2008/06/22 ユーロ2008 準々決勝

スペイン 0-0(PK 4-2) イタリア

監督 ロベルト・ドナドーニ
フォーメーション 1-4-4-2


「さて」

「スペインが遂にクォーターファイナルを突破した」

「パサール・デ・クアルトスというやつやな」

「パサールは突破、クアルトスというのはクォーターファイナルの意味になる」

「そのまんまやな」

「先発はこう」

「イタリアは前回の予想で、こうはしないだろうといった形に最も近い」

「外れたな」

「確かに」

「イタリアの中盤の守備はなかなか興味深かった」

「カッサーノを加えたボックス・ワンみたいな守備やったな」

「カッサーノがセルヒオ・ラモスをマンツーでマークし、中盤のひし形は距離を保ちながら左右に動く」

「例えば、左のカプデビラがボールを持つと下のようになる」

「アクィラーニがすっと上がって、ペロッタと横並びになり前をさえぎる」

「セナがボールを持つと今度はアンブロジーニがすっと上がり、前をさえぎる」

「その時、カッサーノはセルヒオ・ラモスをマークしている」

「守備の時だけを見れば1-4-2-3-1と1-4-1-4-1の間みたいな形やな」

「ちなみにイタリアは、この形からボールを取りに行かない」

「ただひたすら前に壁を作ってコースを切るだけで、ボールを積極的に追い込んだりはしない」

「ひたすら待って、相手が縦に蹴るかパスがぶれるのを待つ」

「実に我慢強い作戦やな」

「はたして選手が、それに納得していたかどうかは疑問やけどな」

「スペインの方はというと、ゴールラインから11mほどのところに最終ラインを置き、ビジャを中盤に引きつけて自陣で守った」

「イタリアがロングボールを使ってくるのは見え見えだから、無理にラインを上げずに待って守ろうということやな」

「このユーロコパのスペインは守備で待つというのが特徴やな」

「ロシアやスウェーデンの時もそうやったな」

「守備といえば、セルヒオ・ラモスはルカ・トニを相手に良い仕事をしていた」

「左からのクロスに対して、ファーに逃げるトニと競り合って負けなかった」

「あの辺りはさすがであるな」

「前半は両方待ち待ちのだらだらとした展開で終わり、後半」

「イタリアもスペインも少し前からボールを追う気配を見せた」

「その時、配置が微妙に変わっている」

「まずスペインはイニエスタが左でシルバが右」

「これは前半の途中から場所を入れ替えていた」

「そしてトーレスが右に開くようになった」

「カッサーノはグロッソのヘルプに行くわけでないから、グロッソの周辺にスペースができやすい、そこに開いてボールをもらおうという狙いがある」

「これに対してイタリアは変な形になった」

「前から行くのはいいがペロッタが行きっぱなしになり、1-4-3-3のようになった」

「これで中盤にスペースが空いて、スペインの調子が良くなった」

「このペロッタの動きは監督の指示だったかというと」

「そうではないとうのが58分の交代だった」

「ペロッタに代えてカモラネージ」

「カモラネージの守備での動きを見たら、きちんと戻るようになった」

「これは、攻撃を重視した交代だともとれるけどな」

「試合中のペロッタの表情、態度を見る限り、監督のやり方に反発以上のものを感じている気配が濃厚やから、戦術的な問題だけではないはずや」

「ほんまかいな」

「ドナドニが解任されれば彼の口から興味深い発言が飛び出すと思うので、そのような記事が出た場合はお教え願えればと」

「これに対しスペインは59分に得意の2枚交代を行う」

「シャビ、イニエスタが下がり、セスク、カソルラ」

「もはやおなじみの交代といえる」

「しかし、それで何がどうなるというわけでもなく」

「試合は相変わらずだらだらと続く」

「そのだらだらとした原因やけどな」

「そりゃ、両方慎重をいうか待ちの体勢で試合を進めたからやろ」

「それともう一つ、攻守の切り換えが異常に遅かったことがある」

「トランジションか」

「例えば下の流れを見て欲しいんや」

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「これは何だ」

「今、右に攻めているイタリアの左サイドに縦パスが出て、グロッソとセルヒオ・ラモスがそれを追いかけている」

「ふむ」

「アップにすると下のようになる」

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「そこからボールを拾ってスローイン」

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「スローインが投げられた直後が、下の絵になる」

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「ほほう」

「ちなみに上の選手配置と下の一番最初の図の配置と比べると、えらいことがわかる」

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「中央にいる白い選手たちが、ほとんど戻っていない」

「グロッソとセルヒオ・ラモスがボールを追ってからスローインが投げられるまで6秒ほど、ボールがタッチラインを割ると確定してからでも4秒~3秒の余裕がある」

「それなら矢印の方向に動いて、もっと守備に適したポジションを取れるはずということか」

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「ボールがラインを割ってから動くのでは遅くて、割ると決まった時点でポジションを取り始めるのが普通やからな」

「流れとしてイタリアの選手が攻撃のために前にダッシュして戻るのが遅れた、という場面でもないから単にボールが外に出るのを眺めていただけか」

「おまけに中央で一番左にいるカモラネージにいたっては、スローインが投げられたというのにダッシュの体勢にすらなっていない」

「そこからスペインにカウンターを喰らう」

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「ボールを持っているのはセナやな」

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「センターサークル手前まで30m以上ドリブルしてパス」

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「簡単に中央に通る」

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「この時、守る白いイタリアと、攻める赤いスペインは3対3の同数」

「あっという間に大ピンチやな」

「単純なスローインに対して切り換えが遅く、中盤を30mドリブルされて一本のパスでピンチを招く」

「ひどい話というか、何というか」

「いったい、これがイタリア代表なのかと目を疑う」

「スペインやったら、ああまたかで済むねんけどな」

「審判への抗議に夢中になって、切り換えが遅れるとか日常茶飯事やからな」

「イタリアがこんなぬるい守備をするというのもいただけない」

「はたして選手にやる気があるのか疑わしい」

「チームが上手くいっていない気配かね」

「何しろ切り換えの遅さというのはこの場面だけじゃなくて、ほとんど一試合丸ごとそうやったからな」

「まあ、遅かったな」

「おまけにスペインがそれにお付き合いするものだから、非常にだらだらとした試合になった」

「何にしてもドナドニが選手の信頼を得られず、チーム内で孤立していた可能性は非常に高い」

「イタリアらしくないと言えば、センターバックのクリアもイタリアらしくなかった」

「これはどういうことや」

「パヌッチとキエリーニのヘディングでのクリアボールが、よくスペイン選手に直接渡っていたことを示している」

「そういうことか」

「イタリアのディフェンダーというのは、足でも頭でも厳しいクリアボールがなぜか味方につながるのが特徴なわけや」

「その辺りは変態的に上手いな」

「ところがこの試合では、スペインに渡す場面が多く実にらしくなかった」

「その辺はネスタやカンナバーロの不在が痛いところやな」

「他にはピルロとガットゥーゾがいなかったしな」

「ピルロがいても、試合内容の流れ事態は対して変わらんかったと思うで」

「何でや」

「ピルロが出たら彼のポジションはどうあれ、ビジャがマンツーでつくやろ」

「まあそうなるかね」

「オランダ戦でファン・デル・ファールトにマークされて消されたように、今回はビジャに消されるから流れは対して変わらない」

「それでも一瞬のパスで裏を取る可能性は増えるやろ」

「だらだらした流れは変わらず、イタリアがほんの一瞬のチャンスで点を決めるという可能性は高まったかもしれん」

「結局、120分でも勝負はつかずPK戦の末、スペインが勝利した」

「そのPK戦について、この試合が終わった直後に質問メールをいただいたので、それにできるだけ答えてみようかと」

「質問の内容は、まずカシージャスは5本中4本方向を読んでいたが、ブッフォンは止めたグィサ以外は読みが外れた。ここに技術的な差はあるのかというのが第一やな」

「これは中々難しい疑問であるな」

「まずブッフォンがキックの逆に飛びやすいというのはドイツワールドカップの決勝(※リンク切れ)でもそうだった」

「賭け事が好きなのに二択を外す男、というやつやな」

「その原因らしきもは確かに見える」

「下の写真やな」

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「ここで大切なのは、一枚目と二枚目の写真になる」

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「少しわかりにくいが、左足を軽く後ろに引いている」

「動かすとわかりやすいので、写真を保存してぱらぱら漫画にしていただければと」

「この後、ブッフォンは右足、左足と順番に体重を乗せてジャンプする」

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「つまり体重を乗せるのは左足 → 右足 → 左足で、それからジャンプという手順になる」

「その動きをスペインが誇るPK阻止王、レイナと比較してみる」

「2シーズン前のチャンピオンズリーグ、チェルシー戦(※リンク切れ)やな」

「レイナはつま先立ちになり、重心をやや前に倒し、その状態から足の踏み変えなしで第一歩を踏み出している」

「この場合でいうと左足 → 右足 → ジャンプ、という流れか」

「レイナの場合、足を踏みかえるのではなく体重を流して一歩目を出す感じやな」

「つまりブッフォンの左足 → 右足 → 左足 → ジャンプと比較して一つ少ない」

「もしこの差が常にあるとしたら、PKの阻止率は決定的に違ってくる」

「そりゃ当然やな」

「一つの仮説として、ブッフォンは体重を移動させる際に足の踏み換えが一つ多いため、飛ぶまでに時間がかかる。

 時間がかかるがゆえに、先に飛ぶ方向を決めないと間に合わない。このためキッカーの狙いを最後まで見る時間がなく、また動き出しが早いため、裏を取られやすいというものが考えられる」

「あくまでも仮説やけどな」

「最初の一歩を出す前にその逆の足を引かないまでも、そこに体重を乗せると断言するためにはブッフォンのPK映像が多数必要やけど、それを持ち合わせていないので無理なわけやな」

「イタリアサッカーやブッフォンが好きな方でPKの資料をお持ちの方は、上の仮説が真実か否か教えていただければ幸いかと」

「前のチャンピオンズリーグの時は色々な角度からリプレイしてくれて、キーパーの動きを分析しやすかったんやけどな」

「今回は選手のアップやPKに対する人のリアクションが中心の映像作りやったから、あまり資料にならない」

「ところでカシージャスについてはどうや」

「カシージャスは待って飛ぶ場合と、完全にヤマをかけて飛ぶ場合を使いわけが極端で、例えばディ・ナターレに対しては完全に左に賭けて飛んでいる」

「レイナとの比較はどうや」

「何かを断言することはできないので、ゴールキーパーに詳しい方に教えていただきたいかと」

「次はスペインとイタリアのキッカーで使う技術に差はあるのか、という質問についてだが」

「これは膨大なデータを処理してキックの種類を分類していけば差が出るのかもしれないが、知っている範囲では個人によるとしか答えられないので回答不能ということで」

「なんや頼りないな」

「ほっといてんか」

「最後にスペインが今後良くなるためのポイントは?という質問がある」

「問題としては中盤でボールを取れない、下がると脆い、取ってからが遅い、というのは明らかなのでこの点の改善が鍵になる」

「まあつなぐ選手で引いて守ってカウンターのような形になっているので、難しい点ではあるな」

「選んだ選手と実際に採用した戦術が一致していないので、修整もなかなか難しい」

「次のロシア戦で、その辺りがどうなるのかというところで」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「ご機嫌よう」

ご教示いただきありがとうございました
大変お忙しい中、ご教示いただきありがとうございました。

PKは体重のかけ方でモーションが増えることが分かり、ああなるほどと思いました。
カシージャスについては報道によるとコーチからキッカーの癖を聞いたいたようで、博打を打ったのはその影響もあるかもしれません。

ところで、重ね重ね申し訳ありませんが、シルバを右サイドに、イニエスタを左に途中でチェンジしましたが、
これがロシア戦で採用された場合機能する可能性はあるのでしょうか。

私の記憶が正しければ、大会前のプレビューではシルバの右サイドには無理があるということでしたが。
2008/06/25 22:15 - ZERO

Re:ご教示いただきありがとうございました
コメントありがとうございます。
取り急ぎ本筋だけを。
イニエスタを左に置く場合は、右サイドに縦に早い選手を置いた方がいいでしょう。
中に切り換えした後、逆のサイドバックの裏を狙う筋がより有効になります。
逆もまたしかりです。
現在のシルバとイニエスタの動きでは、中央に選手が増えすぎ、機能しないと思います。
シルバは、左サイドの方がよい働きをすると見ています。
2008/06/26 07:41 - studio fullerene C60

無題
ありがとうございました。
今日の試合もご教示いただいたことを頭に置いて見てみようと思います。
2008/06/26 14:47 - ZERO

【蹴球計画】より ※この内容は蹴球計画のミラーサイトとして作成しています。詳細についてはこちら

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