2008/06/20 ユーロ2008 準々決勝 (3)

ターンパスとその実例 クロアチアの崩し


「さて」

「ユーロ2008トルコ対クロアチアにおける19分の、クロアチアのプレーを分析すると」

「まあそういうわけやな」

「まずこのプレーでは、ターンパスという技が重要な役割を果たしていた」

「ターンパスというのは、下のように表される」

「これはイニエスタが非常に得意で、まずディフェンスを背負ってボールを受ける場合に、近いサイドラインの方向へターンするフェイントを入れる」

「この場合、左やな」

「そこからきゅっと内側にターンして、ディフェンスを振り切り斜め前方を向く」

「そこから中央やサイドへパスを出すフェイクを入れる」

「ディフェンスを中に釣った後、ターンしてきた方向にパスを戻す」

「ゾーンディフェンスに対して、最も簡単に裏を取る方法の一つやな」

「簡単といっても、最初のターンが難しいねんけどな」

「この技が決まれば最後にパスを受ける選手は動く必要がなく、ディフェンスの方が勝手に遠ざかってくれる」

「動きの部分だけを取り出せば、下のようになる」

「左右両方か」

「これを右利きが右サイドで行う場合、最後のパスはアウトサイドで出すことになる」

「これはスルーパスを出す時によく使われる」

「下の形やな」

「中央にターンしてアウトで縦に出すと、高確率でチャンスになる」

「ドイツ対ポーランドの一点目なんかが、その典型やな」

「ゴメスがクローゼに出したパスが、まさにそれにあたる」

「下準備はこれくらいにしてプレー鑑賞に移るか」

「まず、クロアチアの攻撃は下の形から始まった」

「青がクロアチアで上方向に攻めている」

「センターサークル下でのドリブルの後、下がってきたクラニチャルにボールが渡る」

「それを前に短く出す」

「受けたのはモドリッチ」

「それを素早くクラニチャルに戻す」

「ここからダイレクトでサイドチェンジ」

「右のスルナに渡る」

「ここでは、”3本の短いパスと1本の長いパス”という手筋が使われている」

「短いパスをつなぐとそこに守備が集まってくる、集めたところで大きく展開すれば当然チャンスになる」

「これを実現するために、3本パスをつないだら1本長いパスを考えろと言われる」

「見事にそうなっている」

「同じ図で前線の選手の動きも重要で、一番前の選手が裏に抜ける動きをすることでサイドのディフェンダーを後ろに引っ張り、長いボールを受ける選手をフリーにした」

「ラインの裏を狙うことでスペースを作る実例やな」

「サイドにボールが渡った後は下のように進行する」

「ボールを持ったスルナに対して、その外からサイドバックが追い越しをかける」

「これで中のディフェンダーがサイドにつられる」

「スルナは縦に行くそぶりを見せながら、相手の中盤が下がったところで中に切り返す」

「切り返した後は弧を描くように中央に入る」

「これがターンパスのターンに相当する」

「アウトサイドでディフェンスの裏へパス」

「ターンパスの完成やな」

「そこにモドリッチが大きく斜めに走り込む」

「いわゆるダイアゴナル・ランというもので、相手を崩すきっかけになることが多い」

チェコ戦でのアルトゥントップなんかが同じような行動を取っている」

「ボールを受けたモドリッチは、斜めにドリブル」

「これに合わせて中央のフォワードはニア方向に走り込む」

「下の状態になる」

「ここでモドリッチはどのようなパスを出すのでしょうか、というのが問題なわけだが」

「いきなり問題か」

「下のように出す」

「単純なクロスといえばクロスだが、ファーポストの手前に止めるというか置く感じで出す」

「フォワードの足元に合わせようと思うと難しいので、点で囲まれたゾーンに置くようにするとやりやすい」

「これはサイドの選手がラインの裏に抜けて、ペナルティーエリアの横付近に出た時の手筋の一つやな」

「そのような状況では多くの場合、ファーポスト側に選手が1人余っているのでシュートフェイクから、その前のスペースに置くように出すと簡単に決まる」

「この場合、モドリッチは外方向に走っていたのでシュートフェイクを使えなかった」

「中に戻されたボールに対して、ニア方向に走ったフォワードが開きながら反応する」

「消える動きその1、ニアからファーへ逃げるというやつやな」

「ダイレクトでシュート」

「完全に決まったと思いきや」

「ボールはバーを叩いた」

「実に惜しいシーンだった」

「使われている手筋、チームでスペースを作る動き、それを生かす技術、それらが見事に融合したプレーだっただけに、決まらなかったのが悔やまれる」

「決まってたらベストゴールに推薦したいところやけどな」

「ちなみに上の流れをサッカー用語で表現すると、3本のショートパスから長い展開でフォワードがフリーランで空けた右サイドのスペースを使い、

 サイドバックのオーバーラップを背景にターンパスからダイアゴナル・ランでラインの裏へ抜ける中盤にパスを合わせ、

 ファーポストへの置いておくクロスに対して、ニアからファーに動きを変えたフォワードが反応してシュートを打ったがバーを叩いた、ということになる」

「またもじゅげむじゅげむか」

「そんなこんなで」

「実に様々な教訓に満ちた試合だったというところで」

「また次回」

「ご機嫌よう」

この技術
スペイン対イングランドの前半41分30秒~でイニエスタがターンパスを使ってカプテビラにスルーパスを通しているシーンを確認しました。

ターンの技術が本当に難しいようで、完全にイングランドは逆を取られていました。
2009/02/21 23:29 - ZERO

Re:この技術
ありがとうございます。
以前、モッタの置いておくパスを憶えていただいた時や、インサイドキックの蹴り分けを使っていただいた時などもそうだったのですが、
むかし書いたことを気に止めていただき、実際に使ったり確認していただいていることを知ると、非常に嬉しくなります。

これらかもよろしくお願いします。
2009/02/27 11:30 - studio fullerene C60

【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら

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