バルセロナ 対 チェルシー 後半
「さて」
「第2戦、いかに戦うか」
「バルサはチェルシーをいかに崩すか」
「そんな話が前回出てきたわけだが」
「だがなんや」
「チェルシーは守り方自体を変える可能性が高いから、第1戦からの結論はあんまり意味がなかろうと思うわけや」
「そうか」
「この試合では48分にマルケスが崩れ落ち、50分にプジョルが入った」
50分:マルケス → プジョル
「これはチェルシーにとって少し途方にくれるところがあり、守備での目標が失われる」
「プジョルに代わったし、前みたいに真面目にケアしなくてもいいのではないかという話になる」
「それに対するヒディングの回答は明快で70分に下のようになる」
70分:ランパード → ベレッチ
「これは何というか」
「からいな」
「おそろしく勝負にからい」
「バルサに何もさせませんよ、という引き方やな」
「ワントップにして、引いて守れたらこれほど楽なことはない」
「マルケスがいるとこれができない」
「それで苦労するわけだが、その心配が何もなくなった」
「この変化を見ても、バルサにとってマルケスの存在がいかに重いかということがわかるし、たった一人の選手が戦術に極めて大きな影響を与えることがわかる」
「戦術というのは選手の技術的特長から導かれるものであり、技術がわからない人間は結局戦術を理解できないという例でもあるし、技術をわからずに戦術を論じても上っ面をなぞることしかできない」
「何はともあれ、バルサとしては1点を目指さなければしょうがない」
「交代はというと」
「下のようになる」
81分:エトー → ボージャン、86分 アンリ → フレブ
「うむ」
「なるほど」
「これがバルサの問題の一つで、最初から攻撃において最も強い形で戦っているので選手を代えてもその面での能力は低下する」
「一枚看板やからな」
「この戦術的な奥行きのなさというのは、どうにかならんものかね」
「チェルシーとしてはバルサが同じように来るなら、下の形でええかね」
「きちんとスペースを埋めて0-0進行、後半65分過ぎから勝負をかけるようなパターンで十分やな」
「中盤の体力ではチェルシーに分があるし、ベンチに攻め駒もある」
「バルサはケイタを中盤に入れると良い意味はあるねんけどな」
「何でや」
「アウベスのクロスに対して、一番合うのは彼やと思わんか」
「どうやろ」
「まあこの形なら、まずチェルシーの有利は動かない」
「後半のグダグダ勝負になったらチェルシーが強いのは第1戦でもそうやったしな」
「おまけに0-0ならホームで延長までいけることを考えると、失点さえしなければ時間が経つほどどんどん有利になる」
「バルサは困ったな」
「何にも困ることはあれへんがな」
「何でや」
「ジャンケンでいうたらいつもチョキばっかり出してるからグーを出されて困るだけで、それをやめればええねん」
「でもバルサはパーは出せへんぞ」
「ほんならこっちもグーを出せばええだけや」
「そうきたか」
「あっちが攻めてけえへんのやったら、こっちも引いたらええだけや」
「トゥレの横にケイタで、サイドにフレブかね」
「去年までのバルサはこの2人がいなくてこういう戦いはできなかったけど、折角買ったんやからここで使うたらええやろ」
「引いて左を空けるのか」
「イニエスタを浮かせてエシエンさん、いらっしゃいや」
「まあアビダルがエシエンに負けることはないと思うけどな」
「縦にスペースがなければ、エシエンなんかカモみたいなもんや」
「しかしそう組んで、実は右にアネルカなんかが先発したらどうする?」
「その時はイニエスタとフレブの位置を代えればいいだけで、何の問題もない」
「ボールを取った後はカウンターか」
「当たり前で、エトーとフレブをターゲットにしてカウンターを狙う」
「どっちがチェルシーかわからんな」
「相手が嵌め手にくるならこっちも嵌め返したらいい。馬鹿正直に相手の予想通りに戦って的になる必要はどこにもない」
「理屈はそうやけどや」
「おまけにベンチを見てみ、アンリとメシが持ち駒になってる状態は相手にとって重いし、調子6割程度のメシを最初から使うより、途中から出した方がええやろ」
「アンリはあかんかもしれんという噂やけどな」
「スコアラインで見れば、0-0以外の引き分けは全部バルサの勝ちになるわけだから1-1を目指せばいい。それならアウェーで素直に引くのが常道だし、チェルシーの攻撃ならそれで十分凌げる」
「第1戦の後、グアルディオラやイニエスタがチェルシーのサッカーがつまらんのどうこうみたいな発言をしてそれはないやろ」
「そんなんバルサが負けた時に出るお約束みたいなもんで、何の意味もないやんか」
「まあ、そうやけどな」
「それにもっと煽ったったらええんや」
「何でそんないに興奮してんねん」
「チェルシーのサッカーは最悪だ、アンチフットボールだ、退屈を通り越して見ただけで気絶しそうだとか散々言い散らかして、本番でガチガチに引いたら相手はびっくりやで」
「それじゃ緒戦のヒディングと同じやんか」
「だからやられたら、やりかえしたらええんやって」
「ハンムラビか、お前は」
「ヒディングに対しても”昔、戦う戦力があるのに、サッカーをしないチームを見ると反吐が出るとか言ってあのプレーか。なら自分に向かって反吐を吐け”とか挑発すれば、流石に冷静ではいられんと思うで」
「どんだけ盤外戦術やねん」
「まあチェルシーのやったことは戦術上当然で、非難されることなんか何一つないねんけど、使えるもんは使っていかんと」
「しかし今日はまたえらい勢いやな」
「そうか?」
「一文が長いねん」
「それは意外やな」
「先発やけど、別にこれでええやろ」
「それもありやな」
「アンチフットボールが云々とかいうなら、前に賭けたらええやろ」
「どうせならいっそのこと、下まで行ったらええんちゃうか」
「まさにドリームやな」
「しかし第2戦の最適解は下の図か、そのバリエーションでこれ以外は勝つ確率を下げるだけでアホみたいなもんやで」
「チェルシーはデコもジョー・コールも今期あかんらしいな」
「それも引くことが良い解になる一つの理由やな」
「しかしバルサのフィロソフィー的にそういうわけにもいかんのちゃうか」
「そんなことないで」
「そうかね」
「実際2005-2006と2004-2005のバルサとチェルシーがその良い例やんか」
「バルサが優勝する年と、その前の年か」
「簡単に言えば2004-2005のバルサは理想論的サッカーで常にサイドバックを上げてプレーし、その裏を突かれて5-4で引っくり返った」
「2005-2006はその反省をいかし、アウェーでは守りを固め我慢の試合で勝ちにつなげた」
「2004-2005は今と同じ一枚看板サッカーで敗れ、2005-2006は試合毎に相手に合わせて戦術を調整し、それがビッグイアーにつながった」
「そのあたりは2004-2005がこちら(※リンク切れ)、2005-2006はこちら(※リンク切れ)のバルサの項目を参照いただくとして」
「フィロソフィーやイデア云々の話は既に結論が出ていて、しかもバルサ自身がそれを強烈に体験してるはずなんやけどな」
「その時はライカールトで監督が違うしな」
「より勝ちやすい方法があるのに、それをとらずに相手の術中にわざわざ嵌りに行くとしたら、そっちの方がよっぽどアンチフットボールやで」
「そうなんかね」
「武道でも実際の戦争でも、技量や戦力が伯仲するほどうかつに動けなくなって睨み合いになるのが普通なわけで、時代劇みたいにちゃんちゃんばらばらやるわけにはいかんやろ」
「バルサは技量において絶対的に優っている自信があるから、同じやり方を貫くんやろ」
「技はそうだとしても、サッカーはそれだけでは決まらんのと違うか」
「それにあれだけ選手を揃えたチェルシーが、完全に守りに来たのに、ちゃんとエリアの中までボールを運べるバルサというのは凄いで」
「それは確かに」
「チェルシーは決して余力を残して守り切ったわけではなく、空いてはいけない部分が空く場面が多々あったし、最後の壁でバルサの攻撃を凌ぎぎったというゲームだった」
「チェルシーがあそこまで守ったら、普通のチームだと手も足もでんやろな」
「マドリー対リバプールのような試合になりかねない」
「それは言うたらあかん」
「そのんなこんなも含めて第2戦をお楽しみにというところやな」
「それにしてもバルサは十分勝てるんやから、素直に勝ちに行ったらええと思うけどな」
「そこも注目という話や」
「というところで」
「今回はこの辺で」
「また次回」
「ご機嫌よう」
「ちなみにクラシコの分析はありませんので」
「申し訳ありませんが、ご理解いただければと」
「そのような次第です」
「そういえばや」
「なんや」
「この試合ドログバに注目してて一つ気づいたんやけどな」
「だからなんや」
「マルケスが倒れたシーンやけどな」
「最後、左手を上げて手前を向き何かを叫んでるんや」
「そのようやな」
「これはサイドラインに向かって医者を呼んでいる図で、バルサの選手ですら誰もこんな行動は取っていない」
「マルケスの怪我が尋常じゃないのを直感したんやろうな」
「その瞬間、敵のために本気で医者を呼ぶことのできるドログバは、何というか人として信用できると思わんかね」
「当たり前といえば当たり前の行動のような気もするが、実はそうでもないのかもわからんね」
「そんなこんなで」
「今度こそ本当にまた次回」
「ご機嫌よう」