ベルギー 1-2 スペイン
監督 レネ・ヴァンデレイケン
フォーメーション 1-4-1-4-1
「スペインは連勝街道まっしぐら」
「恐ろしいほどに順調である」
「勝ったとはいえ、この試合は非常に厳しいものだった」
「先発はこう」
「スペインはいつものメンバー」
「ベルギーは1-4-1-4-1」
「前回のエストニアと同様やな」
「やはり1-4-4-X系のシステムに対しては中盤の守備が抜群に堅いから、スペインを押さえようと思うとこの配置になる」
「守備においてはフェライニ、ベルトルゲンがシモンスのカバーを背景に、セナ、シャビを非常に近い位置で押さえ自由を与えなかった」
「ソンクもフアニート、プジョルを捨てセナ、シャビをマークする場面が多かった」
「攻めにおいてはコンパニーからのパスが良く、また奪ったボールを直接前線に出さず一度後方でキープした後、長く展開する流れがよく効いていた」
「コンパニーはチップキックで、フェライニの胸によく合わせていた」
「フェライニは背が高くて浮き球の処理が非常に上手く、キープした後に展開もできる」
「調べたところ194cmで、エバートンへの移籍金額はベルギー人史上最高額らしい」
「さもありなんというところやな」
「ベルギーでは攻撃においてやはりフェライニ、バンデン・ボーア、コンパニーが目立つ」
「フェライニは低い位置から組み立てた後、前へ出てボールを受けてはさばく」
「バンデン・ボーアはサイドでのドリブルからのクロス」
「コンパニーは最終ラインからの組み立て」
「ボールを回収したコンパニーは、スペインのプレスをいなしながら正確につないでいた」
「おまけに7分のベルギーの先制点も彼のアシストだった」
「今、右のコーナーキックから逆サイドのコンパニーにボールがこぼれる」
「画面上の方で、ディフェンスと向き合っているのがコンパニー」
「ちなみに相手はセルヒオ・ラモス」
「縦に抜けるフェイントから」
「マイナスへ戻す」
「ここでセルヒオ・ラモスとの押し合いに勝ち体を前に入れる」
「そしてクロス」
「ソンクの浮かせたヘディングは逆サイドにふわりと収まった」
「いやまあ」
「おそろしい」
「ラモスの逆を取りラモスに競り勝ち、正確なクロスを上げるセンターバックというのは恐ろしいな」
「驚異的な性能としか言いようがない」
「そうは言っても、セルヒオ・ラモスは怪我の影響で動きはそんなに良くないんやけどな」
「それを割り引いても凄いで」
「そうやけどな」
「何はともあれコンパニーのボール扱いに対する自信というものは、後方からの組み立てにおいても非常な役割を果たしていた」
「ベルギーの攻撃において目立つのは、下の図で青く囲まれた3人」
「逆の意味で目立つのは、トップのソンクと左のデュフォーやな」
「ソンクはワントップとしては長いボールのキープに難があり、デュフォーは相手の正面を向くまでは良いが、そこから仕掛ける際に自分でバランスを崩すため有効なプレーができない」
「フェライニを一つ上げて、1-4-4-1-1のような形の方がソンクはやりやすいやろな」
「それをやると中盤の守備が甘くなるから難しいところや」
「ベルギーは1-4-1-4-1で守備を固めた状態で、セットプレーから先制して願ったりかなったり」
「スペインとしては苦しい流れの中、16分にアクシデントが起こる」
「トーレスが負傷退場」
「変わってセスク・ファブレガスが入る」
16分:トーレス → セスク・ファブレガス
「1-4-4-1-1でセスクが後ろ、シャビが前」
「その配置はエストニア戦と同じ」
「これ不思議やな」
「何が」
「別にシャビが後ろでセスクが前で良さそうなもんやろ」
「そらそうやな」
「その中であえてセスクを後ろ、シャビを前にする理由というのは気にならんかね」
「なんやろな」
「色々理屈は考えてみたもののどうも絵空事にしかならないので、ぜひデル・ボスケ本人に聞いてみたいところやけどな」
「興味は引かれるところやな」
「ちなみにこの交代の後、ベルギーのシモンスの動きが変わる」
「スペインがツートップの間はセンターバックの間に入ることが多かったが、シャビが前に出てからは中盤にいることが多くなる」
「自然な変化やな」
「そんなこともありつつ、スペインは堅いベルギーを攻めあぐねていたが」
「ひょんなことから同点に追いつく」
「ベルギーのディフェンダーがヘディングでクリア」
「その浮き球をフェライニが綺麗にコントロールする」
「そこからバックパス」
「セスクに渡してしまう」
「ありゃ」
「まあ」
「こりゃいかん」
「いかんなんてもんじゃないな」
「ここからセスクがスルーパス。イニエスタがディフェンスとキーパーをかわしてシュートを決める」
「ここのイニエスタのドリブルはさすがやな」
「さすがやけどキーパーも早く寝過ぎやで」
「スタイネンは寝癖というか相手の動きに過剰に反応し過ぎるところがあって、その癖は最後のビジャのゴールでも出る」
「何にせよ、この失点の責任は80%以上バックパスを敵に渡したフェライニにある」
「テクニックがあり過ぎて自滅した形やな」
「攻撃で上手い選手というのは、えてして状況をなめ過ぎて軽くパスを出し、えらい目にあうことがある」
「やらないでいい点をやってしまったベルギーとしては痛い」
「1-1のまま前半は終わり」
「後半に入る」
46分:ファン・バイテン → デームス
「ファン・バイテンが下がりデームスが入る」
「これはどういうことやろな」
「おそらくスペインがワントップになったことに関係している」
「そうかね」
「トーレス負傷後のスペインは下のような展開が増えた」
「ボールに触れないシャビが下がってくる現象か」
「そうなると中盤の真ん中でいくらでもパスはつながるが、ゾーンの間を通すパスというのは出にくくなる」
「1-4-1-4-1を相手にすると、もともと出にくいし受ける人が下がっていなくなったらますますやな」
「その結果、パス回しの中からタイミングを計って、裏に抜けるビジャにロングボールを合わせることが多くなった」
「ビジャは飛び出すのが上手く、セスク、シャビは落とすのが上手いから当然といえば当然やな」
「ビジャの飛び出しに対抗するためにセンターバックは速い方が良く、それがファン・バイテンからデームスへの交代の理由だと考えられる」
「つまり左サイドバックからセンターバックの位置に入ったベルメーレンの方が、ファン・バイテンより速いということか」
「ほぼ間違いなくそうやな」
「その後、試合は同点のまま進み」
「64分にカソルラが下がりシャビ・アロンソが入る」
64分:カソルラ → シャビ・アロンソ
「うむ」
「すごい変化やな」
「トップ下にイニエスタ、シャビ、セスクか」
「みんな中に来てサイドが消える配置や」
「これでスペインが良くなったかというと」
「そんなこともなく」
「73分にデュフォーが下がりダンメが入る」
73分:デュフォー → ダンメ
「そしてスペインの次の交代が興味深い」
「その時ベンチにいたのはレイナ、アルビオル、フェルナンド・ナバーロ、アルベロア、グィサ」
「はたして誰をどこに入れたかというと」
85分:イニエスタ → グィサ
「グィサが左の中盤として入る」
「これは本当に中盤としてプレーしていて、左に出たフォワードというわけではない」
「びっくりな起用やな」
「少なくとも見たことはないな」
「さらにびっくりなのは、88分にそのグィサのクロスからビジャが決勝点を奪う」
「後で見るようにヘディングからやな」
「凄い起用というか何というか」
「どうなっとるんやろな」
「おそらくイニエスタを代えるのにグィサしかいなかっただけで、それを狙って投入したわけじゃないと思うけどな」
「しかしベンチにレイナ、アルビオル、フェルナンド・ナバーロ、アルベロア、グィサしかいないというのも変な気はするな」
「ディフェンスがアルビオル、フェルナンド・ナバーロ、アルベロアと3人もいて普通より1人多い」
「リーエラみたいなサイドの選手を、1人入れておきそうなもんやけどな」
「どこかで守備的な戦いを想定していたのと、セルヒオ・ラモスが怪我持ちであるというのが関係しているのかね」
「どうやろ」
「この試合、スペインは勝ったものの決して楽ではなかったというのは下の図にも見られる」
出展:http://www.as.com/futbol/partido/Belgica-Espana-0279_10_05_0395_0163
「ボールを60%以上保持していたわりにシュートは多くない」
「50分から75分までは25分間、一本も撃てなかった時間帯もある」
「その中で交代がどんぴしゃりのゴールで逆転勝ち」
「デル・ボスケのパワーかね」
「悪い状況でチームが全くパニックにならないというのはあるが、それにしても理屈を超えた凄さがある」
「というところで」
「試合内容はこれにて」
「次に、決勝点となったビジャのシュートに対するキーパーの動きに関する文章がありますので」
「よろしければこちらから」
「どうぞ」
おまけ:2004年のベルギー代表対スペイン戦(アウェー)
*注:ベルギー選手の名前は下記ページを参照しました
参照:members.jcom.home.ne.jp/wcup/belgium.htm(※リンク切れ)