2009/01/10 リーガ・エスパニョーラ 18節

バレンシア 3-3 ビジャレアル

監督 マヌエル・ペレグリーニ
フォーメーション 1-4-4-2


「さて」

「派手な試合であったな」

「3対3の同点」

「よく得点が入った」

「色々あったけど、結局もとのもくあみのような試合だった」

「先発はこう」

「ビジャレアルはイバガサが先発なのがちょっと意外やな」

「それより何より、アルベルダが右サイドバックであるということに注目せなあかんやろ」

「去年はアリスメンディがそこをやってたから、インパクト的にはどっこいどっこいやな」

「前半はつなぐビジャレアルに対して、バレンシアのカウンターがばかばか決まった」

「絶対にリスクを犯さず、ひたすら守って相手の隙を突くことが心情の今のバレンシアにとって、どんどん前に来るビジャレアルは合口の良い相手ではある」

「スコアもあっという間に2-0とリードした」

「大丈夫かビジャレアルと思っていると、前半終了にかけて持ち直してくる」

「そしてハーフタイム直前にコーナーキックからフエンテスがゴール」

「2-1で後半へ」


22分:ゴンサロ → フエンテス、46分:エグレン → エジミウソン

「開始からエジミウソンが入る」

「ちなみに前半途中でゴンサロが怪我をした関係で、センターバックにフエンテスが入っていた」

「しかし、エグレンをエジミウソンに代えたのは何でかね」

「外から見ているとイエローをもらっていたので、そこでの守備が甘くなることを嫌ったという理由しか思い浮かばない」

「後半になるとバレンシアの守備組織がゆるみ、ビジャレアルのチャンスが多くなる」

「ただカウンターで裏を取られた時の危うさというのは変わらず、バレンシアにも十分にチャンスがあった」

「60分過ぎから次々と交代が行われ、下のような配置に変わる」


61分:モレッティ → デル・オルノ、63分:ブルーノ → ピレス
65分:フェルナンデス → マドゥーロ、72分:アルビオル → エドゥ

「ビジャレアルはピレスとイバガサを中盤に揃えて、両サイドバックを上げる」

「点が欲しい時のいつものやつやな」

「これからがエキサイティングで、まずは76分にピレスとイバガサの絡みからジョレンテが抜け出してシュート」

「一度は止められるが、跳ね返りを叩いて2-2の同点」

「勢いに乗るビジャレアルと言いたいところだが、その直後79分にコーナーからエドゥが決めて3-2」

「再びバレンシアがリードを奪う」

「亀作戦+セットプレーのバレンシアが勝利を収めるかに思われたが」

「83分、カプデビラが相手ペナルティーエリアでドリブルを始める」

「彼が相手のペナルティーエリアでしかけるというだけでも事件やな」

「しかも、あろうことかホアキンが切り返すカプデビラの体を押さえて倒し、PKの笛が鳴る」

「吹いたのは高名なメディーナ・カンタレッホ」

「これをロッシが決めて同点」

「そのまま終了」

「実に様々な出来事があった後半であった」

「ここ3試合のビジャレアルは1引き分け2敗」

「成績はようないな」

「確かにそうやけど試合内容を見ると、色々な意味で本当に良くできたチームやと思うで」

「予算を見ると特にそうやな」

「まずマルカの年鑑を信用するとして、ビジャレアルの今年の予算は1ユーロ120円計算で76.6億円」

「それを1として他の上位チームと比較すると次のようになる」

 レアル・マドリー 6.3
 バルセロナ 5.9
 アトレチコ 2.7
 バレンシア 1.9
 セビージャ 1.4

「全てビジャレアルよりお金持ちやな」

「そしてここ3試合はバルセロナ、レアル・マドリー、バレンシア」

「その前に負けたセビージャにしても、ビジャレアルよりは予算が多いのか」

「ここ3試合で一番貧乏なバレンシアでも、69億円ほど予算が多い」

「レアル・マドリーなんか、400億円以上予算が多い」

「頭でそんなもんだろうと知ってはいても、改めて見ると脳味噌がくらくらする数字やな」

「子供銀行みたいな金額やしな」

「まあそんな中で守備一辺倒にならず、切り合って良い試合や互角に近い試合ができるというのは恐ろしい話やで」

「相対的に少ない予算の中で、ええ選手を揃えてるのが大きいのかね」

「ゴールキーパーからディフェンスラインは実にいい」

「ゴンサロに怪我が少なければ、ゴディンの読みの空振りが少なければ、アンヘルのクロスがもっと正確なら、カプデビラがインサイドキックをちゃんと蹴ってくれれば、とか色々あるけど、十分な選手が揃っている」

「ボランチなんか、これ以上の選手を4人擁したチームはほとんど存在しない」

「特に単体としては、エグレンがヒットやな」

「こんな良い選手がおったのかというくらいええ選手やな」

「ただチーム全体とボランチの関係を見ると、怪しいところがある」

「左サイドとの関係やな」

「例えばピレスを使うと、どうしても前にいきっぱなしになることが多いので、その裏のスペースを左のボランチが埋めざるをえない」

「そのような任務には走力があって、小回りが効いて、体の付け合いに強い選手が望ましい」

「例えばロナウジーニョの後ろを押さえていたダービッツ、ビジャレアルでいえば、リケルメの後ろを押さえていたソリンのような選手やな」

「ところが今はエグレン」

「拠点向きやな」

「サイドに走る選手がいてエグレンを中央に置き、中盤の芯としてゾーンを抑えるような使い方が向いている」

「左サイドに走って走って90分という選手がいないのも、戦術的にはつらい」

「例えばバルサのアウベス、マドリーのセルヒオ・ラモスのように、長い距離を平気で上がってくる選手に対して守備面で苦労する」

「1人マタのような選手がいれば、戦術面で幅がでるのでいい」

「後はフォワードに決定的な選手がいないのが一番つらい」

「去年(※リンク切れ)同じことを言って、大いに外した人がおったけどな」

「ニハットが大復活して18点決めるとは予見できなかった」

「それでも同じことを言うのかね」

「ビジャレアルが順位を争うチームにいるのは、マドリーのファン・ニステルローイ、バルサのエトー、バレンシアのビジといった選手やから誰かが突然悟りでもひらかない限り、やっぱりつらいと思うで」

「いいフォワードには金がかかる、というのはあるけどな」

「予算の差が一番もろに出るのがこのポジションやから、しょうがないといえばしょうがないねんけどな」

「しかしチーム構成を見るとリケルメがいたころに比べて、つらい部分が多いな」

「それでもチャンピオンズを戦いながら、リーガでチャンピオンズを狙える位置にいるというのは見事なもんやで」

「成績だけでなく、ピッチ上では苦労しながらもきちんとボールをつなぐサッカーをしている」

「ペレグリーニは偉大であると」

「そういうまとめかね」

「あかんか」

「あかんことないけど」

「ならええわ」

「ところで、この試合で1つ思ったんやけどな」

「なんや」

「ペレグリー二は苦労するのがわかっていて、サッカーをプレーすることを主眼にチームを組んでるわけや」

「そうやな」

「一方のバレンシアのエメリは金も選手もありながら、教科書から抜け出てきたような身も蓋もないカウンター+セットプレーのサッカーをするわけや」

「理論派やな」

「はたして、どっちにしたところで結果は大して差はないから、それなら少しでも世の中が面白くなる方向に向かって欲しいと思うわけやけどな」

「言いたいことがわからんのだが」

「この試合、前半の始めの方がバレンシアで、後半になるほど差がなくなったやろ」

「そうやな」

「それはバレンシアは組織による守備と攻撃を重視していて、時間がたつほどそれを保つ体力が切れて不利になっていったわけや」

「それは1つの理由やな」

「ビジャレアルの方はきちんとボールをつなぐ技術を重視していて、そういう選手を揃えて、そういう訓練をしている」

「それがどうした」

「技術も時間の経過とともにそのレベルが落ちるものだが、その落ち方は体力よりは少ない」

「疲れて動けなくなる度合いより、疲労による技術の劣化の方が少ないということか」

「それを概念図にすると次のようになる」

「これはなんや」

「チームのパフォーマンスを体力+技術で表したものでValがバレンシア、Vilがビジャレアルで元気な時と疲れた時について描かれている」

「それはいいとして意味がよくわからんわけや」

「元気なうちは体力に頼る部分の大きいバレンシアの方が有利だけど、疲れると体力がごっそり減って、技術に頼る部分の大きいビジャレアルと同じようなパフォーマンスになるとうことを表してる」

「グラフの減り具合は、どうやって決まるんや」

「体力は比で減る。この場合だと両者半分になる。技術は差で減る。この場合だと両者同じ量だけ減っている」

「また怪しいモデルを」

「言いたいことは、疲れた時を考えると両方たいして変わらんということや」

「でもそれやったら前半上に行ける分、バレンシアの方が有利やろ」

「そう思うやろ」

「なんやひっかけか」

「そこに士気、つまりやる気やモチベーションの高さというのを加えると下のようになる」

「わかったようなわからんような図やな」

「選手の根本にあるやる気は、疲労により変化しないという考え方やな」

「何でバレンシアよりビジャレアルの方が士気が高いのかね」

「そりゃお前、選手にとってどっちのサッカーをやってみたいかを考えたら当たり前のことやろ」

「そんなアホな」

「息をひそめて守りを固めて窒息するようなサッカーより、相手と切り合う心意気を持ったサッカーの方が大抵の選手にとってやる気になるやろ」

「イタリアは違うかもしれんで」

「ここはスペインや」

「そうやけどな」

「おまけに疲れた状況で、自分達にとって悪い事態が起こった時にどうなるかを考えると次のようになる」

「バレンシアの士気は減って、ビジャレアルは増えるのか」

「例えば、0-0で来ていて75分に失点した場合、ひたすら守備をしていたバレンシアはがっくりくるだろうし、そこからの反発力にしても最初から点を取る気でいるビジャレアルの方が強かろうと思うわけや」

「それはあるかもわからんな」

「それやこれやを考えると結局、世の中最後は大して変わらへんのやから、ごにょごにょ理屈をこねんと初めての人が見ても面白いサッカーをやればええのにという話や」

「まあ上のモデルが正しい根拠が何もないのだけが弱点やな」

「それは話が逆や」

「何が」

「世の中そんなもんちゃうかという話が先にあって、それを視覚化するために適当なモデルをでっちあげただけやから話が逆や」

「それにしても極論やな」

「金のことを考えても、そうやと思うけどな」

「大金がかかってるからこそ危険を犯さず、石橋を叩いて行かなあかんのやろ」

「それが間違いでクラブも企業やねんから金を稼がなあかん、金を稼ぐには商品を売らなあかん、売る商品は試合なんやからそれに魅力がないとあかん、

 魅力というのは一つに初めての人が見ても面白いサッカーをする、ということやと思わんかね」

「そうきたか」

「放映権料と広告スポンサー料で食ってるようなもんやから、これからはコンテンツの魅力を高めていかんと生き残っていけへんと思うで」

「何か、どっかで聞きかじった言葉を並べてるだけやろ」

「ようわかったな」

「それにカウンター+セットプレーはサッカーの最適解の一つやから、それを否定することはできんやろ」

「このタイプのチームの恐怖はバレンシア対バレンシアになったときで、両方リスクを犯さないなら、何とも言えない試合になる」

「そうかね」

「さらに言えば、こういうサッカーだと監督がずーっと選手の尻を叩いていなければいかんようになるから、エメリも擦り切れてしまうのではないかと思うわけや」

「それは今後見ていかんとわからん話やな」

「そうやけどな」

「そんなことよりこの試合を見て、ふと下の配置が思い浮かんだんやけどな」

「アホというか何というか」

「面白いやろ」

「アホほどマニアックなだけやな」

「はたしてこれらの選手に共通することは何か」

「おわかりになる方は」

「重度のリーガマニアかと」

 ・

 ・

 ・

「さて」

「正解は全員アストゥリアス人であるということやな」

「アストゥリアスというのはスペインの北の海岸線の真ん中西側にある」

「オビエドとかがある地方やな」

「何でそんな想像が浮かんだんや」

「何か共通項があるような気がせんかね」

「とりあえず、みんな働き者であるということやな」

「マークをすれば最後まで外さないし、味方がピンチと見ると足がつっても反吐が出ても助けに戻る」

「話がきたないな」

「おまけに両足とも利く選手が多い」

「カソルラ、ルイス・エンリケのレベルは非常に高いし、ビジャもそうやな」

「そんなところで、ふと気になったわけや」

「サンプルが少ないから、何とも言えんところやけどな」

「その辺りがどうかということも考えつつ」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「ご機嫌よう」

「今回の個人技編はこちらにありますので」

「よろしければそちらもどうぞ」


【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら

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