2026/06/25 ワールドカップ Group League プレビュー
ボスニア・ヘルツェゴビナ 対 カタール
予想される試合展開
今大会のここまでを「第1戦を引き分けた後、第2戦で退場者を出しながら大敗」という非常に似通った経路を辿ってグループリーグ最終戦を迎えた両チームが激突するゲームとなる。
2戦を消化した時点でいわゆる「二強二弱」の状態になっているこのグループB、 前回W杯までのレギュレーション(上位2チームが決勝進出)ならモチベーションが難しい状況になっていたかもしれない。
しかしグループ3位でも8/12チームが次のラウンドに進める今大会のレギュレーションにおいて、この勝負を制して「勝ち点4」のラインに到達することは大きな意味を持つこととなり、
生き残りを賭けた熱量の高い試合が観られることは期待してよいだろう。
注目ポイント
この一戦を観るうえでの要諦は、「どちらがボールを握るか(握らせるか)」に尽きる。
ボール保持のスタイルに強みをもつカナダとスイスが同組ということもあったが、ここまで両チームは圧倒的にボールを握られる180分間を過ごしてきた。
(ここまでのボール保持率は、ボスニア・ヘルツェゴビナはカナダ戦29.9%, スイス戦34.1%、そしてカタールはスイス戦28.8%,カナダ戦20.5%(!)である)
両チームがここまで2戦についてボールを保持「できなかった」と解釈しているか、あえて保持「しなかった」とみるか。
その解釈から生まれる修正を含め、立ち上がりにどちらがボールの保持権を持つかがゲームのあり方を規定するだろう。
ボール保持したときの得点への道筋だが、ボスニア・ヘルツェゴビナ側は両サイドのSH&SBの縦関係(左サイドはアライベゴヴィッチ&コラシナツ、右サイドはメミッチ&デディッチ)を軸にした
崩しからいかに中央によいボールを供給するか、さらにいえば両翼からの供給がうまくできている時間帯に中央で待ち構えるジェコがよいコンディションでプレーできているか、が重要となってくる。
カタール側についていえば、いわずもがな同国最大のタレントであるアフィフにいかに時間と空間を渡せるか、という点が重要になってくる。ここ2戦は全体的に後ろに重い試合展開となっていたが、
もしボールを渡された時どれほど3列目を含めた押上げが実現できるかに注目したい。
注目選手
ボスニア・ヘルツェゴビナ:アライベゴヴィッチ(Kerim Alajbegovic)
若干18歳、ドイツ生まれの若きアタッカー。
ボスニア・ヘルツェゴビナは、かつては共産主義体制における経済的必要性から、そして近年は紛争難民として、数十万人単位(というと日本人感覚だとそこまで多くない数に思えるが、
ボスニア・ヘルツェゴビナの人口がそもそも酸百万人強であることを考えればそのインパクトは想像に難くない)の移民が西欧や北欧にわたってきた““ディアスポラ”“の歴史がある。
このアライベゴヴィッチもそのようなルーツを持ちながらボスニア・ヘルツェゴビナ代表でのプレーを選択したひとりだ。
両足をうまく使えることで、自分からみて内側レーン/外側レーンの双方で発生した動きにうまく反応してパスを供給できるプレーアングルの広さがあり、
またミドルシュートや単騎での仕掛けを兼ね備えていることから、相手守備陣を悩ませる選択肢の多さを有している。
統計的データからボスニア・ヘルツェゴビナのここまでの2戦におけるパス・ネットワークを確認すると左SBのコラシナツ⇔左SHのアライベゴヴィッチ、
左ボランチのタヒロヴィッチ⇔コラシナツといった左サイドでのパス交換が多くなっている。
こういった左サイドでの循環をいかに効果的な形で発生させてアライベゴヴィッチの才を発揮させられるかが、ボスニアが流れをつかむうえでの分水嶺となるだろう。
伝統国イタリアがボスニア・ヘルツェゴビナ相手にPK戦の末敗北したW杯出場権を逃したとき、「若干20歳のピオ・エスポジトになぜ重要なPKを任せてしまったのか」という批判が
イタリア国内で巻き起こったが、その一方で18歳のアライベゴヴィッチはPO準決勝のウェールズ戦に続きPKキッカーを任され粛々とイタリアのゴールネットを揺らしていた。
その胆力含め、「ボスニア・ヘルツェゴビナの未来」を担う存在である。
カタール:ライェ(Issa Laye)
2ボランチのときは左ボランチを、3センターのときは左IHを務めるセネガル出身の守備者。
局面での粘りの利く彼自身のプレーにも注目したいが、特筆すべきはチーム全体における役割である。
攻撃時は基本4バックのような形をとるカタールだが、左側のハーフスペースを使われるような形になったときにはライェが柔軟に最終ラインに入って、5バックを形成する。
ただし(退場になってイレギュラーな状況となってしまったカナダ戦ではなく)スイス戦での振る舞いを観る限りでは、必ず5バック化が遂行されているわけではなく、
流れによって彼自身の判断に手綱が委ねられているように見受けられる。
カタールは前線のアフィフやエジミウソンの守備意識がお世辞にも高いとは言えず、力を上回る守備者を密に配置できない状況が多く出現する。
そういった局面においてライェのポジショニングに注目することで、カタールの守備面での「やりくり」の相貌を垣間見ることができるだろう。