準備動作(沈み込み)の重要性 守備編
「クロアチアはいかにして最後の失点を防ぐべきだったか、ということやな」
「それを考えるために下の三枚の写真を眺めてみたい」
「ふむ」
「鍵は二枚目の写真でこの時、青い2人のディフェンダーは片足が下がりつつあることがわかる」
「三枚目で確かに足が後ろに出てるな」
「これは守備として非常に基本的な部分を間違えている」
「ふむ」
「常識として、ディフェンスはボールがどこに飛ぶかわからない状況では、あらゆる方向にすばやく動くことのできる体勢をとらなければならない」
「ある方向に動いていたのでは、そこから外れた部分に対応できないからやな」
「それは沈み込みや準備動作と呼ばれるもので、両足に均等に体重をかけ膝を軽く曲げて重心を沈ませる」
「テニスの選手がレシーブの時によく行う」
「バドミントンでも重要になる」
「サッカーでは、それを実現するために軽くジャンプする姿がよく見られる」
「マケレレなんかがそうやな」
「ちょっと飛び過ぎぐらい飛ぶこともあるけどな」
「それでその技術が最も多く使われる場面というのは、空中で二人の選手がボールを競り合う時になる」
「斜め前後左右、どこにボールが飛ぶかわからないことが理由としてある」
「まさにこの状況がそれにあたる」
「ここで準備動作をしていなかったことが致命傷になったわけか」
「実は2人のディフェンダーはここから二歩半も下がる」
「それがなければ確実にクリアできていた」
「クリアをしていれば、そこで笛が鳴りクロアチアが勝っていた」
「運命の分かれ道かね」
「ここでミスをした選手の1人はロベルト・コバック」
「うむ」
「そしてミスをした内容は、2人の選手が空中で競り合う時に周囲は準備体勢を取る、という非常に基本的なことだった」
「数学でいえば技師が九九を間違えるようなもんやな」
「よくわからん例えやな」
「そのくらい基本ということや」
「コバックほどの経験を積んだディフェンダーが、これを間違えるというのは状況を抜いては理解できない」
「延長ロスタイム、残りワンプレーで得点を取られなければ終わり」
「それが、彼をゴール方向へゴール方向へと引っ張ったとしか考えられない」
「ボールを近づけたくないからゴールのすぐ前で守ろうという意識が働くのかね」
「ロベルト・コバックがこのようなミスをおかすとしたら、地球上のほとんどの人間は同じ間違いを犯すと思っていい」
「いきなり話が広がったな」
「何にしても沈み込み、準備動作というのは非常に大切だから、選手も監督も日々の練習でこれをおろそかにしてはいけないということやな」
「そういう結論か」
「事実だからしょうがない」
「あとこの失点を防ぐという意味でクロアチアとしては、オフサイドで相手にきっかけとなるフリーキックを与えたのがまずかった」
「下の形か」
「ラキティッチがボールを奪い、トルコの選手をひらりひらりと2人かわす」
「縦に走るフォワードにパス」
「センターサークル付近でオフサイドを取られ、トルコにハーフラインに近い位置で間接フリーキックが与えられる」
「クロアチアのゴールに近い位置だったからこそ、良いボールがエリア前に入った」
「やはりここでは下のように出したい」
「コーナー方向か」
「ここでボールをキープすれば、クロアチアの勝ちだった可能性は非常に高い」
「しかしオフサイドを取られたら結局一緒ちゃうかね」
「フォワードは間に合わないと思ったら止まれば良くて、そうすればオフサイドは取られない。キーパーがボールに追いつくのは深い位置だから、ロングボールの脅威としては薄らぐ」
「あの状況で止まるのは無理やろ」
「それにもしサイドの奥に蹴ってオフサイドを取られれば、ボールを蹴る地点に動かすために時間がかかる。あの場合は中央に蹴ってキーパーに直接取られたから、すぐに蹴られてディフェンスを整える時間が少なかった」
「それはあるかもわからんな」
「これも基本やけど、やっぱり世の中最後は基本が大切やから、普段の練習からそれを意識してやらなあかんと痛感する次第や」
「反省しきりやな」
「まさに」
「では最後に、前の文の一番最初の方で出てきたクロアチアの見事なプレーを分析して終わるか」
「ええで」
「続きは」