変形と初動


前回、動きを分割することによって無駄な勢いが抑えられることを見た。

ここでは別の特徴を見る。

次の動きは前回も見たものである。
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踏み切った直後の右足と地面との間隔に注目する。
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足の裏と地面はそれほど離れていない。

この後、着地までの動きは次のようである。
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右足が外側へ動く。

踏み切りにおいて右足は地面に近い。
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地面と近いということは、着地までの時間が短いことを意味する。

一般的に短い時間では小さな変化しか生じない。

しかしこの後、次の変形が実際に生じる。
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おそらく踏み切り直後の状態から予測される時間的余裕に比べて、より大きな変形が起こっている。

次に別の例を見る。
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踏み切りでの姿勢は次のようである。
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ボールの大きさと比較しても、左足はそれほど地面と離れていない。

その後、次の変形が起こる。
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左足がかなり大きく内側へと動く。

ここでも踏み切り直後の状態から予測される時間的余裕に比べて、より大きな変形が起こっている。
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このような変形が可能な理由は次のように考えられる。

空中にあるものは、支えを外すと下に落ちる。

落下の途中に地面があれば、そこで落下が止まる。

上と同じ動きにおいて変形を加える。

この変形が行われた場合、着地までにより時間がかかる。

これは空中での変形が体内部の力により引き起こされることが関係する。
体内部の力を用いた変形は重心の落下に影響を与えない。

よって重心は変形がないときと同じに落ちる。
一方で変形により地面に接する部分が持ち上がる。

これにより真っ直ぐなものと同じ時間が経過しても接地しない。

このため、より大きな変形を引き起こす時間的な余裕が生まれる。

これが踏み切りの段階で地面との距離がわずかであっても、大きな変形を引き起こすことができる理由だと考えられる。
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空中で体内部の力を用いた変形を起こすことにより、より大きな変形を引き起こすことができる。
これは分割された動きの持つ1つの特徴である。

このことは、いくつかの利点を持つ。

1つは無駄な勢いを、より広い範囲で防ぐことができる点である。

もし体内部の力を用いた変形で足を少ししか動かすことができなければ、遠い着地点に向けては直接飛ばなければならない。

前回、このように直接飛ぶことは無駄な勢いを生み、無駄な労力を生むことを見た。

しかし体内部の力を用いて足を大きく動かすことができれば、より遠い着地点に対しても直接飛ぶ必要がなくなる。

これにより無駄な勢いを出さずに動くことが可能になる。
より大きな変形が可能であることは、より広い範囲で無駄な勢いを防ぐことにつながる。

もう1つの利点は初動にある。

わずかな踏み切りで大きな変化を生むことができれば、動きを起こす初期の動作が小さくてすむ。

それは次の例でも見られる。
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これは上へ踏み切り、そこから足を外に動かすものであった

この動きにおける高さの変化について見る。

地面についた状態から、最も高い状態までの高さの変化は次のようである。
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線を加えると次のようである。
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最も高い状態から、着地までの高さの変化は次のようである。
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線を加えると次のようである。
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全てを比べると次のようである。
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上に小さく動き、下に大きく動いていることがわかる。

動作の初期、上に動く動作は小さい。
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これは初動が小さいことに他ならない。

上に大きく持ち上げなくても踏み切りの後、体内部の力を用いて姿勢を変えることにより着地までの時間が伸びる。
このため上に大きく動く必要がなく、初動を小さく抑えられる。

初動が小さいことは、動きを起こしやすいと同時に起こした動きを相手に読まれにくい。
これはサッカーをプレーする上で大きな利点となる。

一般的に動作と動作をつなぐ場合、重心を持ち上げる必要に迫られることは多い。

しかし重心を持ち上げるという動作を、飛び上がるといった動作に解釈することは誤りである。
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この動作では大きく上に飛び上がっていることがわかる。
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このような飛び上がる動作をプレーの途中に挟むことは、問題が多い。

1つは大きく飛び上がるためには、大きな労力を必要とすることである。
もう1つは初期動作が大きくなるため、その後の動きを相手に読まれやすくなることである。

このような持ち上げは、可能であれば抑える方が良い。
これほど極端でなくても上への飛び上がり、もしくは飛び跳ねが大きい選手は多い。

例えば次のようである。
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次の3つについて高さを比べる。
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線を入れると次のようである。
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腰の高さを見ると左右でそれほどの差がなく、中央のものが上にある。

この動きを図で示すと次のようである。

前のものと比べると次のようである。

上の図であれば、左と右の変化にかかる時間は同じである。
違う点は最初の持ち上げの大小にあり、落ちる時間の大小にある。

この2つを比べた場合、左の方が初期の動作が小さい。
初期の動作が小さければ、少ない準備時間で動作を変えることができる。

これは状況に対する適応力を高める。

例えば次の図において画面左の守備者の動きに注目し、それに対する保持者の反応を見る。
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保持者はイン側への切り返しを行っている。

切り返しの動きは次のようである。
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この動きは分割されている。


地面
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中間
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空中
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踏み切りの前後で主要な動きが異なり、分割されていることがわかる。

この動きを引き起こす元となった守備者の動きを見る。

最初、画面左の守備者は左に動く
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この後、動きの方向が大きく変わる。
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上の3フレームで移動方向が横から前に変わっている。

守備者は横に動くと見せて方向を変え、素早く距離を詰めようとしている。

これを見た保持者は以下の反応を示す。
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相手の行動の変化に対し、適切に対応していると言える。

対応とは具体的にはイン側に切り返すことであり、その動作の初期、踏み切りまでの動きは次のようである。
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これを別の踏み切りと比較する。
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踏み切りまでの動きは類似しているといえる。

この後の動きは次のようである。
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左は足をそのまま前に出し、右は大きくイン側に動かしている。
異なる動きが行われている。

最終的な動きが異なるにもかかわらず、初期の動作は類似している。
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切り返すという動作において歩くとは異なる、特別な初期動作がほぼない、もしくは少ない。
これは切り返しの予備動作が小さいことを意味する。

予備動作が小さければ、短時間で動作を起こすことができる。

短時間で動作を起こすことができれば、相手の変化に対して適切に対応することが容易になる。
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予備動作の小さい初動の小さな動作は、状況の変化への対応という点で優れている。

この初動の小ささは、動作の初期における上への持ち上げが小さい点に支えられている。

以下の3つにおいて高さを比較する。
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線を入れる。
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腰、胸の高さの変化を見ると上への移動が少なく、下への移動が大きい。

この持ち上げの小ささが初動の小ささを支えている。

小さな持ち上げでも、体内部の力を用いて弧を作ることで着地までの時間が伸びる。

これにより大きな変形が可能になる。

動きを分割することは、動作における無駄な勢いを抑制する。
動きを分割することは、小さな初動で大きな変化を引き起こすことを可能にする。

以上のことはサッカーをプレーする上で利点が大きい。

次も分割された動きの特徴について見る。


【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら

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