プジョルとマルチェナ スペインのセンターバックについて
パス本数と成功率
全体、ショート、ロングのパス成功率においてマルチェナが優る。
ミドルパスの成功率において、プジョルが優る。
90分あたりのパス本数はマルチェナが優る。
パスの内訳
*データ内容については脚注参照
グラフ中のプジョールは文中のプジョルである。
プジョルとマルチェナがデイフェンダーとゴールキーパー、ミッドフィールダー、フォワードに出したパスの比率を示している。
プジョルはディフェンス、ゴールキーパーへのパスの比率が高い。
マルチェナはミッドフィールーダー、フォワードへのパスの比率が高い。
プジョルはセナ、シャビへの比率が高い。
マルチェナは相対的に、シルバ、イニエスタへのパスが多い。
セナ、シャビは、いわゆるボランチでありディフェンスに近い、シルバ、イニエスタはサイドに位置するため、より距離がある。
より遠い選手へのパスの比率が高いのはマルチェナである。
中盤へのパス本数は、全てにおいてマルチェナが優る。
トーレスへのパスはプジョルがやや優る。
ビジャへのパスはマルチェナが優る。
以上のデータはマルチェナの方が前に送るパスが多く、全体としてのパス成功率も高いことを示している。
データから予測されるように、実際の試合でもマルチェナが後方からの配球を担当した。
プジョルは、ロングパスの精度の低さや前に送るパスの少なさから、その存在意義が疑われる場合がある。
次にプジョルのディフェンス本来の働き、つまり相手がボールを持ている場合のプレーを検証する。
ファール数
90分あたりのファール数において、プジョルはマルチェナの約6割である。
プジョルのプレー内容
この大会において、プジョルは裏を取られないことに注意を払っていた。
クロスやミドルシュートに対して、非常に素早く反応し位置を下げた。
具体例はロシアとの緒戦、24分52秒、34分52秒、89分57秒に見られる。
またこぼれ球や相手のミスに対しても、非常に良い反応を示した。
これに加えて味方のミスにも早い反応を見せた。
準決勝ロシア戦の76分48秒がその例である。
具体的には下の写真のようになる。
セナのパスがカットされ、相手フォワードに直接渡った。
このピンチにプジョルは素早く反応し、相手の前に体を入れた。
このようなプレーは、一試合に一度起きるか起きないかである。
それに対する行動が早いということは、常に守備に入る準備ができていることを示している。
相手のミスやこぼれ球に対するだけでなく、味方のミス対する守備も早い。
プジョルは一般にいわれる”攻めている時にも守備への集中を切らない”という点で優れたプレーを見せた。
最初のロシア戦の88分19秒にもそのようなプレーがある。
プジョルの特徴
攻撃面
・パス精度はショート、ロングにおいて不足している
・ミドルパスにおいて高い成功率を残した
・横パス、バックパスの比率が高い
・ボランチにボールを預けることが多い
ボールを持ったプレーについては以上のことが言える。
後方から組み立てを担当する選手ではない。
パスで致命的なミスをしないようにプレーする選手である。
守備面
・少ないファール
・裏を取られないポジショニングと動き
・相手のミスへの反応の早さ
・こぼれ球への反応の早さ
・味方のミスへの反応の早さ
相手がボールを持っている時、以上のような特徴が見られた。
守備への集中という点で際立っていた。
ユーロでの評価
プジョルがベストイレブンに相応しいかという問を考える。
チームを支え続けたという意味では相応しい。
しかし単体での能力をペペのような選手と比べると、相応しくないであろう。
隣のマルチェナと比べてもパスの点で明らかに見劣りする。
どの点を評価するかによる。
マルチェナについては相応しいと言える。
ボールをつなぐサッカーを行うためには、ディフェンスラインからのパスの正確性が非常に重要である。
その第一歩になるのがマルチェナであり土台を支えたと言える。
*注:最初の表は、すべてのパスに関するデータである。グラフは先発11人に対してのデータである。
GK:カシージャス
DF:セルヒオ・ラモス、プジョル、マルチェナ、カプデビラ
MF:シルバ、セナ、シャビ、イニエスタ
FW:トーレス、ビジャ
参考:プジョルは縦に入るパスにおいて、フォワードを離す場面があった。これは監督の指示によるものである可能性が高い。