パター型で強く蹴る場合のメカニズム
ここではパター型で強く蹴る場合にどのような特徴があるかを見る。
思い浮かぶ範囲で二系統あり、またそのうちの一つには二種類が存在する。
系統としては体全体の移動と足の押し出しを利用するものと、筋肉力を最大限に利用するものがある。
種類として前者には主に体の平行移動を利用するものと、体の傾きを利用して足を押し出すものがある。
最初に体の傾きを利用して足を押し出す例を見る。
最後の図において白い円で囲まれているのがパスを出した選手であり、線でつながれているのが受ける選手である。
メカニズムとしては蹴り足と同じ側の肩を落とすことで体全体を後ろに傾け、それにより足を前に押し出す。
また蹴り足と同じ側の腰を後方下側に引き、逆の腰を前方上側に送る。
連続的に見ると下のようになる。
体を後方に傾けることで足を押し出す挙動が見られる。
この蹴り方は、膝を大きく横に開くことが苦手な選手にとっては蹴りやすい。
腰が蹴り足側を向くため下の図のように、膝との相対角度が小さくなるためである。
次に主に体の平行移動を利用するものを見る。
体をやや後ろに引き蹴り足側の腰を前に出し、反対側を後ろに引き、膝を連続的に前に送ることで体が前に出る勢いをボールに伝える。
これは、以下のページの図から本文筆者がフレームに起こした。
Soccer Science Laboratory
www.fslab.jp/biomech/bioimage/insidekick1.jpg ※リンク切れ
www.fslab.jp/biomech/bioimage/insidekick5.jpg ※リンク切れ
この腰の動きは、最初のものと反対である。
下の最初のものと比べると後方への傾きが小さく、平行に移動する傾向が強いことがわかる。
このように蹴る場合、膝の伸展を使って足を前に押し出すことができる。
しかしそれは正しいインサイドやインステップなどとは動きが異なる。
その様子は捻りなどの成分を抜いた場合、模式的に下のようになる。
踵とつま先でできるパター面を膝を伸ばすことで押し出す。
このような場合、下の黒い位置にボールがあることになる。
これに対し前に向けた膝の伸展を利用して蹴るトゥやインステップなどでは、オレンジの位置にボールがある。
この二つにおいて膝の伸展に使われる力(仕事)の時間変化は異なるはずである。
オレンジの位置にある場合、強く蹴る場合に、ある短い時間に大きな力を発揮させ足を加速させる。
しかし黒い位置にボールを置いた場合にこのようなことをすれば、足はボールに対して右側にずれてしまう。
このため、連続的に押し出すような力を加えることになる。
グラフで見た場合オレンジは明快な山、いわゆるピークを示すはずである。
逆に黒はそのような山がなく、ならだらかな頭の平らな振る舞いを示すはずである。
パター型は体幹、ムチ効果、膝の伸展、捻りなどの効果を上手く利用できないため強いボールを蹴りにくい。
それを補うため上のような形でより強く前に足を押し出している。
以上がパター型で強く蹴る場合に、体全体の移動と足の押し出しを利用するものの例である。
次に筋肉の力を最大限に利用するものを見る。
下の三枚において横に向けた膝を支点とし前に向けた足の内側を縦に振る、いわゆるパター型の動作が見られる。
またその動作を可能にするため、太ももを外側に捻る非常に強い力がかかっている。
このような形で強いパスを蹴ることは、おそらく常人には無理である。
無理にこれを行えば筋繊維や関節にダメージを受けるであろう。
以上の3種類がパター型で強く蹴ることの可能な動作であろうと思われる。
*3番目の例で同じような形のパスをより自然な蹴り方で通す例が次にありますので、興味のある方はご覧下さい。
【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら。