レアル・マドリー 1-0 ビジャレアル
監督 マヌエル・ペレグリーニ
フォーメーション 1-4-4-2
「新年明けて最初の試合は、マドリー対ビジャレアル」
「何ともめでたい組み合わせやな」
「結果は1-0でマドリーの勝ち」
「危うい試合ながらも、バレンシア戦に続いて再び3ポイントを獲得」
「薄氷を踏んでも割らない見事な試合かと」
「見事なのかね」
「今回は主にマドリーについて、構成と戦術面から眺めてみようかと」
「最近はやりの個人技はなしか」
「残念ながら」
「そうか」
「図を多く言葉を少なくパラパラ漫画のような形式ですので、お屠蘇を片手にご覧いただければと」
「三が日はもう終わってるけどな」
「先発はこちら」
「マドリーはやはり1-4-4-x方面に向かうようやな」
「妥当なところやな」
「この構成の攻撃における狙いはこう」
「フンテラールにロングボール、後は右サイドをロベンとラモスで縦へ」
「要するにセビージャ型の焼き直しやな」
「フアンデが監督である以上、こうなるわな」
「そこで有効な攻め筋は下の形」
「シュナイダーからのサイドチェンジなどから右にボールを移し、ロベンのドリブルかセルヒオ・ラモスのクロス」
「フンテラールへのロングボールは、ゴンサロ1人で対処できるので恐くない」
「上の形を止めるには、相手としては図の右を固めたい」
「ところが、この日のビジャレアルはこう」
「一応1-4-1-3-2だが、ピレスがどうしても前残りになる関係で青い部分が空く」
「それとマドリーの狙いを合わせる」
「これはいかん」
「相手の強い場所と自分の弱い場所が当たると、大体悪いことが起こる」
「31分のロベンのゴールは正にこれでロベン、ラモスでカプデビラのところに1対2を作られて、エグレンが必死でヘルプに行くが中に切れ込むロベンにかわされ、そのままミドルを決められた」
「バレンシア戦のマドリーとペペの復活を考え合わせると、マドリーが右をこの2人組むことは十分に予想の範囲内である」
「にもかかわらず、あえてビジャレアルは上のように組んだ」
「これはいかなることかと」
「バルセロナ戦ではアウベスの押さえにカニを入れて、ピレスは前に置いた」
「マドリーは低く見られたのかね」
「それはどうかわからんが、右を押し込まれても、その裏を突いて元を取ろうという考えであったことは間違いない」
「奪ったボールを前に残ったピレスに入れて、サイドに流れるロッシにつないで攻めるといった流れやな」
「しかし、これは全く有効ではなかった」
「ペペが危険過ぎた」
「ロッシがサイドに流れたとしてもスピードで振り切ることはできず、さらには追いつかれた後、手もなく潰されていた」
「あれは正に性能の差やな」
「でかくて機敏で速くて強い。さすがに30億のセンターバックだけのことはある」
「ぺぺの肉体は、ほとんど兵器やからな」
「そんなこともあり、開始からしばらくは完全にマドリーのペースだった」
「ラインを高く保ち前からプレスをかけ、相手の穴をつく」
「非常によろしい立ち上がりだったわけだが」
「前半の途中あたりからどうにも雲行きが怪しくなる」
「一筆で表すと次のようになる」
「一筆ではないな」
「これがかの有名な”中盤がぱっくり空く病”やな」
「中盤が2人残る分、今までと少し違う意味があるねんけどな」
「デル・ボスケとマケレレが去りベッカムが来て以来、この病気について毎年のように書いている気がするのは気のせいかね」
「近いような遠い過去やな」
「雲行きは怪しいまま、マドリーが1点リードして前半を終える」
「ハーフタイム後、ニハットが下がりジョレンテが入る」
46分:ニハット → ジョレンテ
「ジョレンテは最初ぺぺの側にいたが、その後位置を変える」
「後半開始からは完全にビジャレアルの試合で、マドリーは自軍のエリアに押し込められ状態が続く」
「これはいかんと56分」
「フンテラールに変わってドレンテが入る」
56分:フンテラール → ドレンテ
「ドレンテで左サイドを防ぎ、シュナイダーを中盤に近づけて穴をふさごうということやな」
「旗色が悪くなると、フォワードの1人を引かせてガチガチに固めるあたりもセビージャ時代と同じやな」
「その辺りに興味を持たれた方は、こちら(※リンク切れ)をお読みいただければと」
「攻めのビジャレアル、カウンターのマドリーで時は流れ得点は動かない」
「負けてるビジャレアルはイバガサを投入」
69分:セナ → イバガサ
「ベティス戦でも見たように、点が欲しい時にはイバガサが出て来る」
「77分にマドリー、79分にビジャレアルが動く」
77分:ラス → ファン・デル・ファールト、79分:ピレス → カニ
「ここでラス・ディアラをファン・デル・ファールトに代える理由は、カードや体調がらみ以外だとよくわからんのやけどな」
「そして89分にやや意外な交代が行われる」
「ロベンが下がってメッツェルダー」
89分:ロベン → メッツェルダー
「後ろ3人に赤丸がついているのは、その位置関係がよくわからなかったことによる」
「この状況でロベンを下げるのは当然やな」
「1点勝ってる状態で、動けないロベンを置く必要はないしな」
「ロスタイムに相手が放り込みをかけてくるのはよくあることだから、後ろを厚くすることも理にかなっている」
「おまけに、この交代で時間も少し浪費できるしな」
「ところが観客はブーイング」
「これがベルナベウというか何というか」
「こういう交代は、彼らにとてみっともないことこの上ない」
「ビジャレアル程度を相手にそこまでしないと勝てないのか、というのが許し難いんやな」
「そういうえば昔もこんな事件があったな」
「あったな」
「カマーチョとルシェンブルゴの間の監督で……」
「マドリーファンでも名前を思い出せない、影の薄い人や」
「誰やっけ」
「ガルシア・レモンや」
「そんな名前やったな」
「チャンピオンズリーグのバイヤー・レバークゼン戦で、引き分けを狙って交代で時間を浪費しようとしたら、勝利を望んでいた観客がひきつけを起こして場内大ブーイングに包まれた」
「詳しくはこちらの”ソラーリをどうするつもりよ?”(※リンク切れ)という文をお読みいただければと」
「ガルシア・レモンといえば、最後は非常に寂しいものだった(※リンク切れ)」
「何にせよベルナベウの観客の美意識というかそういうものは実に堅固で、それに反したものに対する批判も凄まじい」
「批判というか坊主憎けりゃ袈裟まで憎い式で、その人物自体への憎悪に近い感情になるのが恐ろしい」
「最近の監督でその犠牲になったのがガルシア・レモンであり、カペッロなわけやな」
「カペッロなんか2回監督を引き受けて、2回とも優勝して、2回とも裏口から追われるように去らなければならなかった」
「そのサッカーがどうしても観衆の趣味に合わなかったのが原因やな」
「はたしてフアンデは大丈夫か」
「今後も注目であると」
「実は今、リーガでマドリーに一番ふさわしい監督は、ビジャレアルのペレグリーニではないかと思うんやけどな」
「お父さんキャラナンバーワンか」
「人からチームを作り、選手を喜んで任務につかせることができる意味でもナンバーワンやで」
「面白いかもわからん」
「最後に、このマドリーに対する相手チームの対策を考えて終わろうか」
「一度考えられてから以下を読まれるとよろしのではないかと」
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「基本は耐久勝負で、体力勝ちやな」
「特にベルナベウでそれをやれば、我慢が切れた観衆がマドリーにブーイングを始めるからより有利になる」
「システムは1-4-1-4-1が一番楽やな」
「こうしておけば、マドリーのメインの攻め筋を止めやすい」
「まずロベンとセルヒオ・ラモスに対して、3対2で数的優位を作りやすい」
「次にロベンが中に切れ込むと中盤の1、紫の円で囲まれた選手が丁度いい守備位置にいる」
「もし縦に突破されたとしても、その選手がマイナスへのパスを切りやすい」
「ロベンに対する安全弁になる」
「ボールを奪って攻めるときは、1-4-1-4-1の基本通りやな」
「ワントップへの長いボールか、縦に抜けるサイドに合わせることを最初に狙う」
「ぺぺとカンナバーロなら、ワントップはカンナバーロを相手に競った方がいい」
「もしサイドを抜けたら、中が薄い状態でセンタリングを上げるより、一度スペースに戻ってキープする方を優先させる」
「そうなるとマドリーの両サイド、シュナイダーとロベンが後ろに走らざるを得なくなるので、全体を押し下げることができ、さらにその2人の体力を削ることができる」
「上手く押し下げたら、次は下のように守ればいい」
「ガゴ、ラスを近くでマークして、守備ラインでは、なるべくカンナバーロ、ハインツェにボールを持たせるようにする」
「マドリーとしてはハインツェをマルセロに代える方が攻撃的にはいいが、それをやると守備で穴ができやすくなるので悩ましい」
「個人の能力に自信のあるチームは、下のように組んでもよい」
「1-4-4-1-1か」
「1-4-1-4-1が一番安直でいいと思うけどな」
「前半きちんと耐えて、後半マドリーの病気が出たところでサイドやトップに攻めに効く選手を入れて勝負に出る、というのが基本かね」
「おそらく」
「今のチーム構成では、マドリーはこれをやられると必ず苦労する」
「ではどうするか」
「なるべく今のマドリーのメンバーを残して、フアンデのやりやすいように変えるとして、それぞれポジションに典型的な選手を入れると下のような感じになる」
「基本的にセビージャ時代の構造と特徴のパクリか」
「はたしてどういう補強があるのか」
「これまた楽しみというところで」
「また次回」
「ごきげんよう」