バルセロナ 1-0 レアル・マドリー
監督 ジョゼップ・グアルディオラ
フォーメーション 1-4-3-3
「話題のクラシコはバルサの勝利」
「マドリーとしては惜しい試合を落とした」
「両チームの先発はこう」
「マドリーが驚きの配置を取っているところに触れたいところではあるが」
「流れの関係上、バルサを先に見ていこうかと」
「上下をひっくり返すと次のようになる」
「ふむ」
「いわゆる普通の配置に見える」
「見えるのだが、実際はこうでない時間の方が長かった」
「おそらく選手の滞在場所の平均は下の形に近い」
「右肩下がりやな」
「何とも言えん陣形ではある」
「こんなもん、上手くいくわけないわな」
「ケイタが前に行こうと思うとメシとアンリが邪魔で、メシが下がるとイニエスタが邪魔、シャビが中に入ろうとするとイニエスタとかぶる」
「おまけに中央に突っ込む選手がいないから、サイドをたまに抜けても中ががら空き」
「唯一動きやすいのはアウベスだが、そこに長いボールを入れる気配もなし」
「前半のバルサはボールはごにょごにょ持っているものの、カシージャスが危険を感じるシュートは一本も打てなかった」
「反対にカウンターで死亡寸前まで行っていた」
「バルサはスリートップをやめる気かと思っていると」
「後半開始の配置はこう」
「イニエスタが真ん中か」
「キックオフがバルサだったから、サイドの奥にボールを蹴り込むことを考えてこうなっているのかもしれん」
「ただし、すぐに下のようになる」
「普通やな」
「どうやらあきらめたわけではなかったらしい」
「51分に交代がありアンリが下がり、イブラヒモビッチが入る」
「これまた普通やな」
「そして56分にイブラヒモビッチがゴールを決める」
「入って5分で決勝点か」
「素晴らしい働きではないかと」
「イブラは究極兵器みたいなもんやな」
「人間の身体能力から見て、ほとんどアルティメットに近いんやろな」
「あれほどの肉体とテクニックを兼ね備えた選手はいない」
「まずぺぺを吹き飛ばす時点でおかしい」
「バルサの得点はカウンターで攻めたマドリーのボールを奪った後、逆に速攻を仕掛けたことから決まった」
「その過程で以下のプレーが挟まっている」
「いわゆる楔のボールをイブラが受ける」
「ここで後ろから寄せるのがぺぺ」
「コントロール」
「両足を地につけ、ぐっと腰を落とす」
「ぺぺが吹き飛ぶ」
「最終的なぺぺの体勢はこう」
「何というか」
「かんというか」
「恐ろしい強さやな」
「ぺぺというのは体が兵器といわれるほど身体能力に秀でている」
「サイズ、筋肉の強さ、速さを兼ね備え、普通の選手が後ろから当たられると押さえ込まれてほとんど何もできない」
「それを吹き飛ばすイブラヒモビッチ」
「びっくりするわな」
「おまけにこの肉体に恐るべきテクニックを備えている」
「まずは以前に見たインサイドでのパスフェイクから引いてスルーパス」
「最初にセンターバックを吹き飛ばす」
「以上において、マークしていた白い選手が弾き飛ばされているのがわかる」
「そしてインサイドフェイクからボールを踏む」
「ディフェンダーがパスに釣られて足を伸ばしている」
「足の裏で引いてスルーパス」
「テクニック的に素晴らしい」
「引いて軸足の後ろから縦に出すというのはよく見られる」
「クリスティアーノ・ロナウドなどもよくやる」
「この場合、先にインサイドフェイクが入っている点がさすがやな」
「それによってパスカットの危険を未然に防いでいる」
「上手いとしかいいようがない」
「しかしここで一つ疑問があるんやけどな」
「なんや」
「スペインではこういうパスを出すと”タコン”で出したと言われるわけや」
「凄いパスだとタコナッソとかやな」
「ただタコンというのはかかとのことやろ」
「そうやな」
「このパスはどう見てもインサイドであって、かかとではない」
「ふむ」
「これをタコンというのはおかしくないかね」
「インサイドのかかと寄りで出したからタコン、と言う意味なんではないかね」
「ほんまかいな」
「ようわからんけどなやな」
「適当なことを言うのはやめてくれるか」
「何にせよイブラヒモビッチが相当なテクニック持ちであることは、上の例からもわかる」
「いわゆるコーディネーションというか、体の各部分をバランスをとりながら連動させる動作が上手い」
「ルビン・カザンとの試合で決めたゴールを見ると、それがよくわかる」
「まずは後ろからきたボールを胸で落とす」
「右へ流れながらボールに追いつき」
「寄せるディフェンスの足の下を抜いてファーサードにシュート」
「その後はというと」
「この空中姿勢美しいこと」
「何とも言えんな」
「右に流れながら左に打つというのは、角度がきつくなればなるほどやりにくくなる」
「それを微塵も感じさせない、体の各部をバランスさせる能力」
「恐るべしやな」
「同じようなことが以前に見た両足を揃えて飛ぶプレーでも見られる」
「そこでも守備者の出す足の下を抜いて決めていた」
「相手の動きをしっかりイメージして、その空いた部分を抜くというのはサッカー選手にとって必須の能力であるわけだが」
「イブラヒモビッチはそれを豊富に持っているというのが見える」
「おまけに以前の例では、これまた必須能力の一つである逆算能力の確かさも見ることができる」
「どれだけ高性能であるのか」
「そら恐ろしい」
「さらに素晴らしいことに彼はフォワードにとって最適ともいえる性格を有している」
「オサスナ戦でのホセーチョとのやりとりが代表例やな」
「まずは下の図から」
「右手で相手の左手を思いっきりつかむ」
「何だこのやろう痛いじゃないか」
「でも離さない」
「いい加減にしろこの野郎」
「ホセーチョとしてはここでぶん殴りたいところだが」
「それはまずいので蹴りを入れることにする」
「ところがイブラは知らん顔」
「これぞまさにおまえなんぞ眼中にないの見本やな」
「しかし相手が視線をそらした瞬間、サイドラインの方を振り返る」
「ねえねえ、こいつ今蹴り入れたよ、反則で退場だよね」
「と、副審に向かってアピールしている」
「反則もくそもないわな」
「イブラの存在の方が反則やっちゅう話や」
「しかし喧嘩慣れしているというか何というか」
「性格の悪さがにじみでている」
「おまけにこの後には下のような表情」
「ぶー」
「なんなんですかね、これは」
「にかっと笑って、うーなんやろ」
「ホセーチョもちょっと引き気味やな」
「激情にかられて突っ込んでくる相手との喧嘩なら得意やけど、こんなどこに性根がついてるのかわからんリアクションをされると困るやろうな」
「以上を見るとイブラヒモビッチというのは、フォワードに絶対的に必要な相手に合わせない性格の強さ、そして敵の感情をものともしない根性の悪さを備えていることがわかる」
「相手に合わせないというのは重要やな」
「しかしイブラはフォワードとして完璧ではないか」
「そう思われるわけだが」
「どうなんでしょうかね」
「以前エトーはワントップに向いているのでしょうか、どうも組み立ての邪魔になっているような気がするのですがという質問をいただいた」
「そこで教科書的にはワントップ向きではありませんが、チームの構成のなかで非常に重要でしたと答えた」
「エトーがいることによって、バルサは戦術の幅というものを確保できた」
「例えばこのクラシコでは後半ブスケツが退場して、下の形になった」
「この時、一点リードしていたわけだから本当はこう組みたくはない」
「相手にスペースを渡し過ぎて守備が非常につらい」
「実際にもマドリーにいいように攻められた」
「きちんと守るなら1-4-4-1に組みたい」
「イブラがエトーなら彼を下げればいい」
「ところがイブラであるからして、下げてもとてもサイドは務まらない」
「じゃあメシを下げればいいかというと、エトーと比較すればお話にならない」
「エトーをサイドで守備に使う、というのはロナウジーニョがいた時代からよくあった」
「相手の右サイドバックを止めたいならこう」
「左サイドバックを止めたい時はこう」
「という形で使われていた」
「こういうオプションがないというのは、状況の変化に弱くなる」
「特に状況が悪化した時に耐える力が低下する」
「おまけにエトーを失ったことは、バルサお得意の前線からのプレスにも影響するであろう」
「というのが下に見られる」
「今、右に攻める白い選手に対して、センターサークル内にいるイブラがプレスをかける」
「ところが、あっさりかわされる」
「これはバルサにとってかなりマイナスであろうと思われる」
「押し込んだ後、プレスをかけないと術的に絶対に守備がもたない」
「そのプレスの圧力が低下する」
「良いことはないであろうと予想される」
「戦術的には下のボールがないのも気にかかる」
「センターバックとボランチから、ウィングへの長いクロスのボールがない」
「1-4-1-2-3というのは、理論上これがないとどんどんダメになる」
「外に張ってボールがこないなら、中に入りましょうということになって例えば下のような形になる
「これがいかんのは、この試合でも見た通り」
「はたしてこの辺りがどうなるのか」
「今後とも注目ではなかろうかと」
「まとめると、バルサは戦術的な幅を失っている」
「よって状況の変化に対応する能力が減じている」
「そのことは悪い状況で耐える能力の低下につながるであろう」
「そしてスリートップというわりには、サイドへ長くつなぐボールが足りない」
「これはシステム論的に自家撞着であり、上手くいかないであろう」
「というようなことが結論なわけですが」
「はたしてこれが正しいか否か」
「ご注目いただければと」
「そんなこんなで」
「また次回」
「ごきげんよう」