ショートコーナー編
「今日のテーマはショートコーナーやな」
「ショートコーナーというのは次のようなものを指す」
「普通の直接ペナルティーエリアに入れる赤い線よりも手前に短く出すから、ショートと呼ばれるわけやな」
「そうやな」
「例えば実際にはこんな感じかね」
「何か線がごちゃごちゃしておるな」
「いきなりこれを見ても、何のことやらわからんな」
「見方がわからんとどうにもならんしな」
「基本的に青い丸が攻撃、赤い丸が守備を表している」
「中央に黒い五角形が見えるのはボールやな」
「とりあえず、図を見やすくするために守備を削るとこうなる」
「ほうほう」
「少しは見やすいやろ」
「点線がボールの動き、実線が選手の動きを表しているわけか」
「ちなみに、ボールの動きだけを取り出すとこうなる」
「ペナルティーエリアの手前に出された後、ファーポストの前にセンタリングが上がって、それをさらに折り返してゴールが決まっている」
「ちなみにあれやな」
「なんや」
「少し見にくいけど、一番下の点線が青くなっているのは下のような意味がある」
「ボールの青い点線と選手の青い実線はシンクロしていて、ボールがその軌道を動く間に選手がその道筋を動いたことを示している」
「この場合ショートコーナーを受けた選手がボールを受けてから、センタリングを蹴る瞬間の選手配置が記入されているわけやな」
「ここからセンタリングが上がった後の動きは次のようになる」
「ボールが上のように動く間に、選手が矢印のように移動する」
「そしてセンタリングに味方選手が触れた瞬間の配置が、薄い水色の丸印で表されている」
「濃い水色と薄い水色の丸は、それぞれ同じ時間の選手配置を示すわけやな」
「いわゆるスナップショットというやつやな」
「上の図の後の動きは下のように表される」
「上側の薄い水色の選手が下にパスを送り、下側の薄い水色の選手がゴール前に飛び込んで決める形か」
「ついでに言うとペナルティーエリアの上の”ヘディング”という文字は、最後の選手がどのようにゴールを決めたかを表している」
「そうか」
「そして、これらを全部重ねると次のようになる」
「ショートに蹴られたボールに対して、中央の選手が一度ファーに下がってからファーポスト前に出て折り返し、それをニア側に走り込んだ選手がヘディングで決めるという話やな」
「そして上の図の濃い水色の時の守備選手の配置が、下の図になる」
「敵味方を重ねると」
「次のようになる」
「これを見るとショートコーナーが蹴られた後、ディフェンスのマークが甘くなっていることがよくわかるな」
「そうやな」
「図の見方は以上かね」
「実はあと1つ注意点がある」
「なんや」
「これからの話では上側、つまり攻撃側から見て左サイドから蹴られたコーナーは、反転させて右サイドから蹴られたものとして扱う」
「どういうことや」
「例えば下のようなキックがあるとするやろ」
「ほうほう」
「これを次のように反転させるんや」
「ピッチの縦の中心軸に対称にひっくりかえすわけか」
「こうしておけば左から蹴られたものも右から蹴られたものも同じように扱えるので便利であるし、反転によって何かを見失う危険は小さいだろうという話だ」
「ほほう」
「ショートコーナーのデータは全部で6つあり、下のようになる」
「この中からパターンなり、何か役立つ情報なりを見つけ出すわけだが」
「時間のある方は6つを見比べた後に、以下を読まれると面白いと思われますので」
「ぜひお試しを」
「時間のない方は、即刻下を読まれても面白いと思われますので」
「こちらもぜひお試しを」
「というわけで」
「分析に入るか」
「よかろう」
「ここでは3つのパターンに分けてみようと思う」
「どの3つや」
「まずはこのパターン」
「ショートから横、ゴールエリアとPKスポットの間に入れて直接シュートを狙う筋か」
「これには次の2つが該当する」
「このパターンは理屈に合ってはいるな」
「それはそうやな」
「上の図で最終的に狙われるゴールエリアとPKスポットの間というのは、コーナーキック全般においてよく狙われる場所で、一番得点につながりやすい場所でもある」
「つまりこの場合は一度ショートに蹴って相手の虚を突き、その上で最も点になりやすい場所を狙っていることになる」
「最初のショートを奇襲とすると次のセンタリングは正攻法で、いわば奇の正と呼べるような攻めになっている」
「それはなんとなくかっこええな」
「かっこいいか?」
「まあなんにしても次のパターンはこうなる」
「該当するのは次の2つやな」
「これはパターン1よりも大きく戻してファーポストの前、そこからニアポストの前に折り返してゴールを決めるパターンになる」
「これもまた理にかなってはいる」
「そうやな」
「まず大きく戻すことで、ディフェンスの注意を前に向ける」
「前に向いたところで、そのとき死角になるファーサイドの奥を狙う」
「ディフェンスがそちらにつられたところで、その裏にボールを落とす」
「常に相手の裏へ裏へとボールを送り込むわけやな」
「そういう意味では最初のショートコーナー、次のファーポスト前へのセンタリング、最後のニアサイドへの落とし、すべてが正攻法ではなく奇襲に近い」
「奇の奇の奇か」
「微妙に語呂が悪いな」
「まあいつも相手の裏を狙っているだけに、決まれば点になりやすい」
「ただしパスを多くつなぐ必要があるので、その分ズレも大きくなりやすくミスも増える」
「そこが難しいところやな」
「確かに」
「そして3番目に次の2つが残る」
「これは何じゃ」
「何じゃとは何じゃ」
「パターンが見えんのだが」
「パターンが見えないというパターンだ」
「お前は一休さんか」
「というより、狙った形とは違う形で点が入ったパターンやな」
「1つは相手が触ったこぼれ球を決めて、もう1つは味方の競ったヘディングがこぼれたところを決めているということか」
「そういうことや」
「となると最初のと2番目のパターンだけ覚えておけばいいということか」
「2006-2007シーズンの後半から得られたデータだけを問題にすれば、そういうことになる」
「まず最初はこう」
「攻撃がこのように狙えば点に入りやすいというだけでなく、守備はAのゾーンに蹴られたらBのゾーンを警戒すべきだということがわかる」
「観る側にとっては、そこが注目すべき場所になるわけやな」
「そして2番目のパターンこう」
「攻撃がこのように狙えば点に入りやすいというだけでなく、守備はCのゾーンに蹴られたらDのゾーンを警戒すべきであり、Dに蹴られたらEを警戒すべきであることがわかる」
「観る側にとっては、各ゾーンに素早く目を走らせれば通っぽいわけやな」
「ボールの動きに対して、それと関連の深いゾーンを知るというのは先読みに非常に役立つというところで」
「今回はこの辺りで」
「また来週」
「その前にちょっと質問があるんやけどな」
「なんや」
「これらの情報を元に独自のショートコーナーの設計などをやってみると、解説という意味からしてより良いと思わんか」
「ショートコーナーというのは、オープンやクローズからの変化というかバリエーションとして使われることが多いので、設計はその2つが終わってから試みるのがいいのではないかということやねんけどな」
「さよか」
「そういうわけで」
「また次回」
「オープン編にて」
「ご機嫌よう」