2008/09/10 ワールドカップ2010 予選
スペイン 4-0 アルメニア
監督 ビセンテ・デル・ボスケ
フォーメーション 1-4-4-2
「さて」
「スペインは4-0で勝って」
「今日も順風満帆」
「鏡のような」
「黄海を」
「するりするりとすべりけり」
「先発はこうやな」
「セナを凹ませた1-4-4-2」
「実にツートップ」
「まさにその通り」
「前回、おそらくワントップに収束するのではないかと書いた人間は、外した責任を取るべきやな」
「おそらく、ビジャとグィサの相性調査の意味があるのではないかと」
「前半は2-0のスペインリードで終わり」
「56分にグィサがシャビ・アロンソに代わる」
56分:グィサ → シャビ・アロンソ
「ワントップか」
「しかし65分にカソルラがボージャンに、74分にシャビがセスクに代わるとこうなる」
65分:カソルラ → ボージャン、74分:シャビ → セスク
「ふむ」
「見慣れぬ形やな」
「ボージャンを右のウィングに置いた1-4-4-2、ひし形だと見ていい」
「全体的に右に歪んでるけどな」
「対称性より選手の特徴と組み合わせを重視するのは、デル・ボスケの得意とするところである」
「この配置の意味を把握するのは、簡単な戦術問題になりますので」
「考えてみていただければと」
「状況はホームで2-0とリード、相手はそれまで1-4-5-1で守っていた」
「そんなところで、まずは先発から見ていこうかと」
「よかろう」
「最初は1-4-4-2」
「その特徴はというと」
「まず横からのクロスが入りやすい」
「ツートップの効能であり、このようなボールが良く見られた」
「困った時に単純にプレーできるという利点がある」
「その他にも次のような特徴がある」
「最前線ではビジャが左サイドに開きやすくなる」
「これは選手の特徴を活かすという意味では非常に良い」
「そのゾーンでボールを持ったビジャは非常に強力やからな」
「特にカウンターからは抜群の働きをする」
「サイドでは前回右だったイニエスタが左、右にカソルラが入っている」
「この配置ではサイドバックとの関係が問題になる」
「イニエスタはサイドでボールを持つと最後は中に切り換えす」
「縦には行かない、というか行けない」
「そうなると左のサイドバックが外からフォローする場面が多くなる」
「つまりカプデビラが上がるわけやな」
「前回のようにイニエスタが右から中に入れば、セルヒオ・ラモスが上がる」
「この2人を比較して上げるなら、セルヒオ・ラモスの方が圧倒的に良い」
「イニエスタ単体としては左の方がいいのだが、サイドバックとの関係を見ると逆の方が良い」
「スペイン代表として悩ましいところではある」
「もう一つ悩ましいのはイニエスタとシャビの裏の守備やな」
「今の代表はユーロと違って前からボールを追っていくのだが、例えば下の形で一つ守備が抜けるとピンチになりやすい」
「シャビ、イニエスタではスペースができた後、長い距離を速く走るという点で問題が出る」
「この形の方が、その穴は埋めやすい」
「1-4-4-2か、1-4-2-3-1か」
「はてさて」
「どうなるか」
「結局最後はワントップちゃうかと思うねんけどな」
「グィサとビジャの組み合わせは、トーレス、ビジャよりも上手くいきそうやけどな」
「ツートップと言えばこの試合の最後もそうやな」
「この形の意図は何か」
「というのが簡単な戦術問題だったわけですが」
「一番の狙いは下のようになる」
「右に開いたボージャンに長いボールを当ててボールをキープさせる、スピードをいかして一気に縦にぬけ相手のディフェンスラインを崩す」
「カウンターの種に彼を使うということが最も大きい」
「ボージャンの使い方としては後半、相手が前に出る段階でのカウンター要員ということになる」
「そこに長いパスを渡すことができる、シャビ・アロンソを合わせて使っている点は注目に値する」
「いくら前に出る選手がいても、そこに球を込める選手がいないと無意味やからな」
「これは以前にも紹介したサイドに開くならそこに斜めの長いボール、という手筋と一致している」
「デル・ボスケは選手をその特徴に合ったポジションで使うのみならず、組み合わせで特徴を発揮しやすい状態を作るのも上手い」
「選手を無理なポジションで使わないわりに、大きな組み換えを平気で行う」
「現実と目指す場所のすり合わせが非常に上手いんやな」
「だから様々な変更を行ってもチームが荒れることがない」
「安定感というのはデル・ボスケ最大の特徴であるな」
「ぱっと見は何もしてないようで、要所ははっきりと押さえてある」
「見事という他にない」
「そんなこんなで」
「また次回」