2008/04/23 UEFAチャンピオンズリーグ 準決勝1st Legion
バルセロナ 0-0 マンチェスター・ユナイテッド
監督 アレックス・ファーガソン
フォーメーション 1-4-4-2
「先日のリバプール対チェルシーに続いて、こちらも引き分けに終わった」
「向こうは1-1、こちらは0-0か」
「残念ながらバルサは、ホームで得点することができなかった」
「そのかわりといってはなんだが、アウェーゴールを失ったわけでもない」
「それは心強い点ではある」
「とりあえず先発はこうやな」
「この形から、マンチェスターはとにかく守りを固めてきた」
「ディフェンスライン非常に低かったな」
「下の感じか」
「バルセロナがボールを持つと、全体を下げて最終ラインはペナルティーエリアの前、5.5m付近に形成されていた」
「いわゆる半月マークの少し上辺りやな」
「そして中盤の4人のラインはその8mほど前」
「これは守備を敷くゾーンとしては一番下がった形になる」
「これ以上下げると、ペナルティーエリアにかかってしまうからな」
「例えば普段のリバプールだと相手にプレッシャーをかけていくのがハーフライン付近で、最終ラインはピッチの広さにもよるけれども、ペナルティーエリアから15m以上離れた場所にある」
「マンチェスターとしてはバルサのフォワード陣、エトーとメシが裏に出るスペースを与えたくなかったんやろな」
「上手いことラインの裏にパスを落とす選手も多いしな」
「そして、引いて4-4のラインを作った前でテベスがトゥレをマークする」
「半分マンツーマンのような形で、まずトゥレに張り付いてパスレシーブを邪魔した後、パスコースを切りながらボールに詰める形やな」
「そしてその前ではクリスティアーノ・ロナウドが一人ぼっち」
「基本10人で守ってカウンターからロナウドの一撃を狙う、実にわかりやすい作戦やな」
「しかし最近の傾向からして、ここまでべったり引くチームは珍しいで」
「確かにな」
「それを崩す立場のバルサは、今シーズンで一番ボールが回っていた」
「下の形か」
「まず点線で囲まれたゾーンで実によくボールが動いた」
「ユナイテッドが引いていたから、そこにスペースが空くのは当たり前といえば当たり前やな」
「かつ左サイドにいたイニエスタがしばしば中央に入ることで、守備のバランスを崩していた」
「相手の方は、ゾーンをまたいで動くイニエスタを捕まえきれてなかった」
「そしてマルケスからゾーンの間を突くパスもよく決まっていた」
「プレッシャーもかけられてなかったしな」
「それにしても彼はもともと組み立ての上手い選手なのに、今シーズンは変なミスが多かったやろ」
「それはそうやな」
「久しぶりにさばくマルケスが戻ってきて非常に良い具合だった」
「ただし彼を使うと、クリスティアーノ・ロナウドに対してスピードのミスマッチが生じるのが問題ではある」
「とはいっても、バルサは後ろからのパスが安定しないと力が半減するから彼は大切やな」
「そういえば後ろからのパスと言えば、ミリートがマルケスに頼りっきりだったのが気になるところではある」
「彼は緊張しいやからな」
「緊張しいというか、プレッシャーのかかる状況になればなるほど絶対にミスを犯さないようにプレーするから、パスがどんどん縮こまっていく傾向にある」
「一般的に組み立てが上手いという評価を受けているけど、その点が不安なところやな」
「サラゴサでも、隣にセルヒオがいると任せっぱなしの場面が多かったしな」
「この試合でも開始早々ものすごいハンドでPKを取られた」
「あれは緊張と関係あるのかね」
「ないのか」
「ちょっと意味のわからんプレーではあったけどな」
「ちょっとどころじゃないやろ」
「下の感じやな」
「写真は前回に引き続きエル・ムンド紙のものだが」
「ほんまに、ものすごいハンドやな」
「これが開始1分という恐ろしさ」
「しかし退場にならんでよかったと思うで」
「ボールが枠に飛んでたら確実に退場やな」
「何にせよマンチェスターにPKが与えられて、キッカーはクリスティアーノ・ロナウド」
「絶体絶命の大ピンチ」
「守るはバルデス」
「コースを読んで右に飛ぶ」
「ところがボールは無常にも左へ」
「これはいかんと思いきや」
「枠を外れてあらぬ方向へ」
「バルサは九死に一生を得た」
「これは大きかった」
「正に大きかった」
「点数が入らなかったこともそうだが、クリスティアーノ・ロナウドをのせなかったという点でも大きい」
「今の彼に気分良くプレーされたのでは止めようがないしな」
「結局0-0で進み、61分にバルサが先に動く」
「メシを代えてボージャンか」
「ボージャンが左、イニエスタが右に入る」
「これはどうだったかという話やな」
「相手を崩す最初のとっかかりを作っていたのは左からのイニエスタだっただけに、それを移動させたのはどうかということやな」
「ボージャンを右、イニエスタを左でよかったはずや」
「その15分後には下のようになる」
「デコが外れてアンリが入り、左にアンリ、右にボージャン、イニエスタは中盤に下がる」
「デコは久しぶりの実戦にもかかわらず十分な働きだった」
「ただ、ここで注目なのはむしろマンチェスターの方やろ」
「右のルーニーが外れてナニが入った」
「それと同時にクリスティアーノ・ロナウドの動きが変化していて、完全にマルケスをマークするようになった」
「この形のバルサ潰しの常道といえば常道やな」
「その前までとは明らかに守備での位置取りが変わっている」
「最終的に、このまま得点は動かずにタイムアップ」
「0-0のスコアレス・ドローで終わる」
「結局どうやったんやろな」
「何が」
「どっちが良い試合をしたんやろな」
「それはマンチェスター・ユナイテッドやろ」
「そうなんかね」
「最初に見たように徹底的に守り倒す予定でやってきて、本当に守って帰ったわけやしな」
「おまけにバルサにほとんど決定的なチャンスを作らせなかった」
「イニエスタのヒールからエトーが抜け出した場面と、ブラウンの大ミスからこれまたエトーが抜け出した場面かね」
「前者はシュートがそれ、後者はキャリックの素晴らしいディフェンスでことなきを得た」
「ちなみに、この試合でのバルセロナのオフサイドは0回」
「まあ、あれだけ引かれたら飛び出そうにも飛び出せへんしな」
「裏のスペースを消して、ペナルティーエリア前のゾーンで激しく潰して、決定機を作らせないというユナイテッドの思惑通りで、バルサはボールを持ってエリアの周辺までは迫るがその先に進めなかった」
「名を捨てて実を取る作戦が見事に遂行されたということやな」
「これで第二戦はどうなるかという話なわけだが」
「どうやろな」
「実は最近のバルサは、引いた相手よりも前に出てくる相手の方が苦手なだけに、予断を許さない状況やな」
「相手が攻めてくるとサイドバックを上げ過ぎる穴と、中盤のスペースを突かれてすぐにガタガタになる癖がある」
「リーガで、いわゆる下位チームに勝ちきれないのもそこに大きな原因がある」
「相手が出て来た時にカウンターできっちりしとめられたらええねんけどな」
「これまでは、それができないからこそ非常に苦労してきた」
「はたしてその辺りがどうなるか」
「注目というところで」
「また次回」