2008/06/15 ユーロ2008 Group League
トルコ 3-2 チェコ
監督 カレル・ブリュックナー
フォーメーション 1-4-1-4-1
「トルコが2点のリードを奪われて、75分から逆転勝ち」
「イスタンブールは狂喜乱舞らしい」
「そりゃそうやろな」
「先発はこう」
「赤い方がトルコで白い方がチェコ」
「前半は完全にチェコの試合だった」
「トルコは完全に相手のディフェンスにはまっていた」
「下の形やな」
「1-4-1-4-1で守られると中盤でのプレッシャーがきつい」
「よってボランチでゲームを組み立てるということが、非常にやりづらい」
「そうなると、それより下がったところからパスを出すことになる」
「しかし相手の中盤が多いので、間を通そうと思ってもなかなか隙間がない」
「それならサイドから行きたいところだが、そこも寄せが早いのでなかなか前に進むことができない」
「そうなると上の図の赤い矢印のように、どうしてもロングボールを蹴らざるをえない」
「この辺はチャンピオンズの決勝と同じ理屈やな」
「これはトルコにとって良くない」
「トルコのフォワードとチェコのセンターバックの高さの差は明らかで、全く勝ち目はない」
「実際に勝てなかった」
「こういう展開が続くと安全な場所、つまりバックス間のパス交換が多くなる」
「とりあえずボールはキープできるからな」
「そこでチェコは下の形で、意図的に長いボールを蹴らせに行った」
「図の場合、左にいるシオンコが鍵やな」
「トルコの左センターバックのセルベトに右から遅いパスが入るタイミングを狙って、ハカン・バルタへのパスを切るように寄せていく」
「そうなるとセルベトは前に蹴らざるをえなくなる」
「赤い矢印のパスを狙ってシオンコが動くと」
「そういうわけや」
「チェコは非常に上手くトルコを封じ込めた」
「そして攻めるときは下の形」
「長いボールをコーラーに合わせてフォロー」
「とにかくこればっかりやな」
「今回のチェコの弱点はカウンターができないことで、その原因は取ったボールを中盤でつなげないことにある」
「ボールを取ってさあ行こうか、という時に中盤でプレッシャーに負けてミスが出るから前にパスが出てこない」
「おまけにクロスカウンターをもらう」
「だからコーラーの頭頼みになってしまう」
「先制点もコーラーの頭やしな」
「それはこちらでご覧いただければと」
「ビデオではなくぱらぱら漫画に近いものですので、日本からのアクセスも問題ないかと」
「前半、トルコはほとんど手も足もでない状態でハーフタイムに突入する」
「後半開始からトルコは選手を代える」
「セミフ・シュンテュルクが下がり、サブリ・サリュオールが入る」
「後半はトルコの攻撃が明らかに良くなった」
「まず最初の要因は、左サイドのアルダにボールを集めたことだった」
「ボールを奪った後、なるべく早い段階で彼にボールを預け、チェコの体制が整う前にドリブルでしかけることが突破口になった」
「チェコの守備が崩れていない時でもグリゲラを背負った状態の彼にボールを入れ、そこでデイフェンスを引きつけてからの展開を狙っていた」
「これは一点突破型の状況打開法やな」
「アルダのキープ力とドリブル能力が鍵で、それがグリゲラに負けると一切攻撃が機能しなくなる」
「アルダが難しい役割をこなしたことで、トルコにチャンスが訪れるようになった」
「下がってくるシオンコが彼のドリブルに弱いことも幸いした」
「それはあるな」
「そして57分にトパルが下がり、カジム・カジムが入る」
「トルコは全体的に変な形やな」
「攻撃で左右のバランスをわざと崩して攻めるから、守備でも変な形になるんやな」
「攻撃で何を狙っていたかというと」
「下のようになる」
「カジム・カジムが右から中央に入りヤンクロフスキを引っ張る」
「その外からサリュオールがウィングのような位置まで上がる」
「このことによりプラシルを押し下げる」
「その結果、次のようなスペースが生まれる」
「右サイドにぽっかりと穴が空く」
「アルダを中央に入れてポラークを引き付けると、右に開くアルトゥントップを見る人間がいなくなる」
「こうなるとガラセクが対応しなければいけないのだが、中央もケアする分、どうしても遅れる」
「カジム・カジム登場後のチェコは、よくここが空いていた」
「アルトゥントップにやられたのはそれが原因やな」
「その具体例が下の絵に見られる」
「サイドからアルトゥントップがクロスを上げた場面やな」
「確かにフリーになっている」
「そうやな」
「ここでトルコの配置を見てみる」
「ふむ」
「上で説明したのとほぼ同じ形になっている」
「アルダがもっと右に来てるな」
「その時のチェコの配置はこう」
「プラシルとシオンコがいないな」
「この前にカドレツ、プルチェクと交代している」
「チェコの配置はトルコの計画通りか」
「正に」
「ここのクロスから、チェフが落球するわけやな」
「何というか」
「ちょっと信じられんな」
「ハイボールに対するチェフというのは非常に上手いはずやけどな」
「上手の手から水が漏れるともいうしな」
「こぼれたのはボールやで」
「わかっとる」
「右前に斜めに走るアルトゥントップというのは、トルコの攻撃の手品の種のようなもので1点目もそこから生まれた」
「連続映像はこちら」
「何にしても、作戦でいえばトルコの圧勝だった」
「苦しい状況を交代と作戦で打開したという意味では、ここまでで最高の試合やな」
「それに後半開始から左を攻めたのは、カジム・カジムを入れて右から攻めるための布石だった可能性が高い」
「もしそうなら、あまりにも見事で言葉がない」
「チェコはチェフの落球も痛かったが、後半途中から中盤が前に出られなくなったことも痛かった」
「誰もボールに詰めないもんだから、ディフェンスラインがペナルティーエリアにかかって、その11m程前に中盤のラインがあるほどに押し込まれる」
「その押し込まれた状態でも、3m前にあるボールに対して出ることができない」
「疲労があるにしても極端過ぎる」
「それにカウンターもできなかった」
「トルコの配置を見れば無茶攻めは明らかで、中央や右サイドに空いてるスペースをつけば、いくらでも前に行けそうな気がする」
「それが出なかったのは、中盤がプレッシャー下でパスをつなげないことと、コーラーがそこに流れてボールを引き出せなかったことが原因やな」
「動けなくなったコーラーを下げて、バロシュを入れたい場面やけどな」
「それができないのは前半に選手が怪我をして、交代を1枚使ってしまったことが大きい」
「39分にマテヨフスキーが下がりヤロリームが入った」
「後半動けなくなったのはコーラー、プラシル、ポラーク、シオンコで、この4人に対して交代枠が2つしかなかった」
「つらいとこやな」
「運もトルコに味方していたと言えなくもない」
「チェコはガラセクをディフェンスラインに入れてしまって、1-5-4-1のような形にした方が守りやすかったのではないかね」
「サリュオールが上がってくることを考えると、そうかもわからんな」
「何にしても、戦術的に非常に学ぶことの多かった試合というところで」
「また次回」