ラスのキープ、ドリブル
「ラスのキープ、ドリブル、特に引き技についてやな」
「下の図において、左に攻めているラスがゴールに背中を向けている」
「体をボールと相手の間に置き」
「右足でボールを踏む」
「踏んで引いたボールを、同じ足のインサイドで前に弾く」
「左足を踏み込み、右足でもう一度踏む」
「この時、右の黄色い守備者を見るとパスをカットするように左足を踏み出している」
「左足を踏み込んだ際、その方向にフェイクが入っていたと考えられる」
「右足でボールを引き、左足で中央方向へ弾き、そちらへ持ち出す」
「これまた上手い」
「上手いわな」
「引き技も上手いし、1人をスクリーンで消してもう1人と勝負するあたりも上手い」
「同様のプレーが他でも見られる」
「ラスがややサイド方向にドリブル」
「この時、ライン際にミゲル・トーレスいる」
「しばらくの後、進行方向をより中央側に向ける」
「これは相手の右サイドの中盤であるカニを中に引き付け、サイドをフリーにする効果がある」
「左足を踏み込み」
「空けたサイドへパス」
「と見せてモーションを途中でやめる」
「この時、手前側の守備者であるカニの体勢は特徴的である」
「サイドへのパスを切ろうとして、左足を大きく後ろに伸ばしている」
「ここで右足でボールを踏む」
「右足を引いて」
「引いたボールを同じ足のインサイドで弾き」
「左足のインサイドで逆へと持ち出して抜ける」
「これらのことからラスは、右足で引くパターンが得意であろうということがわかる」
「右で引いて右、右で引いて左、右で引いて右左といった技が上の2つの例から見える」
「ちなみに二番目の例では抜けた後のパスも上手い」
「抜けた後、中央から寄せてくる守備者に対して体の正面を向ける」
「そこからサイドへパス」
「この時、下の写真で矢印のついた守備者に注目すると、完全に逆を取られていることがわかる」
「中央で下の形を作られると、サイドは中に絞らざるを得ないためそうなる」
「コース取り、正対、そこから空いたスペースの使い方、実に見事やな」
「高性能過ぎてびっくりする」
「ここで1つ思うんやけどな」
「なんや」
「これまでで、ラスの良いパスというのが3つ出てきた」
「出てきたな」
「この3つは全て、体の正面に対して軸足側にずらしている」
「そうやな」
「最近、選手には効き足だけでなく効き変換というものがあって、それが得意なプレーゾーンに大きく影響を与えるのではないかと思うわけやけどな」
「効き変換かね」
「大きく分けると、キックの方向を変えるパターンには軸足側に変えるものと、蹴り足側に変えるものがある」
「そりゃ、右か左やからな」
「例えばグティは明らかに上の図において、①で示された軸足側への変換が得意やろ」
「左足の方やな」
「そのことから中盤で使われる時は、中央より右に置かれることが多い」
「いわゆるグティパスを使いやすくするためで、ここ数年、特にそうやな」
「そうなるとラスのパスを攻撃面で使おうとする場合、中央より左に置いた方が良いとなる可能性がある」
「それはラスが本当に軸足側への変換が得意であるということを証明してから進める話で、まだサンプルが足りんやろ」
「まあそうやけど効き変換というのを考えると、選手の特徴についてこれまでにない観点から話ができるのではなかろうかと思っているわけや」
「そうかね」
「そんなこんなを気にしながら試合を眺めるのも、一興ではないかというところで」
「今回はこの辺で」
「また次回」
「ご機嫌よう」