詰めていない状態でその横が前に詰めると、そこに段差ができる」
「その間を通されると守備は大体終わる」
「そうなると横の選手も下がらざるをえない」
「そしてドミノ倒しのように全体が下がる」
「ディフェンスラインも、裏へのボールが恐くて下がるようになるしな」
「この現象は疲れが溜まるほど起こりやすくなる」
「まずは79分」
「白いドイツは左に攻めている」
「右サイドから短いパスが2本中央につながり、そこからサイドへ展開」
「これをラームが受ける」
「縦にドリブルを入れて何を狙うかというと」
「必殺の内への切り返し」
「そしてこれまた必殺のクロス」
「中でクローゼが合わせてドイツが勝ち越し」
「ここで一つ不思議なことがある」
「うむ」
「クローゼのシュートにおいてキーパーの姿が見えない」
「ゴールが無人やな」
「実は上の写真でクローゼのところで3人重なっていて、クローゼの後ろにディフェンダー、そのまた後ろにキーパーのリュシュトゥがいる」
「もろかぶりか」
「正にその通り」
「クロアチア戦に続き、またもゴールをお留守にしてしまったわけやな」
「そうやな」
「そんなミスもありドイツがリード」
「2対1」
「トルコとしては非常に苦しい」
「疲労、主力の欠場、交代の不足といった要素がより重くなる後半79分でキーパーのミスもあり失点」
「これはきつい」
「しかし、7分後に同点に追いつく」
「ほとんどありえんな」
「理屈で考えるからありえないわけで、それを越えたところにこのゴールはある」
「右でラームを振り切ったサブリ・サリュオールがゴールラインまでドリブル」
「クロスに対してニアポスト手前に飛び込んだセミフが、つま先で合わせる」
「コースを変えたボールはレーマンの横をすり抜けゴールへ」
「2対2の同点」
「86分」
「ひょっとするとまたもトルコが……という雰囲気になる」
「しかし、90分」
「右サイドから中央にボールが渡る」
「そこから左サイドに展開」
「ボールを受けたラームが中央に切れ込む」
「中央のヒツルスペルガーにパス」
「ワントラップで縦を向いた後、前に抜けるラームに戻す」
「キーパーの動きを見てニアサイドを抜きゴール」
「ドイツが勝ち越し」
「そのまま逃げ切った」
「上のドイツの2点は、同じような出だしから生まれている」
「右サイドからパスをつないで相手の中盤の前を横切るように左へ展開、ラームがドリブルから中に切り返すというところまでは同じやな」
「前半のトルコはこのような流れを許さなかった」
「トップのセミフはボールを追えなくなっていたし、中盤は前に詰めきれなくなっていたのであの時間帯ではしょうがない」
「対するドイツはやはり左サイド頼みやな」
「結局は下の2つしかないな」
「相手としてはこれを止めたいと」
「そしてドイツの左から攻撃を仕掛けたい」
「トルコの得点は2つともドイツの左サイドからだった」
「これは偶然ではなく、意図的にそちらからの攻撃を狙っていた」
「そこの守備が甘いのは、ポドルスキーの戻りがどうしても遅れるのが原因やな」
「戻っても相手に詰めきれないから、パスをつながれるというのも大きい」
「ラームが穴というわけでもないねんけどな」
「彼は前半自陣ゴール近くでパスミスをしたこと、サブリに抜かれて同点を許したことがかなりのマイナス評価だとは思うが、それ以外では守備も攻撃も実に良い働きをしていた」
「特に最後のシュートなどは抜群に上手かった」
「下の場面やな」
「これはシュートモーションに入る直前やな」
「まず、キーパーの方をきちんと向いているのが良い」
「そこからファーサイドのピンクの矢印へ打つフェイントから、ニアサイドへシュート」
「この流れと技術は、ファン・ニステルローイやバチスタ(※リンク切れ)がゴールを決めると時と全く同じであるというのが素晴らしい」
「そりゃ、同じ状況でゴールを決める技術がほとんど同じになるのは当たり前やろ」
「サイドバックが、フォワードと同じ技術を的確に使っているというのがよろしいわけや」
「さよか」
「いわゆる決定力というのを改善しようと思ったら、正しい場面で正しい技術を使えるようにならないとしょうがないしな」
「コントロールも上手かった」
「ここではギザギザ線でドリブルのようになっているけど、ラームはワンタッチでキーパーと向かい合って、そのままシュートにいける場所にボールをコントロールしている」
「これもまた大切なことやな」
「このシーンで見れば、技術的に上手いフォワードと同等のものがある」
「たいしたものであるな」
「何にしてもこの試合でドイツの長所は左サイドであり、弱点もまた左サイドであることがはっきりとした」
「決勝の相手はそれを突いていきたいところやな」
「それがスペインになるのかロシアになるのか」
「今夜の試合が楽しみというところで」
「また次回」