2008/06/21 ユーロ2008 準々決勝 (1)
オランダ 1-3 ロシア
監督 マルコ・ファン・バステン
フォーメーション 1-4-2-3-1
「ロシアがオランダを破った」
「すごい試合だった」
「とにかくロシアの作戦面が凄くて、オランダは見事それに絡め取られた」
「ヒディングの罠に落ちたオランダ、という感じやったな」
「その辺を詳しく見ていこうかと」
「よかろう」
「何でいつも偉そうなんや」
「癖かな」
「先発はこう」
「オランダは予想通りで、ロシアは変な形をしている」
「そこに重大な意味があるんやな」
「オランダはイタリア戦で見たように、下のような構造をしている」
「エンヘラール、デヨングが中盤を支え、スナイデルとファン・デル・ファールトが長く展開する」
「ここでサイドに注目する」
「攻撃面だけを見ると左サイドが強く、右サイドの方が弱いことがわかる」
「ここに着目し下のような配置を引く」
「その意味は左に壁を作り、オランダのボールを右に流させることにある」
「具体的には左にボールがきたらサエンコが素早くジオに詰め、セマクがその裏をカバー」
「アニュコフはスナイデルをマンツーでマークする」
「そうすると下の四角の部分が空く」
「そこをわざと空けるわけやな」
「ジオがボールを持った場合の配置は次のようになる」
「オランダにとって、この状態から左サイドを崩すのは難しい」
「よってバックパスか横パスが入った後、右に流れる」
「右に流れた後、どのように対応するかというと次のようになる」
「空いたスペースにはブラルーズが入ってくる」
「これに対し17番のズリアノフは中へのパスを切り、18番のジルコフが上がって対処する」
「もしジルコフがカイトのマークなどで出ることができない場合は、ズリアノフがサイドに出る」
「次の写真にその様子が見られる」
「黄色で23と書いてあるのがブラルーズやな」
「その前に18番のジルコフがいる」
「ロシアの中盤はサイドに流れず、中央を固めているのがわかる」
「次の写真は右センターバックのオーイエルがボールを持った場面で、周囲にロシアの選手はいない」
「そこから縦にロングボールが出た後の図が下」
「この場合、18番のジルコフが中に入った関係で、17番のズリアノフがサイドに出てブラルーズを追っている」
「オランダが図のように、ジルコフとズリアノフでブラルーズに対処していたことの一端がうかがえる」
「しかし上の2人がサイドのブラルーズをマークできない状況もある」
「そらあるわな」
「その時の守備はどうするかというと」
「アルシャフィンがマークする」
「アルシャフィンがサイドに出て、ブラルーズにボールが渡りそうなら共に下がり、味方が回収しそうなら前に出てカウンターの種になる」
「アルシャフィンが引いた場合は、下の写真のようになる」
「しかし盛大に右サイドが空いている」
「守備の側は、ボールと逆サイドの方に人がいるという不思議な図やな」
「ここにもオランダの狙いの一端が表れている」
「このような守備方法は、ブラルーズが攻撃的に素晴らしい選手であった場合、採用するのは難しい」
「例えば、ブラルーズがフリーの状態でどこにでもボールを落とせる選手であれば、それだけで守備は危機に陥る」
「ゼ・マリアのような選手やな」
「わかりにくい例えやな」
「ドリブルが得意であっても非常に困る」
「ボジングワやシシーニョのような選手であれば、サイドを突破されて守備どころではなくなる」
「例えば下の場面で23番が上手いドリブラーだとすると、ディフェンス的には終わった状態に近い」
「周囲にスペースがあり過ぎやからな」
「前半、オランダが苦しんだのは、下の守備に見事にはまってしまったことが原因だった」
「いわゆるトラッップディフェンスやな」
「そしてボールを奪われた後は、右のスペースに送られることで苦しんだ」
「例えばアルシャフィンが持ち込むと、中央より左にいるパブリュチェンコがちょうどファーからニアに動く形になり、ディフェンスの裏を取りやすい」
「その辺りも上手くできている」
「前半はロシアの手にのせられてしまったオランダ」
「後半、黙っているわけにはいかない」
「そこでどのような手段を取ったのでしょうか」
「というのが軽い戦術問題なわけですが」