捻りを加えたインサイドでは、どの部位を使って蹴るべきか
インパクトの瞬間、足の内側のどの部分でボールに触れるべきかという問題は興味深い。
簡単のため膝頭とつま先を線で結び、それを軸として足を捻る状況を考える。
この状況では、かかとや足の内側は円を描くように動く。
模式的には下のように表れる。
赤い棒が、黒い棒の位置まで動く時を考える。
その部分を抜き出したのが上の右側の図である。
より外側の部分を示す赤い矢印は、内側の青い矢印よりも長い。
長いということは、赤い棒が黒い位置に動くまでの間により大きく動いたことを示している。
つまり棒の外側、回転の中心から遠い部分の方が速く動いていることを表している。
これらの話についてより正確なことを知りたい人は「剛体の回転」で調べるか、大学一年の力学の教科書を読まれるとよい。
これとスパイクを合わせると次のようになる。
つま先を軸とするので回転の中心をそこに合わせる。
こう見るとかかと部分の方が速く動くことがわかる。
速く動く部分をボールにぶつける方が速いボールを蹴ることができるわけだから、捻りを最大限に利用するためにはかかとでボールを蹴ればよいことになる。
さらには重さもその部分に集中しているわけだからなおさらである。
しかしスパイクの形状を見るとその辺りがよくわからない。
かかとの部分には丸みがある。
丸みがあるということはトゥと一緒で、方向が安定しないように思われる。
それならかかとに近い位置で、ボールを捕まえやすい部分としてピンクの面がある。
よさそうではあるが斜めになっているので制御が難しそうである。
となると多少捻りによる効果は犠牲にしても、いわゆるインサイドである空色の部分がよさそうにも思われる。
正しいインパクトの面がどこであるか、というのは重要な問題だがテレビの映像から理解するのは難しい。
その一つの理由はインパクトの瞬間の足が消えていることが多いからである。
この点に関しては前々から疑問に思っていたが、いまだに解答が得られていない。
どなたか良い文献をご存知の方がいらっしゃればお教えいただきたい。
上では簡単のために下図の白い線を軸にして足を捻ることを考えた。
実はこの動きは、実際に技術として用いることができる。
下のような場所にボールを置き、図のように捻れば守備者の左を抜くことができる。
つま先に少し体重をのせ、かかとを前に踏み込むようにすればよい。
これは強く蹴ることはできず、出せる範囲も狭い。
しかし予備動作が一切なく非常に小さな動きで出すことができるため、相手にタイミングを読まれる心配がない。
3mほど先のスペースに遅いボールを出せばよい、という状況では十分に実用になる。
この技を知らないディフェンスは、パスが出たときどうやって蹴られたかがわからず怪訝な顔をする。
ぜひ一度お試しいただきたい。